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内野 海斗(武田3年)投手 187/85 右/右 | |
一日の平均練習時間は50分と言われる中で、140キロ台の投手を次から次へと輩出する武田高校 。そんな同校の中で、今年のエースだったのが、背番号10を付けた 内野 海斗 だった。 (投球内容) 非常にオーソドックスなフォームから投げ込んでくる投手で、この夏は 2試合に登板して 16回 11安 6四死 12三 防 1.13 といった内容でした。 ストレート 140キロ前後~140キロ台中盤 ☆☆★ 2.5 球速は常時140キロ前後ぐらいといった感じで、驚くような球威や球速ではありません。少し制球重視なのか? 球を置きに来る感じで、まだまだ打者の手元まで伸びや勢いは感じられませんでした。ただし、ボールは両サイドに散っており、16回で6四死球(四死球率 37.5%)というほどアバウトな感じはしませんでしたが。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 変化球は、スライダーやチェンジアップかスプリットのような軽く沈む球を良く投げ込んできます。打者の空振りを誘うというよりも、真っ直ぐとの球速差で引っ掛けさせるとか、そういった役割であるように感じます。16イニングで12三振ということで、1イニングあたり 0.75個 と、けして多い奪三振率ではないので。 その他 クィックは、1.05秒前後とまずまずで、フィールディングは平均的。牽制は、軽く入れる程度でしょうか。特にコース一杯で微妙な出し入れをするとか、投げるタイミングを変えるとか、そういった投球術は観られませんでした。 (投球のまとめ) 187センチと体格に恵まれていること、それでいて適度に投球ができるという、ある程度の土台があることが強味のように思えます。現状、驚くような球を投げるとか特徴があるわけではないのですが、素直に体を作りを進め、野球だけに集中できる環境に入ったときに、どのぐらい能力が引き出されるのか? そういった部分を期待しての指名ではないかと考えられます。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、その可能性について考えてみます。セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ですが少し高めに引き上げます。軸足の膝には余裕はあるのですが、少し前屈み気味で全体の立ち方としてはどうでしょうか? 基本的に、Yの字みたいな形で立てるのが理想です。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に伸ばして重心を落とすので、お尻の一塁側への落としには甘さが残ります。それでも、カーブやフォークなど捻り出して投げる球が投げられないほどではないでしょう。ただし、そういった球の変化は鈍くなりやすいです。 「着地」までの地面の捉えは、適度に粘れていて早すぎることはありません。したがって適度に体を捻り出す時間は確保でき、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレのある変化球も望めそうです。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため、軸はブレ難く両サイドへのコントロールは安定しやすいのでは? また、足の甲での地面の捉えも地面を捉えられているようにみえるので、浮き上がる力も抑えられて、ボールが上吊らないように見えます。「球持ち」も前で放せていて良さそうですし、制球を大きく乱す要素はありません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としには甘さはあるものの、カーブやフォーク系の球をあまり投げないので、そこまで気にしなくても良いのではないのだろうか。また、腕の送り出しには無理を感じないので、肩への負担も少なそう。力投派というよりも、まだ体を強く振れずい活かせていないので、疲労は溜まり難いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは適度に作れており、ボールの出どころも隠せている。そういった意味では、合わされやすいといったフォームではないのだろう。夏の大会でも、16イニングで11安打。被安打率は、68.8% と低かった。 投げ終わったあと腕も体に絡んでくるのだが、まだまだ腕の振り自体が弱い。またボールにも体重を乗せてから投げられているようにみえるのだが、少し投げ終わったあと体が一塁側に流れるので、まだ力をダイレクトにボールに伝えきれていないと考えられる。その辺が、ボールが手元まで来ている感じがしない要因ではないのだろうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どの部分でも基準以上で大きな欠点はありません。制球を司る技術も高いですし、故障のリスクも少なく、投球の幅も広げて行ける可能性を感じます。そういった意味では、土台となるフォームはかなりしっかりしています。 (最後に) まだまだ筋力や練習量の少なさからか、投球の中身が充分ではない感じはします。それでも、制球力・体格・フォームの土台と揃っているので、今後の取り組み次第では、大きく伸びる余地があると考えられます。練習時間の限られた環境で創意工夫して取り組んできた経験が、今後の取り組みにも大いに役立つ可能性があります。パフォーマンス的には「旬」と呼べるものではありませんでしたが、密かにどうなってゆくのか注視して、見守って行きたい一人でした。 (2022年夏 広島大会) |