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森下 瑠大(京都国際3年)投手 180/75 左/左 | |
3年春には、チームにコロナが蔓延して選抜を辞退。そして、その後は自らも後遺症で苦しみ、肘痛で調整が遅れてしまった 森下 瑠大 。結局最後の夏には、なんとか間に合わせて甲子園出場に漕ぎ着けたものの、元来の投球を取り戻せないまま終わってしまった。 (投球内容) 最後の夏は、京都大会の準決勝になってようやく登場。さらに甲子園でも先発したが、最後までピリッとしない投球だった。 ストレート 135~140キロ ☆☆★ 2.5 球速は140キロ強ぐらいでも、元来はキレのある球で空振りをとれるタイプです。しかし、この夏は、少し体が重そうで、ボールのキレ・コマンド共にいまいち。そのため、何かピリッとしない投球に終始しました。基本的に、打者の両サイドに散らせてくるタイプ。全体的に、真ん中~高めに集まったり、抜けたりする球も少なくなかった。また、キレ型故に、甘く入ると長打を浴びやすい傾向にある。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5 左打者の外角に決まるスライダーがこの投手の武器で、この球でカウントを整えたり、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込む球で空振りを誘ってきます。恐らくストライクをとる球と空振りを誘う球は、ニ種類のスライダーを使い分けているのではないのでしょうか。また右打者には、チェンジアップ。あるいは余裕が出てくると、さらにゆるいカーブのような球やちょっとずれるカットボールのような球も交えているように見えます。速球と変化球のコンビネーションで打ち取るのが、この選手の持ち味なのでしょう。 その他 クィックは、一塁走者をみて投球のできる左腕だけに、1.2秒前後と早くはありません。フィールディングの動きはそれなりで、マウンドさばきなどは経験豊富な投手だけに洗練されています。 (投球のまとめ) 秋はかなり良くなっていたのですが、結局コロナの影響で最後の夏はリセットされてしまいました。元来のボールのキレ・制球力・マウンドのさばきが生きず、あくまでも下級生の頃のパフォーマンスを評価しての指名だったと思います。ある程度、回復が見込めるという目処があったからの指名だと思いたいところです。 (投球フォーム) セットポジションから、ゆったりと高い位置まで足を引き上げてきます。軸足の膝には余裕があり、バランス良く立てていることは良いところ。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としは甘くなりがち。それでも、カーブやフォークが投げられないほどではないかと。 「着地」までの地面の捉えは、大きめにステップすることで適度に体を捻り出す時間を確保。曲がりの大きな変化球も期待でき、ストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むスライダーのキレは悪くありません。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは。気になるのは、足の甲での地面の捉えが浅く浮きがちなので、どうしてもボールが高めに集まりやすい。リリースも並で、ボールを押し込めていないので低めにはゆかない感じです。元来は四死球で自滅するような危うさはないと思うのですが、まとまっていそうで意外にアバウトだったのが、最終学年での投球でした。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種を多く投げるわけでもないので、それほど悲観するほどでは無さそうです。むしろ、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がるような送り出しなので、肩への負担はそれなり感じます。力投派といったタイプではないので、疲労を溜めやすくはないと思うのですが。最終学年では、投げ込み不足からなのか? 長いイニングを投げられるような状態ではなかったようには見えましたが。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは適度に作れており、打者としてはタイミングは図りやすくは無さそう。また、ボールの出どころも隠せていたので、見えないところからピュッと来る感じが、元来の彼の良さなのだと考えられます。 腕は体に絡んでくるような腕の振りで、速球と変化球の見極めは困難。しかし、ボールにしっかり体重を乗せてリリースして来るというタイプではないので、腕や上体が鋭く振れないと、元来のキレ味が出てこないのだと考えられます。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」が平凡で「体重移動」に課題があることがわかった。高めに集まりやすい制球に課題があり、マウンドさばきは良いが、それほど細かい制球力はないのではないかと。肩に負担が大きいそうな投げ方なのは気になるが、武器になる良い変化球を習得して行ける可能性は感じます。良い部分と悪い部分が同居するフォームであり、どちらの部分が勝ってくるかで、内容も変わってきそうです。 (最後に) 順調に最終学年を過ごしていたら、世代屈指のサウスポーとして上位指名も狙えていた素材でした。しかし、最終学年での体調不良が長引き、思いどおりの経験・トレーニングが積めなかったのは痛かったように思えます。まずは、元来の状態に戻すことから始めることになるのではないのでしょうか。元々ピッチングができるセンスの良い左腕だけに、立て直しに成功し、さらなる上積みができれば、3年目ぐらいには一軍のローテーション投手ぐらいに昇りつめても不思議ではありません。そういった理想的な成長曲線を描けるとすれば、非常に美味しい順位での指名となりそうです。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2022年夏 甲子園) |