21kp-53





川嵜 陽仁(巨人)投手のルーキー回顧へ








川嵜 陽仁(誉3年)投手 177/80 右/右 
 




 「角度のある球筋」





 ボールを放す前に、手首をグニョと撚る独特の動きから、角度のある球を投げ下ろしてくる 川嵜 陽仁 。夏の愛知大会が始まるまでは良く知らない選手でしたが、この夏の活躍で豊作だった今年の愛知を代表する一人となりました。


(投球内容)

この夏は、4試合に登板して 14回 7安 4四死 22三 1失点 という内容でした。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 普段の球速は140キロ前後ぐらいと、驚くほどの球速はありません。それでもボール自体に角度があって捉え難いことと、かなり球威があるので、打者が打ち返すのに苦労しているところが印象的。制球力はさほどあるようには見えないのですが、両サイドに散らすコントロールはあり、四死球で自滅するような危うさもありません。

変化球 スライダー・カーブ など ☆☆☆ 3.0

 緩いカーブのような球を多く投げ、時々スライダーを織り交ぜるピッチングスタイル。そこでカウントを整えつつ、縦に鋭く落ちるフォークのような役割を果たす縦スラを積極的に使ってきている印象です。この球で、結構三振が奪えていました。

その他

 走者を刺そうと、積極的に鋭い牽制を入れてきます。フィールディングの動きも悪くないのですが、焦ってミスをしないことを意識して欲しいところ。またクィックは、1.25秒前後~1.3秒ぐらいと遅く、まだまだ精度を高めてゆく必要がありそうです。

(投球のまとめ)

 一つ一つのボールは悪くないので、あとは全体のまとまり・精度を高めてゆくことではないのでしょうか。本会議で指名された選手に比べると、ドラフトでも育成の9巡目での指名が示す通り、力に開きがあることは感じます。それでも身体にも力がありますし、まだまだ良くなってゆく可能性は感じられます。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さがあり、本質的にはリリーフタイプなのだと感じます。軸足の膝はピンと伸び気味ですが、軸足一本で立った時にはバランス良く立ててます。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしている割には、お尻は一塁側に落ちているように見えます。そういった意味では、身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった球種を投げても無理はないのではないかと。

 気になるのは、「着地」までの地面の捉えがあっさりとしている点。ここに粘りがないので、身体を捻り出す時間が物足りません。そのため変化球のキレ・曲がりの大きさに物足りなさが残ってしまいます。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは比較的最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸は左右にブレ難く、両サイドへの投げわけはできています。

 一方足の甲での地面の捉えも、あと少しで地面に着くぐらいには沈んでいます。あと幾分股関節の柔軟性と下半身の筋力強化ができれば、もっと低めにも安定してボールが集められるようになるのではないのでしょうか。「球持ち」自体も、けして早すぎることはありません。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げても無理はないように見えます。使う頻度は多いので、肘などのケアには充分な注意を。また腕に角度を付けて投げ下ろして来るのですが、腕の送り出しに無理は感じません。これだけ角度を付けて投げている選手の割に、違和感を感じない珍しいタイプ。それでも角度もつけていますし、それなりに力を入れても投げるので、肩への負担や疲労などとも、うまく付き合って取り組んで欲しいところです。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りが平均的で、ボールの出どころも平均的から少し早いかもしれません。そういった意味では、タイミング的には打者は苦にならないかもしれません。それを角度によって微妙に芯をずらしたり、球威で詰まらせたりということはできそうです。

 腕は強く振っているので、ボールの出どころをもう少し隠せたら縦の変化の効果も増しそう。あとは、しっかり体重を乗せてからリリースできるまで粘れるようになると、球威のある球が一段と迫力が出てきそうです。メカニズム的には、風間 球打(明桜-ソフトバンク1位)に近いのかもしれません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち「開き」「体重移動」では、特に「着地」と「開き」に課題を感じますが、全般的にまだ粘っこさが物足りません。この粘っこさを作るためには、股関節の柔軟性を養い可動域を広げつつ、それに耐えうる下半身の筋力強化を行って、「着地」までの時間を稼げるようになることだと考えます。

 制球を司る動作は悪く有りませんし、「着地」までの粘りが作れるようになれば、武器になる変化球の習得は可能になると考えています。現状まだ上半身で投げている部分が大きいので、下半身をうまく使えれば故障の負担も減るのではないのでしょうか。「着地」というのは、野球の動作の核だと言えるものなので。


(最後に)

 現時点での能力では、指名順位が示す通り  を付けられるほどの力はまだありませんでした。育成でもプロ入りしたいという意欲があるのは買いだと思いますし、可能性を秘めた素材ではあると思います。レベルの差に戸惑うことも多いと思いますが、志を高く持って同期が大学を卒業する頃には一軍の舞台に立っていることを目標に精進して頂きたいと願うところです。

(2021年夏 愛知大会)