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畔柳 亨丞(中京大中京3年)投手の選抜寸評へ







畔柳 亨丞(中京大中京2年)投手 177/80 右/右 
 




「一つ一つが明確」 





 明治神宮大会で優勝投手となった、一学年上の 高橋 宏斗(中日1位)。その先輩の同時期よりも、内容では上回っているのではないかと思われる 畔柳 亨丞 。自身も東海大会を制しており、もし神宮大会が行われていたら、優勝投手になっていたかもしれないというほどの、総合力をすでに身につけている。


(投球内容)

 この秋の成績は、45回 25安 10四死 51三 防 1.20 と圧倒的な数字を残している。素材型というよりは、すでにかなりの水準まで来ている実戦派だと言えよう。

ストレート 常時145キロ前後~MAX151キロ ☆☆☆☆ 4.0

 球速以上に、ボールが手元まで強い印象を受ける。また同時期の高橋宏が高めに集まりやすかったのに比べると、安定して低めや両コーナーに決められており、コマンドの部分でも上をいっている。ちなみに被安打率は、55.6%と極めて低く、四死球率は 22.2%と、これもかなり低い。逆に一つ一つのボールが強すぎて、この勢いで投げ続けて身体が持つのかと心配にもなる。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーでカウントしっかり整えることができ、カーブで緩急を効かせ、チェンジアップでタイミングを外したり空振りを誘えたりしている。一つ一つの変化球の役割と威力が明確で、またそれぞれの球も精度もしっかりしている。こういった部分が、2年秋の時点での高橋よりも総合力で上回っているのではないかと思える。45イニングで51奪三振奪えており、投球回数を上回っている。要所でズバッとストレートを決めて見逃しの三振を奪うだけでなく、チェンジアップにもかなりの落差があり空振りを誘うことができていた。

(投球のまとめ)

 馬力のある素材であり、底から湧き上がるような地力を感じさせます。こういったものは、最後の夏の苦しい場面で本物の投手から絞り出されるものですが、すでに2年秋の時点でそういったものを感じさせる投手はなかなかいません。ストレートもも球威と勢いがあり、容易には前に飛ばさせない力があります。それも、要所で一番好いところにズバッと決められるところは、王道をゆく選手の真骨頂だと言えるでしょう。普段の安定したコマンド、変化球の切れ・精度を考えると、センバツではこの投手がNO.1のパフォーマンスを魅せても全然不思議ではないような気がします。秋の時点で高校NO.1とも言われる、小園健太(市立和歌山)にはない、ボールに訴えかけてくるものが感じられました。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から彼の今後を考えてみましょう。ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、軸足に体重を乗せないで、クィックモーションのように一気に重心を沈ませてゆくフォームを採用しています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としは、甘さを残しているものの落とせていないわけではありません。したがってカーブやフォークといった捻り出して投げる球種も投げられないことはないと思いますが、変化球の曲がりが鈍くなる可能性はあります。

 「着地」までの粘りも平均的で、身体を捻り出す時間も並ぐらい。こうなると、曲がりの大きな変化球の習得は厳しいかなと思えるのですが、実際のところは腕のや上体の振りが非常に強いので変化量も悪くはありません。将来的には、スライダーやチェンジアップを軸に、球速がある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブが内にしっかり抱えられず、フォームが暴れてしまっています。外に逃げようとする遠心力を抑え込めず、軸がブレやすくなっています。そのため左右のコントロールは、アバウトになりやすいのではないかと。しかし実際のところは、両サイドにボールは散っています。

 足の甲での地面のへの捉えはできており、浮き上がろうとする力を抑え込めています。そのため、ボールも比較的低めに決めることができています。またボールを前で放せており、指先まで力が伝えられるリリースかと。この辺で微妙なコントロールがつけられるので、動作が暴れても意外にボールをコントロールできている要因ではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げるのに大きな負担はかからないかと。カーブは時々使ってきますが、縦の変化はチェンジアップということもあり、肘への負担は悲観しなくても良さそうです。

 また腕の送り出しをみても、肩への負担も大きくはないのかと。気になるのは、かなり力投派なので疲労を貯めやすそうだということ。疲れが溜まってきてフォームを乱すことで、故障に繋がる恐れは拭いきれません。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、打者としては合わせ難いフォームではありません。また、ボールの出どころもやや見やすく、「開き」が少し早いのが気になります。そのためコースを突いた球を打ち返されたり、縦の変化を見極められる恐れはあります。

 腕の振りが尋常ではないので、勢いがあって打者は吊られそう。ただし、上記に書いたように開きが早いので、その効果は薄くなりがち。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできているかと言われると、この辺もまだ充分とは言えません。そういった意味では、ストレートはもっと良くなっても不思議ではありません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があり、「着地」や「体重移動」にもまだ改善の余地があるように思えます。逆にこのような動作でも、これだけのボールを投げ込んでいるのは驚きに値します。下半身を使った「体重移動」を身につけられれば、自然と「開き」も遅れて出てくるようになるのではないのでしょうか。

 コントロールを司る動作や故障のリスクも悪くないのですが、グラブが抱えられず力投派すぎるという意味では不安も残ります。また逆に将来的に武器になるほどの球を習得できるのか?という部分は、動作よりも各変化球の切れや曲がりは明確でボヤケていないところは好いところ。ただしその切れを生み出しているのは、あくまでも尋常じゃない腕や上体の振りであり、ここに依存しすぎると故障のリスク増したり、安定したパフォーマンスに影響するのではないかと思います。そういった意味では、技術的にはまだまだ発展途上の選手との印象を受けました。


(最後に)

 2年秋のfパフォーマンスで言えば、神宮大会優勝投手となった 高橋宏斗(中日1位)を上回っているといえると思います。ただし高橋の場合は、ここから夏の大会までの成長曲線が素晴らしく、彼も同様に課題を克服しパフォーマンスを伸ばせて行けるかに懸かっているのではないのでしょうか。

 伸び代もまだ多く残していますし、取り組み次第ではもうワンランク・ツーランク引き上げられても不思議ではないでしょう。期待して今は、センバツの訪れを待ちたいと思います。


(2020年 東海大会)