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濱口 遥大(DeNA)投手のルーキー回顧へ







 濱口 遥大(神奈川大4年)投手 173/78 左/左 (三養基出身)
 




                  「何かスッキリしたよね身体が」





 今年始めて濱口を観ての印象は、何か身体が引き締まったというか、全体的にスッキリしたような印象を受けた。更にワインドアップで腕を引き上げて投げて来るので、余計にそんな感じに見えたのかもしれない。大学選手権への出場を逃した 濱口 だが、今春の投球はいかなるものだったのか振り返ってみたい。


(投球内容)

 観戦したのは、優勝のかかった 桐蔭横浜大戦の第一戦。結果としては、0-0 での延長タイブレークの末に敗れたという試合だった。桐蔭横浜大戦で勝ち点を落とし調子を崩した濱口だが、むしろそこで燃え尽きたという印象で、それ以後の登板はあまり参考にしなくても良いだろう。

ストレート 常時88マイル・142キロ~MAX92マイル・148キロ

 この日の濱口は、めいいっぱい力でねじ伏せようというスタイルから、コントロールを乱さないように立ち上がりから神経を使って投げているように見えた。そのため立ち上がりは140キロ台前半~中盤ぐらい。しかし試合中盤ぐらいから、コンスタントに145キロ前後のボールを投げ込むようになる。しかし150キロオーバーのような、力でねじ伏せようという以前の濱口とは一味違っていた。

 何よりこの日の濱口が違っていたのは、無四球で最後まで投げきったこと。ボールも凄いがコントロールも荒れ荒れという、今までの濱口とは違う成長の跡が感じられる。元来こういったピッチングは性に合わないのだろうが、我慢して1試合やり遂げたことは素直に評価してあげたいポイント。この日は、ボールが真ん中~高めのゾーンに多かったものの、両サイドには散らすことができていた。投球内容だけでいえば、高橋 拓巳(桐蔭横浜大4年)を上回っていたといえる。全国を代表する大学生左腕同士の投げ合いを、比較して観られたことは大きかった。特に左投手でありながら、左打者胸元を厳しく突くことができており、この球筋は彼の最大の武器となる。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォーク・カットボールなど

 以前よりもストレートのコマンドは高くなっていた一方で、この試合では変化球が曲がりきらなかったり、上手く制御できずストレート中心に組み立てるしかなかったというのも確か。スライダーを投げるときに腕が緩んでしまうこともあるし、以前は素晴らしい落差を誇っていたチェンジアップが、綺麗に抜けない場面も目立った。パワーアップを遂げた分、変化球の精度が年々低下しているのではないか? そういった不安が残る。元来チェンジアップは、プロでも武器にできるほどのものがあったが、上手く抜ける割合が低下。現在は、速球に頼らざる得ない時も少なくないのではないかと。

その他

 クィックが下手なのは気になるが、牽制は非常に鋭くフィールディングの動きも見た目からは想像できないぐらい上手い。不器用そうに見えるが、投球以外のレベルが高いのは忘れては行けない。

投球のまとめ

 馬力でいえば、今年の高校・大学・社会人含めてNO.1の左腕。150キロ級のボールを連発できる左腕は、この投手を置いて他にはいない。物凄く熱くなれる一方、その反動も大きいタイプで、どうしてもムラが激しく計算し難い。そのため、投げさせてみないとわからないという不安定は拭えない。それでも精神的に不安定なタイプだからというよりも、あまりにも闘争心が激しすぎるために、どうしてもその反動が出て燃え尽きてしまうことがあるということ。この辺は、似たタイプにも見える 福地 元春(MHP横浜-DeNA)左腕とは根本的に違うのではないのだろうか。ちょっとリスキーな素材ではあるが、リターンも大きそうだし、1巡目で消える選手だと評価する。何よりマウンドから、訴えかけて来るものが伝わって来る。ある程度余裕のある球団で、伸び伸びやらせてくれる環境ならば、大いに才能を爆発させてくれるのではないかと期待する。


(投球フォーム)

 オフシーズンの寸評でもフォーム分析しているので、何か変わった部分があるのか観てみたい。

良くなった点

 踏み出す足があっさり地面を捉えていたのを、少し前に逃がすのが上手くなり淡白さが薄まってきた。これにより打者に合わされやすかったフォームだったのが少し改善されたのと、下半身の体重移動が前へ移る自然の形へとなりつつある。

 また腕に角度をつけて投げ下ろして来るのは相変わらずなのだが、以前ほど背中を後ろに傾けなくても投げられる腕の送り出しになり、多少なりとも肩への負担は軽減されている。そのため消耗が激しかったフォームも、少しは緩和されているのではないだろうか。

改善されていない点

 それでも腕の送り出しには依然負担が大きな投げ下ろしで、肩の故障の不安がつきまとう。性格的にはリリーフ向きには見えるが、適度に間隔をとって投げられる先発の方が良いだろう。

 投げるときに足の甲の押し付けが浮いてしまいがちで、力を入れて投げようとすると浮き上がろうとする力が抑えきれずボールが上吊ってしまう。今のフォームのままならば、もう少し「球持ち」をよくしてボールを押し込めるようにならないと厳しいはず。まぁボールに勢いのある間は、高めに集まりやすい球筋は武器になる。しかし勢いを失った時は、格好の餌食になりやすいので諸刃の剣だとも言える。


(最後に)

 フォームなど理屈で言えば、この選手はけして良い選手ではない。しかし実際投球をさせると、それを凌駕するだけのボールも投げるし、気持ちの強さも感じられる。アテにしづらいタイプではあるが、やはりハマった時の絶対値は他の左腕とは一線を画したところにいるのは間違いない。

 無四球完投ができるように、気持ちを持続しようと思えばそういった投球もできることを証明してくれた。そういった勝つための投球にも徹しられる今、単に凄いボールを投げるだけの投手という認識は無くすべきではないかと考える。過大な期待はできないが、上位指名に相応しい選手ではないのだろうか。個人的には指名するのには勇気はいるが、ドラフトでは1位で消えると考えている。逆に2位まで流れたら、美味しい指名と言えそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2016年 春季リーグ戦)









 濱口 遥大(神奈川大3年)投手 173/78 左/左 (三養基出身)





                    「力で押せる唯一の左腕」





 今年の高校~社会人までを見渡して、ボールの力で押せる左腕となると、この 濱口 遥大 を置いて他にはいない。順調に1年を過ごせば、上位12名に入ってくる有力な候補となる。ハマった時の濱口のボールは、手がつけられません。そのぐらいの、圧倒的な投球ができる投手なのだ。


(投球内容)

 コントロールに不安があるので、ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込んでくる。そして背中を後ろに傾けつつ、腕を真上から振り下ろしてきます。

ストレート 常時140~MAX151キロ

 グワ~んと手元で伸びて来る感じも、物凄く重いような鉛球のような球威でもないのだが、ミットにズボッと収まるような厚みのあるボールを投げ込みます。それほど球質に優れているとは思いませんがさすがに140キロ台後半~150キロを越えるようなボールを投げ込む時は、勢い威力ともに容易に打ち返せるものではありません。

 非常に四死球が多くボールがバラつくイメージが強いものの、この選手のボールは両サイドに散っていて、甘いゾーンにあまり入って来ないのが特徴。打者としては、的を絞り難い厄介なタイプではないのでしょうか。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォーク・カットボール

 110キロ前後の緩いカーブと同じく、110キロ台の緩いチェンジアップが変化球の中心。たまに、120キロ前後のスライダーやフォークらしき縦の変化球、130キロ台中盤ぐらいのカットボールなどがあり、球種自体は多彩。特にチェンジアップがゆるく独特で、彼の最大の武器になります。

その他

 牽制自体は、走者を刺そうと鋭い送球を魅せるます。フィールディングの動きもよく、素早く返球します。ただしクィックは現状できないようで、1.3~1.4秒ぐらいかかります。

(投球のまとめ)

 かなりプロの投手としては、致命的なぐらい四死球が多いのは気になります。その半面、今年の左腕で屈指のボールを投げ込めるという悩ましいタイプ。特に熱いハートの持ち主でもあり、気持ちのこもった投球が魅力。

 もう一つ気になるのが、武器であるチェンジアップの球速が遅いこと。これは、もう一つのカーブの球速と同じぐらいであり、遅い球が中心になってしまうということ。同じような配球をする選手で、加賀美希昇(法大-DeNA-JR西日本)という選手が、プロにもおりました。緩いカーブと緩いチェンジアップと速球の配球パターン。投球が、緩い・緩い・速いみたいな配球で、相手に的を絞られやすくなってしまいます。加賀美のことを触れるときにもいつも書いていたのですが、スライダーやカットボールなどの中間球を、磨いてこその遅い球だということに、それに早く気がついて欲しいものです。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆

 地面に向けて足を伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合)に落とせず、体を捻り出すスペースが確保できていません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークといった球種には適さない投げ方であり、無理に投げようとして窮屈に見えます。

 地面を捉えるまでもあっさりしていて、「着地」のタイミングがあっさりしています。それだけ体を捻り出す時間は確保できておらず、曲がりの大きさやキレのある変化球の習得に苦労しそう。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けができず、力を入れて投げるとボールが高めに抜けたり制御できなくなります。「球持ち」もけして良い方ではないので、余計にボールが上手くコントロールできないのでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻が落とせないので、窮屈なままカーブを多く投げており、肘への負担は大きいはず。まだフォークをほとんど投げないので、その辺が救いでしょうか。

 更に腕の送り出しを見ていても、腕を真上から降り下ろすために背中を後ろに反らせて強引に腕を振ってきます。これでは、肩への負担が激しく、故障しても不思議ではありません。非常に、消耗が激しいフォームだと言えるでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 地面を捉えるまでがあっさりしていて、打者としては合わせやすいフォーム。それでも背中を後ろに反ることで、体の「開き」は隠すことができ、「開き」としては並ぐらいでしょうか。

 振り下ろした腕は身体に絡むなど、腕が振れていることは良いこと。ボールへの体重の乗せは、足の甲で地面を押し付けられず、上体を覆いかぶさるようにしてボールに球威と勢いを生んでいます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外には課題を感じます。フォーム全体に粘りがなく、まさに勢いで押すフォームだと言えるでしょう。

 足の甲の押し付けや「球持ち」の浅さから来る制球力への不安、お尻の落としや腕の送り出しから来る故障のリスクも考えると、極めて課題の多いフォームだと言えます。


(最後に)

 持っているボールの威力・気持ちのベクトルの向け方なども素晴らしいのですが、コントロール・実戦的なフォーム、故障のリスクなどを考えると、手をだすのには勇気のいる素材だと思います。そのことを重々承知の上で、獲得に動いて欲しいところ。

 このフォームを変えてゆけというのは難しいでしょうから、投球における中間球をいかに上手く織り交ぜられるのかに注目したいところ。もう少しカットボールなりで、楽にカウントが整えられるようになると、投球も楽になると思うのですが。そういった配球の変化に、今年は注目して見守ってみたいと思います。


(2015年 大学選手権)