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田中 正義(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







田中 正義(創価大4年)投手 186/90 右/右 (創価出身) 
 




                        「まだ良化途上」





 春季リーグ戦でベストな内容とは言えないものの、モノの違いを魅せていた 田中 正義 。しかしその次の登板で途中降板すると、秋のリーグ戦まで全休。ようやく復帰した秋の投球でも、まだ良化途上の印象を残した。それから更に2週間経った、神宮大会出場を決める横浜市長杯での登板が期待されたが、序盤であっさりK.Oされ完全復調までは程遠い内容だった。今回は、この秋2試合の模様をみた感想も踏まえて 田中 正義 の最終寸評としたい。

(投球内容)

ストレート 常時140キロ台~MAX95マイル(153キロ) 
☆☆☆☆ 4.0

 秋の流通経大戦では、常時140キロ台~力を入れた時の球は140キロ台後半を記録。ボールも適度に両サイドに投げ分けられていたものの、故障前ほどのボールの勢いは感じられず物足りないものだった。特に田中は開きが少し早く球筋が見やすい傾向と、キレ型の球質のために、まともに捉えられるとスコーンとキレイに振り抜かれる怖さがある。今までは、破格のボールのキレでまともに捉えられる機会は少なかったが、本質的には球威よりもキレで空振りを誘う球質。その球がキレていないで高めに浮けば、容易に捉えられてしまう。過去3年間ではまずなかったことが、最終学年では露呈することになる。そういった意味では、ストレートの球速はある程度回復しても、その内容は明らかにワンランク落ちている。プロ入り後、その速球のキレを取り戻せるかどうかにかかっている。

変化球 フォーク、スライダー、カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 これは怪我をする前から指摘したことだが、下級生の頃はスライダーやカーブをうまく織り交ぜて投球をしていた。しかし3年生ぐらいになると、圧倒的にフォークの割合が増えて来る。ほとんど速球とフォークとのコンビネーションになっており、その分カーブのブレーキやスライダーのキレが鈍ってしまった。これでは身体への負担も大きいだけでなく、単調になり打ち込まれるリスクが増えてしまう。そのフォークも野茂英雄のような圧倒的な落差・精度がないので、どうしても速球に頼らざるえなくなる。速球がキレている間はそれでも誤魔化せたが、現状は非常に厳しいと言わざるえない。

その他

 クィックは、1.1秒台前半とまずまず。牽制も、適度な鋭さでターンでき下手ではない。しかし流通経済大戦では、走者がいても完全にフォームを盗まれる場面が目立つなど、盗塁をフリーバスにしていたのは気になる材料。投球に集中したいからだと思うが、これをプロ相手にするわけにはゆかない

 また横浜市長杯では、先頭打者を出した後の送りバントで、明らかに間に合わないタイミングなのにセカンドに送球し状況を悪化させてしまう。自分のリズムで投げられないと、非常に脆い部分が顔を覗かせた。下級生までの田中を見ていれば、まず考えられないプレーだった。

(投球内容)

 下級生の頃は、圧倒的なボールの威力で抑え込めたので粗が見え難くなっていたのは確か。しかしボールが走らなくなってきたことで、投球の未熟さ、精神面の不安定さを露見することになった。以前から気になっていただが、田中は非常に顔の表情がマウンドに出やすい。カッカしているとかではなく、顔が時々弱気な顔になるのはどうにも私には不安を覚えるところ。野球への取り組みはストィックなタイプだけに、逆に完璧さを求めて裏目に出ているように思う。

 高校3年の時は、肩を痛めて完全に投手をやめていました。大学になって投手に復帰するわけですが、プロの長く厳しいシーズンを想定すると、この肩が持つのか? あるいは、以前のようなボールの勢いを取り戻すことができるのか? たとえボールを回復したとしても、極めて一時期的な限定した活躍になるのではないかという不安は拭えません。

(成績から考える)

 春の寸評でも、故障までの成績で傾向を観てきた。今回はサンプルな少ないが、この秋の成績から今まで残した成績どの程度数字が変わっているのかみてみたい。ちなみにこの秋の成績は、

8試合 4勝0敗 44回1/3 22安 13四死 42奪 防御率 1.83

1,被安打は、イニングの70%以下 ◎

 故障前の被安打率は41.4%だったのが、49.7% と悪化。それでも基準である70%を遥かに下回る数字であることを考えれば、この点は大きな問題とはいえない。

2,四死球は、イニングの1/3以内 ◯

 故障前は24.8%だったのが、29.3% と悪化。しかし基準であるイニングの1/3以内のファクターを満たしている。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◯

 故障前は、1.03個奪っていた奪三振は、0.95個 と低下。しかし先発の数字どころか、リリーフの基準も未だ上回っている。

4、防御率は、1点台以内 ◯

 4年春までの通算成績が、0.37という脅威的な数字だったのに比べると、ラストシーズンは 1.83 とファクターこそ満たしているものの、並の成績になってしまっている点は気になるところ。

(成績からわかること)

 これまでの数字が圧倒的だっただけに、この秋の成績はポイントを随分下げてしまって物足りなさは感じる。それでもすべてのファクターを文句なし満たしているだけに、さすがだと言えよう。

 しかし今の状態を良化途上と捉えるべきか、本当に今後回復するかとみるかは微妙なところではある。仮に回復しても、非常に短期間で再び何処かを痛めても不思議ではない。並の候補ならば、このぐらい数字を残せば充分評価されるはず。しかし田中に求められるハードルも高いために、どうしても厳し目にみてしまう。横浜市長杯の投球はド返しにしても、この秋のリーグ戦並の投球ができれば、プロでも全く通用しないとは考えづらい。数字は、それを物語っているのではないのだろうか。


(最後に)

 12球団でも、最も選手層に余裕がある ソフトバンク に指名されたことは、田中にとって幸運だったと思います。そのため中途半端な状態ならば、無理をさせないだろうということ。状態さえ回復すれば、今年の候補の中でも頭一つ抜けた存在であることは間違いありません。しかし怪我をする前から、不思議と先発で15勝するとかそういった未来像が浮かばないタイプでした。それはボールの凄さは感じていても、投球術などを見ているとプロの先発投手のそれとは思えない投球をしているからでしょう。もし彼が一軍の中に入ってゆくとすれば、リリーフからかもしれません。

 ドラフトの超目玉であることは否定しませんが、我々が思っている以上に精神的にも、技術的にもまだまだ発展途上の投手だということ。その上、故障の影響でまだ良化途上であるという2つの不安要素を持った投手でもあるということは、頭の片隅に入れておいた方が良さそうです。もちろんそれでも下級生時代のボールの勢いを取り戻せば、文句なしの ☆☆☆☆☆ だったのですが、最終学年の投球を見ている限り最高評価はちょっと怖くてく出来ないという結論に至り、評価は春からの据え置きとなります。まずは、プロでの復調を祈らずにはいられません。


蔵の評価:
☆☆☆☆


(2016年 横浜市長杯)










田中 正義(創価大4年)投手 186/89 右/右 (創価出身) 
 




                      「やっぱりモノは違う」





 今春は僅か2試合の登板しかできなかった、ドラフトの目玉選手・田中 正義(創価大)。その今シーズ開幕戦を見たが、本調子ではなかったとはいえ改めてモノの違いを実感する内容だった。持っているものは、やはり今年の候補の中でも頭一つ抜けた存在であるのは間違いない。


(ここに注目!)

 本気モードで投げた時のボールは、異次元の領域に達する。現在の日本球界において、プロアマ合わせても 大谷 翔平(日ハム)に次ぐボールを投げられるのは、この 田中 正義 を置いて他にいない。


(投球内容)

 観戦した杏林大戦では、けして本調子という感じではありませんでした。特に変化球の精度が低く、速球とフォークに頼らざるえない、そんな最近の内容を引きずっています。

ストレート 145~151キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 元々田中は、普段のリーグ戦では全力で投げない投手。彼の本気モードの投球が観られるのは、全国大会やプロアマ交流戦などの限られたところだったので、正直そのへんはあまり期待しないで観戦していた。しかしこの日は、145キロを割ることなく、力を入れた球では151キロまで到達。思ったほど力を出し惜しむことはなく、順調さを示してくれた。

 田中は剛球投手のイメージが強いが、どちらかというと球威よりもキレ型の球質。そのため軽く投げていても、意外に空振りが取れる。右打者には大まか両サイドを投げ分けるコントロールがあり、左打者には多少アバウトなところがある。しかしポンポンとストラクゾーン集めて来られるし、勝負どころではアウトローにズバッと決めることができる。ちなみに今春のリーグ戦でも、11イニングを投げて四死球は僅か1個だった。


変化球 スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りするスライダーに、綺麗に抜けて来るブレーキの効いたカーブがあります。しかし最近は、この2つ球種の曲がり・制球に苦しみ、うまくコントロールできないことが少なくありません。そのため速球を魅せておいて、フォークで仕留める。あるいは速球で押し通すことも多く、中間球のコマンドに苦しんでいる傾向が観られていました。そのため怪我する前は、速球とフォークの投手になりつつあったという状況でもありました。プロの先発投手としては、やはりそういった配球では汲々となって厳しいと考えられます。ただし 上原 浩治 もそういった傾向が観られるなか、プロ入り一年目から20勝したりしたわけですが・・・。

(投球のまとめ)

 球筋が定まり出すのが遅かったり、左打者へのコントロールがアバウト。スライダー、カーブの精度が以前ほどではないという、最近感じていた欠点は、今春のリーグ戦においても改善されている感じはしません。

 それでも無理しないでも140キロ台後半を連発し、それなりにゲームメイクしてしまうところは、やっぱりモノが違うなぁと強く実感させてくれる試合でした。このまま少しずつ調整を進め、最終週の流通経済大での生田目翼との投げ合いまでに調子をあげて来られればと思っていましたが、田中は次の登板で途中降板でリタイアしシーズン終了。生田目に至っては、一度も今年登板することなく、春のシーズンを終えてしまったわけです。少なくても今年になって何か新しいことを試みた、成長を感じさせたというものはありません。


(成績から考える)

オフシーズンではフォーム分析を行っているので、今回は今まで残した通算成績から彼の傾向を考えてみましょう。

22試合 16勝1敗 145回 60安打 36四死球 149三振 防御率 0.37

1,被安打はイニングの70%以下 ◎

 被安打率は、41.4% 。私が過去ドラフト候補の成績をこのように成績から検証した中でも、こんな数字の選手いたかな?と思ってしまうほどの被安打率の少なさです。これでも普段のリーグ戦では力を抜いて投げているわけですから、驚きの数字だと言えるでしょう。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、24.8% 。イニングの1/3以下どころか1/4以下です。けして細かいコントロールがあるというわけではないのですが、圧倒的なボールの威力を元に、ポンポンとストライクゾーンに投げ込んできます。それでも打たれないわけですから、モノが違うとしか言いようがありません。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振数は、1.03個とイニングを上回ります。先発投手でありながら、イニングを上回るわけですから能力が高いのは確かです。しかしリーグ戦では殆ど力を入れて投げないことが多く、彼の本当の投球が見たければ、全国の舞台、プロアマ交流戦とかそういった時でしょう。NPBの若手選抜と対戦した時のように、6者連続三振など当たり前のようにやってしまう能力を持っています。

4,防御率は、1点台以内 ◎

 4年間の通算成績が、防御率 0.37 です。昨秋は、リーグ戦無失点のままシーズンを投げきりました。今春は、久々にリーグ戦で失点。更に通算成績も2年春に1敗しただけで、16勝1敗 だけという圧倒的な成績です。

(成績から考える)

 これまで何人も大学生の成績を検証してきましたが、今までのベストと呼べる投手は、先輩の 小川 泰弘(ヤクルト)だったのではないかと思います。しかし残した成績の内容からすれば、その小川を遥かに凌駕する歴史的なピッチャーであることは間違いありません。秋に復活してこれに準ずる成績を示せば、文句なしドラフトの超目玉になることは間違いないでしょう。

(最後に)

 田中正義の能力を疑う人はいないでしょうが、問題はこの投球をプロの長いシーズンを通して示し続けられるのかという部分につきます。というのは、田中自身高校時代に肩を痛めて投手を断念していた時期がある選手だからです。そのため一定の負荷をかけてしまうと、どうしても身体が耐えられないそういった恐れがついてまわります。

 この辺が、鉄腕の名前を欲しいままにしていた 先輩・ 小川 泰弘 との決定的な違いになります。先輩はルーキーながら1年目から15勝をしましたが、それならば田中はそれ以上やれるのかと言われると意見の別れるところではないのでしょうか。

 現状のピッチングスタイルからすれば、リリーフの方が向いているといえます。しかし彼の身体のことを考えると、登板に一定の間隔が開けられる、先発でこそ活躍できる舞台であることは間違いありません。できるだけ投手陣に余裕のある球団で、負荷を軽減しながらシーズンを送れる球団に入団して欲しいと思っています。

 そういったリスクとこの春のアピール内容から、現時点では少しマイナス評価に。しかし持ちえる能力を秋示してくれれば、文句なしの最高評価にという感じの選手です。あえて春は、少し控えめの評価に留めて秋の復活を待ちたいと思います。



蔵の評価:
☆☆☆☆ (完全復活すれば文句なしの目玉)


(2016年 春季リーグ戦)









 田中 正義(創価大3年)投手 186/80 右/右 (創価高出身)
 




                        「記録保持者」





 私はもう15年ぐらい、自前のスピードガンを使っているが、その記録である 98マイル(156.8キロ)を持っているのが、今年のドラフトの目玉・田中 正義(創価大)である。それは、昨年3月に行われた全日本大学選考合宿である、平塚合宿 対 JX-ENEOS戦で記録された。

 この日の田中は、とにかく体感速度からして違っていた。普段は球速ほど速く感じられないことも多い田中のストレートが、明らかに別次元に速い。そう、強く実感させられる試合だった。98マイル以外の球速でも96マイル(153.6キロ)前後を連発しており、とてもシーズン開幕前の投手の仕上がりとは思えないボールを投げ込んでいた。

(投球内容)

 田中は、リーグ戦では140~中盤ぐらいの省エネピッチングをしてくることが多い。そのため本気モードの田中を見るためには、このようなジャやパンの試合や、大学選手権などの全国大会の舞台など、限られた場面でしか見られない。その後田中は、プロの若手相手に奪三振ショーを演じるなど、数々の伝説を残してゆく。

ストレトート

 ストレートは、引っかかり過ぎtストライクゾーンに収まりが悪い時もある。しかし総じては、コマンドの高い投手だと言えるであろう。特に、右打者外角へのコマンドは高い。その一方で、左打者には結構アバウトな傾向があるということ。そしてしっかり高めで唸りをあげるので、打者思わずバットを振ってしまう勢いがある。しかし140キロぐらいだと、それほど球質が良くないので、ダルいピッチングに見えて来る。

変化球 スライダー・フォーク・カーブ

 変化球は、スライダー・フォーク・カーブなどで、スライダーが高めに抜けてしまうことも少なくない。しかしシッカリコントロールできている時は、小さく横滑りするスライダーが低めに制御されてゆく。またフォークでも、しっかり空振りも取れる。カーブも、ストライクゾーンに曲がってきて、投球のアクセントになっている。思わず、150キロの速球を魅せられてから投げられると手がでない。


 けしてコントロール・変化球レベルも、決まりだしてからは悪く無い。ただその決まりだすのに、少し時間が有する時があるということだろう。

(投球のまとめ)

 それほど繊細なコントロールも、深味のある投球術を魅せるわけでもない。しかし一つ一つの球の威力が図抜けているので、そういった理屈は、たいした意味を持っているとは思えない。こういった投球がアマで許されるのは、この 田中 正義 をおいて他にはいない。





(投球フォーム)

 理屈で投げている選手ではないので、細々したフォーム分析などする意味があるのかは疑問が残る。一応、他の選手と同じ条件で、フォームを見てみよう。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側に落とせません。すなわち身体を捻り出すスペースが、確保されていないわけです。そういった意味では、カーブやフォークといった、身体を捻りだして投げる球種には適していない。

 「着地」までの粘りを見ていも、彼はけして粘りがあるフォームではなく、意外に淡白に地面を捉えています。そのため身体を捻り出す時間も充分とはいえず、曲がりの大きな変化球やキレのある球が投げやすいフォームではありません。しかし圧倒的なストレートがあることで、変化球が効果的。スライダーにしてもフォークにしてもカーブにしても、曲がり自体は、それほど大きくはありません。

<ボールの支配> 
☆☆

 グラブは最後までシッカリ抱えられているとは言えず、結構両サイドのボールにブレがでる要因になっています。また足の甲の地面への押し付けも完全に浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが高めに抜けがち。そうかといって「球持ち」が滅法優れているというほどでもなく、これでよくボールを制御できているのなと逆に驚かされます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークを投げると肘への負担が心配されます。しかしそういった球を投げる頻度は少なく、現時点での配球ならばそれほど心配するほどではないでしょう。

 腕の送り出しを見ている限り、肩への負担が大きなフォームには見えません。高校時代に痛めた影響から、負担の少ないフォームに変えているのかもしれませんが。しかし彼に肩のスタミナがないのは明らかで、連投すると極端にパフォーマンスが下がります。今後代表合宿などが続くことを考えると、大事に扱って欲しいと心配になります。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りもそれほどなく、打者としては合わせやすいフォームだとは思われます。更に体の「開き」も平均的で、けしてボールが見難いわけでもありません。

 更に驚きなのが、振り下ろした腕が身体に絡んで来ないのです。物凄く強く腕を振っているように見えますが、実はそうでもないということ。これでは、速球と変化球の見極めもついてしまうのではないかと心配になります。ボールへの体重の乗せも、充分というわけではありません。特に足の甲での地面への押し付けが浮いてしまっており、充分な下半身の体重移動が、フィニッシュまでつなげていないわけです。それでも、あれだけのボールを投げられるというのは、どういうことなのか?

(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」で言えば、「着地」と「体重移動」に課題があり、「球持ち」と「開き」も並という、けして実戦的なフォームではありません。

 制球を司る動作も悪く、故障のリスクもけして低いフォームではありません。テクニカルな部分でいえば、この技術でよくこれだけの投球ができるなと驚きに値します。

 これは、彼が発展途上の技術においてこれだけ出来てしまうぐらい、彼のポテンシャルが凄いのか? それとも私の今までの技術論では、解明できないところで力を引き出す秘密を持っているのかいずれかでしょう。そういった意味でも、この選手は大変未知の魅力溢れる素材であるわけです。この1年、いろいろ考えさせられることになりそうです。


(最後に)

 田中正義の凄いところは、技術的にこれだけ未完成なのに、現在のパフォーマンスでここまでできてしまうという、圧倒的なポテンシャルにあります。こういう選手は、技術を修正すれば単純に良くなるとは言えないので、その辺が難しいところではありますが。

 すべてが別次元の選手であり、理屈であれこれいうのはナンセンス、そんな気にもさせてくれます。すでに数多くの伝説を残してくれましたが、最終学年で更に凄みを増すのか? 歴史の目撃者となりたいですね、文句なし2016年度の目玉です。


(2015年 プロアマ交流戦)