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船越 涼太(広島)捕手のルーキー回顧へ







 船越 涼太(22歳・王子)捕手 178/82 右/右 (市立柏出身)
 




                     「意外にやれてしまう選手」





 見ていると攻守にまだ粗っぽい選手なのだが、意外に実戦に入るとやれてしまう選手、それがこの 船越 涼太 。千葉の市立柏から社会人入りして、高卒4年目でのプロ入りを実現。一体どんな選手なのか、考えてみたい。


(ディフェンス面)

 重心を深く屈めて、投手には低めに投げやすく、審判には低めの球筋を見やすく構えます。ミットもしっかり示し、投手としては狙いがつけやすいはず。動作一つ一つは、それほどきめ細やかな感じはしないものの、やることはしっかりやっている印象は受けます。

 グラブを地面に下ろす癖がないので、ワンバウンドするような球にも立ち遅れる心配はありません。ボールを押し込むような力強いキャッチングではないので、際どいコースに決まった時に審判がストライクのコールをしてくれるのかは微妙。時々低めの球に対しても、ミットを上から被せに行こうとしますが、天性の反射神経でキャッチングミスは少ないように思います。少々危なっかしくも見える時があるのですが、キャッチング自体はけして下手ではありません。プロに混ぜても、合格レベルはあると思います。

 リードも好投手・近藤 均(王子)投手の好投を演じるなど、先輩に対しても臆することリードし好投を導きます。何より素晴らしいのは、捕ってから投げるまでのスローイングで、しっかり型も作れてから素早く送球できます。二塁までの到達タイムは、1.8秒前後。そのスピードは、社会人でもトップクラスだと言えるでしょう。高卒4年年目ですが、ディフェンス力はプロの基準に満たすレベルには達していると評価できます。





(打撃内容)

 非常に強くバットが振れるのが特長で、まともに捉えられればホームランも期待できます。ただしかなり粗っぽく対応力は低く、一軍の投手相手には、まだまだついて行くのはキツイだろうなと感じます。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは低めに添えて脱力できています。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並ですが、両目で前を見据える姿勢はよく、しっかり錯覚を起こすことなく球筋が追えるはず。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールをできるだけ引きつけてから動き出すこの始動は、天性のホームラン打者か生粋の二番打者に多く観られます。彼の場合は粗っぽいですが、ホームラン打者の類ではないかと考えます。

<足の運び> 
☆☆

 足を軽くあげて、ベース側にインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短く、線ではなく点でボールを捉えるタイプ。そのため狙った球は、確実に仕留める技術が求められます。

 ベース側にインステップするように、外角に強い意識があります。しかし踏み込んだ足元は早く地面から離れるので、どうしても引っ張り重視の打者あることがわかります。外角の球を引っ張り込もうとするので、どうしても打てる球は引っ張り込める程度の甘めの外角球となり、打てるコースは極めて限られることになります。

 打てるタイミング・打てるコースが限られているということは、どうしても率が残り難いスイングだということ。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、特に問題はありません。バットの振り出しは、肘が下がって少し遠回り。少なくても、インサイド・アウトの軌道でバットが出てくるタイプではないでしょう。そのためインステップして踏み込むことも相まって、内角の捌きには課題があることがわかります。

 それでもバットの先端であるヘッドは下がらないので、ドアスイングというほど遠回りではありません。ましてヘッドスピードが相当速いので、あまりロスがあるようにも見えません。

 ボールを捉えたあとの、スイングの弧は非常に大きく、フォロースルーなどもある程度使えるので、ボールを遠くに運ぶこともできています。当たれば大きいけれど、滅多に当たらない、現状はそんな感じでしょうか。

<軸> ☆☆☆

 足の上げ下げは大きくないので、目線は大きくは上下動しません。体の開きは速い方なので、充分我慢できていないというか、引っ張りしか意識していないという感じはします。軸足は地面から真っ直ぐ伸びており、大きくは崩れないので悪くないでしょう。

(打撃のまとめ)

 ボールを捉える技術・センスには疑問を残す部分はありますが、まともに当たりすれば飛んでゆくだけのパワーとスイングをしているのは確かです。極めて確率は低いものの、かなりの割合でオーバーフェンスを望める極端なタイプかと。

 バットを振れる選手なので、振ってゆく中でボールを捉える感覚を養えることを期待します。現状は期待できませんが、将来的には面白いスイングをしています。


(最後に)

 ディフェンス面も、プロの投手に対応するのには1,2年はかかるように感じます。また打撃に関しては、将来的に対応し切れないまま終わる可能性も考えられます。

 しかし捕手としては素晴らしい強肩でもありますし、リード・キャッチング等も見た目ほどは粗っぽくありません。打撃も飛ばす才能を秘めており、この部分が全面に出て来ると、面白い素材ではあると感じます。

 「旬」かと言われると、まだ即一軍が見えてきません。しかし捕手というポジションは時間がかかりますし、肩・長打というポテンシャルを秘めた選手なので、多少時間がかかるにしても、いち早くプロの世界に飛び込むことがマイナスだとは考えません。


 即戦力ではありませんが、じっくり育てる覚悟がある球団ならば、指名もありなのではないのでしょうか。



蔵の評価:
 (指名の最後の方ならありでは)


(2015年 都市対抗)