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矢島 陽平(巨人)投手のルーキー回顧へ







矢島 陽平(25歳・BC武蔵)投手 179/82 右/右 (進修館-駿河大出身) 
 




                    「オーソドックスな上手投げ」





 非常にオーソドックスな上手投げで、特にスケールで魅了するとかそういったタイプではありません。リリーフとして活躍し、安定した投球が光ります。

(投球内容)

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤

 驚くようなボールは投げないのですが、両サイドを投げ分けるコントロールと、カットボール気味のスライドするクセ球が特徴。空振りを誘うというよりは、微妙に芯をズラす投球が持ち味。

変化球 スライダー、カットボール・チェンジアップ・ツーシーム系?

 変化球は、スライダー・カットボール系の球と、チェンジアップ・ツーシーム系であり、大きな変化よりも球速のある小さな変化が持ち味。もう少しスプリットなど、沈む球もあるとピッチングの幅が広がりそう。

(投球のまとめ)

 何か凄い球があるとかそういうことはなく、適度な勢いとまとまりで勝負する実戦型。むしろ1年目から、ある程度結果を残してゆきたいタイプではないのでしょうか。

(成績から考える)

BCでは、最初の2年間は福井に在籍。今年は武蔵に移籍し、一気に素質が開花しました。

15年 53試合 2勝1敗0S 54回1/3 39安打 16四死球 44奪三振 防御率 1.16

1,被安打はイニングの70%以下 △

 54回1/3イニングで被安打は39本、被安打率は71.8%と、僅かにファクターを満たせていません。かなり厳しいファクターを設けているので、それに肉薄できているところは悪くありません。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◯

 四死球は16個で、四死球率は29.5%と基準を満たします。繊細なコントロールではなくても、四死球で自滅する可能性は低いことがわかります。

3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 △

 奪三振は、1イニングあたり0.81個。先発ならば合格ラインですが、リリーフだとちょっと物足りません。けして変化球のレベルが低いわけではなく、微妙に動く球で引っ掛けさせるのが持ち味なので、三振を奪うことにこだわっていません。

4,防御率は、1.50以内 ◯

 防御率は1.16であり、リリーフの基準も満たします。この選手の売りの一つに安定感にあるので、その期待感に応えます。絶対的な数字ではありませんが、安心してみていられるタイプ。

(成績からわかること)

 ファクター的には安定しており、ファームレベルならば通用するのではないかと思います。問題は、それが一軍となると現状物足りない内容で、その力をプロで引き上げられるかにかかっています。やはり決め手となるのは、縦の変化ではないのでしょうか。





(投球フォームを考える)

 では実戦的といっても、NPBで通用するような技術の持ち主なのかどうか?フォームを分析して、その可能性を考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、体も前に倒れ込むように体重を落として来るので、お尻は一塁側へは落とせません。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さいない構造になっています。

 「着地」までの粘りは、そこまで早い感じはしません。それでも前に倒れ込むタイプなので、あまり粘ることができず、体を捻り出す時間は充分ではないのでしょう。球種がスライダー中心に、あとは微妙に動く球が中心なの頷けます。


<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の押し付けは深くないのですが、その分「球持ち」の良さを活かして、指先の感覚でうまくコントロールできている感じがします。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせないものの、カーブやフォークなど腕を送り出して投げる球種をあまり使わないので、悲観することはないでしょう。

 腕の送り出しにも無理がなく、肩を痛めるような可能性も低いはず。そういった意味では、リリーフでの実績が示すように、こういった役割に向いているのかもしれません。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りがあるフォームではないので、打者はそれほど苦になり難いかも。それでも「開き」は抑えられていますし、「球持ち」も良いので、ボールが見えてからも中々ボールが出てこない嫌らしさはあるのかもしれません。

 あまり手足の長い体型でもないせいか?あまり腕が、身体に絡んで来ないのが残念。この辺がもっと良くなると、変化球でもっと空振りが誘えるかもしれません。ボールへの体重の乗せは悪くないので、球速以上に打者は感じるかもしれません。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」こそ並ですが、「開き」「体重移動」「球持ち」と良いものがあります。コントロールを司る動作も、足の甲の押し付けが短いところを、「球持ち」の良さで補えています。お尻を落とせないフォームではありますが、肘に負担のかかるボールも殆ど投げません。肩への負担も少ないだけに、この問題もクリアできています。

実際その投球以上に、実戦的で嫌らしいタイプなのではないのでしょうか。



(最後に)

育成枠7位での指名なので、そう多くは望めません。しかしBCでの実績・実際の投球を観る限り、ファームレベルならば1年目からそこそこの数字は残しそう。問題は、それほど見栄えがするタイプではないので、支配下登録・一軍というだけの首脳陣を唸らすだけのアピールできるかにかかっています。こういうタイプは、実戦で一つ一つ結果を積み上げることで、時間をかけて信頼を得るタイプ。まずは、1年目から成績にこだわってアピールして欲しいですね。個人的には、まだちょっとパンチ不足な気が致します。


(2015年 リーグ戦)