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高橋 周平(中日)内野手のルーキー回顧へ




高橋 周平(東海大甲府)遊撃 180/83 右/左 
 




               「日々進化を続ける男!」





春季関東大会で彼を確認した後、私は彼の勇姿を確認できないまま夏を終えようとしていた。そんななか 高橋 周平が、甲子園不出場ながらAAA選手権の代表に選ばれたと言うのだ。そこで私は、高校日本代表の練習試合を生で観戦したり、AAA選手権を2試合みたりして、彼の近況を確認することができた。

春と比べて、遊撃守備や春のレポートで絶賛した野球への姿勢の良さに大きな変化はみられず。しかしプロでは少し時間がかかりそうだと思っていた打撃フォームに、大きな変化を加えてきた。その新しいフォームを、すでに自分のモノにしているところに驚かされた。今回は、高橋 周平 の打撃に焦点を当て、最終寸評としよう。


(打撃内容)

高橋周平の打撃フォームは、巨人の高橋由伸選手のスイングに、非常に良く似ている。インサイドアウトのスイング軌道ではないのだが、外の球でも引っ張り込むような意識で、ブンと大きな弧を描いて振り抜いて来るの。打撃技術の中でも、最も高度と言われる、外の球でも引っ張る感覚で打つ。今彼は、そういった打撃に、あえて挑んでいる。

(打撃フォーム)

<構え> ☆☆☆☆

両足を揃えて構え、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合もよく、両目でしっかり前を見据えながら、非常にバランスのとれた構え。体を小刻みに動かし、自分のリズムで立てている。緊張感の中にも、適度にリラックスできていて、構えとしては素晴らしい。

しいて言えば、構えた時に懐が深く物凄く何か威圧感があるとか、どこにも投げるところが無くなる感覚に陥るような隙無しの凄みが感じられない。ただそういったものは、徐々に備わって行くので、あえて意識することはないだろう。

<仕掛け> 早め~平均的な仕掛け

春の時は、一度ベース側につま先立ちしてから踏み出すので、始動が「遅すぎる」ことを指摘した。その余分な動作が、プロレベルのスピードやキレに対応するのには大きな障壁になると書いた。しかし彼は、この2ヶ月あまりの間に、その課題を克服。新しい打撃フォームで、結果を残して魅せた。

具体的に言えば、投手の重心が下がる途中~下がりきったあたりで始動するアベレージヒッター~中距離ヒッターのタイミングで始動するようになったのだ。そのため打てるポイントが広がり、対応力が大きく向上。以前ほど一発で仕留めるような破壊力は薄まったが、率を残すと言う意味では大きな改善だと言えよう。これで、グッとプロでの活躍が期待できるようになってきた。

<足の運び> ☆☆☆☆

足を大きく引き上げている時間が長くなり、「間」が作れるようになって、いろいろな変化に対応できるようになりました。ただ足を降ろすタイミングを計るような非凡なタイミングの取り方ではなく、強く踏み込もうと言うタイプの選手です。

ベース側にしっかりインステップして踏み込むので、外の球でも引っ張り込むようなスイングが可能になのでしょう。実際には、外角でも厳しいコースの球は引っ張るだけでなく、レフト方向への打球もみられます。かなりコースや球種によって、意識的に打つ方向を変えているフシがあります。また踏み込んだ足下が、インパクトの際にブレません。狙い澄ました球を、確実に仕留める彼の良さは、今も健在でした。

<リストワーク> ☆☆☆☆

打撃の準備の形である「トップ」を作るのが早く、速い球にも対応できます。バットを寝かせながら、上から被せるようなスイングをしてきます。更に外の球を引っ張り込むような独特の大きな弧を描くスイングで、最後までしっかり振り抜きます。

当てることを重視したダウンスイングではないので、無駄がないわけではありません。しかし破壊力を強く意識し、強く振ります。けしてフォロースルーでボールを遠くに運ぶスラッガーでもありません。しかし大きな弧でボールを強く叩きますし、ヘッドスピード・体の強さが素晴らしい打球を生み出します。

<軸> ☆☆☆☆

足の上げ下げが大きい割に、頭が動かず目線がブレません。体の開きも我慢できていますし、軸足にも強さを感じます。彼の場合、軸を起点とした回転が命ですから、非常にしっかりした体軸を保てています。


(打撃のまとめ)

僅か2ヶ月あまりで、ビックリするぐらい根本的な部分から、打撃変えることができています。夏に向けて、大きく自分をいじろうとする意欲とそのセンスに脱帽です。

彼の打撃をみていると、物凄くボールを捉えるのに優れるとか、天性のスラッガーといった感じの素材ではありません。しかしながら、打席での集中力、日頃の野球への取り組み方の良さなど、いいところで結果が残せる試合感覚の良さは強く感じられます。

ただそれを導くためには、覚えておいていけないことがあります。彼の優れた資質には、非常に短時間で自己を修正できる能力があるということ。一打席目に少しからだが突っ込んだなあと思ったら、次の打席では若干始動のタイミングを遅らせたり、前の打席での反省を取り入れ修正できる能力があります。この点は、みていて驚きました。

あと外回りの軌道のレベルスイングをしていて、あれじゃ内角は捌けないと思ってみていました。しかし内角の球を捌く時は、一転して肘をたたんでダウンスイングに切り換えているんです。だから内角の球でも、切れることなくフェアゾーンにボールを落とせます。将来的には、インステップを真っ直ぐ踏み出すぐらいにしても外角の球が捌けるようになれば、かなり率も残るのではないかと言う気がしてきました。

こういった修正能力の高さや、発想の切り換えができる部分が、彼の試合感覚の良さにつながっているのだと強く実感した次第です。仕掛けを改善することで、プロでやれる下地を作り、そこから更に自分の打撃を広げて行こうと言う彼の野球への探求心は、必ずやプロの世界でも生きて来るはずです。

(最後に)

守備や野球への意識の部分は、前回のレポートをぜひ参考にして頂きたいと思います。この2ヶ月の間に、プロでは少し時間がかかるタイプかなあと言うイメージから、一年目からファームで存在感を示し、2年目ぐらいからは、一軍での戦力として期待できるまでになったかなあという評価に変わってきました。

統一球に変わり、成績の予測がつけにくいのですが、毎年2割6分~2割8分ぐらい。ホームラン15~25本を期待できるような中長距離打者に育つのではないのでしょうか。その成績以上に、勝負どころでの活躍が期待できる、記憶に残るプレーヤーに育ってくれることを期待してやみません。やはり今年の高校生では、NO.1の打者だと評価します。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2011年夏・AAA選手権)










 高橋 周平(東海大甲府)遊撃 180/83 右/左





               「オレは、プロに行きたいんだ!」





 彼のプレーを観ていると、周りの人間にこう叫んでいるかのように思える。そう彼は、プロに行きたくて行きたくてしょうがないのではないのだろうか。だが高校生で、これだけ明確に自己アピールしてくる選手は珍しい。その実力云々以上に、ぜひプロに入れてあげたいと思わせるだけのものを彼は持っている。


(プロスカウトを魅了する人間性


 普段の仕草からして、お手本のような野球人だ。徹底的にマークされ敬遠されるような場面でも、けしてボールがミットに収まるまで目線を切らさない。ここまで高い集中力を魅せる野球人は、あの松井 秀喜(アスレチックス)以来ではないのだろうか?更に気持ちがいいのが、フォアボールになると一塁ベースまで素早く向かう謙虚な姿勢。

 ネクストバッターボックスでも、前の打者の対戦に集中して見据えることができている。投球と投球の間には、体が冷めないように、しっかり素振りを入れて次の打席に対し入念に準備をして備える。

 打席に入るときも、バッターボックスのラインを踏まない配慮がなされ、細かい部分まで神経が行く。足場の馴らしも入念で、軸足になる後ろ足の地面はしっかり彫り込んで、打撃へのこだわりも感じさせてくれた。

 前日、東海大甲府のナインは、観客席で観戦するために客席に向かっていた。そこでナインの先頭に立つ彼の姿を間近で見たが、実に精悍な男らしい顔立ち。それでいて試合前の整列の時には、誰よりも早く整列に向かうと云うのではなく、周りと歩調を合わせるように一緒に集まる。一年春から中心選手として活躍するのに、けして御山の大将ではなく、協調性と周りへの気配りを忘れない男だった。むしろそのきめ細やかさを観ていると、イケイケの野手と言うよりは、非常に慎重で細かいところまで意識が行く、バッテリー的な性格の持ち主だと言う気がしてくる。

 試合後、多くの記者に囲まれインタビューを受ける彼の姿をみた。その受け答えもしっかりしており、この選手は精神的にも大人だなと強く実感する。私が彼の方をみると、パッと私の視線に気づき目が思わず合う。勘のいい男だなと、思わず思った。

 私が生で観戦したのは、一年春の関東大会だったかと思う。その時は、怖いモノ知らずで伸び伸びやっているプレーヤー。その割に勝負強く、打席での集中力の高い選手だったと記憶している。この2年間でどのような男に成長しているのかと思ったら、けして奢ることなく足下をしっかり見据えて努力してきた、そんな成長のあとがハッキリと印象づけられた。これだけプレーヤーとしての人間性に関心させられるのは、本当に高校生では松井秀喜以来ではないかと思う。


(守備・走塁面)


 一年春に観た時は、三塁手としてもまだまだで、そんな選手が遊撃を守っていると聞き心配していた。確かにプロの遊撃手としては、スピード感にも欠けるし、身のこなしも柔らかくはない。プロの遊撃手としての素材としては、正直見劣りする。しかし身の丈にあったプレーをする選手で、ボールに対する入りが実に丁寧で、堅実で正確なプレーに務めようとする。今自分ができる範囲のプレーを、可能な限り行おうと言う姿勢が感じられるのだ。これは、早稲田時代の鳥谷 敬(阪神)を彷彿とさせる。それでいて物凄い深いところから、ノーバウンドで正確に送球する地肩の強さも本物で、足腰が実にしっかりしているなと思わせられる。パリーグのようなダイナミックなプレーをする球界ならば、プロで鍛えれば遊撃を任せられるかもと言う気にさせてくれるぐらいのプレー。プロでは三塁がベストだとは思うが、ひょっとすると二遊間も担えるかもと言う気にさえ観ていると不思議としてくる選手だった。

 一塁までの塁間は、4.2秒前後と、プロの基準レベル。そのため、けして足は遅くないが、将来的に足を売りにして行くタイプではないだろう。ただ意識の高い選手なので、相手が隙を魅せようものなら、次の塁を果敢に取りに行くような走塁は期待できるのではないのだろうか。






(打撃内容)

 スラッとした体型ではなく、ガッチリとしたパワフルな体格の選手。振り出してからは、一気にポイントを射貫く「鋭さ」を持った選手であるが、基本的に中距離打者であるように思える。将来的には、2割8分・20本タイプで、勝負強さを活かして打点を多く稼ぐ打者に育つのではないのだろうか。

 ただ気になるのは、技術的な部分で、一度始動し始めてからベース側にチョンと足を降ろし、再び再始動する余分の動作が観られる点。一年生の頃にはそういった部分はなかったかと思うのだが、その分投手への対応が遅れてしまって「遅すぎる仕掛け」のタイミングになってしまっている。このためプロレベルの投手のスピード・ボールのキレには、かなり立ち後れて苦労するだろうなと言うことは予想される。

 ただバットの振り出しやタイミングは、ある程度プロ入り後も改善ができるもの。特に高校生の場合は、それだけの時間の猶予が許される可能性が高いので、長い目で見れば充分改善も可能だろう。あとの部分は、それほど技術的に一年生の頃と変わっておらず、経験と自信、筋力の成長に伴い実績を残したことが伺われる。しいて言えばトップを作るのが遅れがちだったのを、今は改善されつつあると言う部分だろうか。

 やはりこの選手は、ヘッドスピードが非常に鋭いし、体に力があると思います。それは、センターフライを上げた時に、非常に空高く長い時間かかって落下した打球からも、そのことが伺えます。基本はライナー性の、ラインドライブがかかったような打球が持ち味ですが、こういった打ち損じの打球からも、彼の非凡さを伺うことができました。


楽天


(最後に)

 本質的には中距離打者で、プロでも遊撃手は厳しそうな素材を高く評価すると言う流れは、中日に入団した堂上 直倫(愛工大名電)の時に似ております。堂上の時は、プロで何を彼が売りにして行くのか正直掴めず、彼をスカウト達がどうしてそこまで高く評価するのかわかりませんでした。その堂上と比べると、左右の打席の違いはありますが、技術の完成度では堂上の高校時代の方が上だと評価します。しかし壁を乗り越えてゆけそうな人間性、プレーヤーとしての将来性は、この高橋周平の方に魅力を感じます。超A級の素材だとは思いませんが、何か惹かれるものがある。そういった魅力を私に残してくれる選手でした。少し時間はかかるかもしれませんが、プロでの活躍を期待せずにはいられません。その素材以上の何かを、残してくれる選手になるのではないのでしょうか。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


蔵の評価:☆☆


(2011年 春季関東大会)



 








高橋 周平(東海大甲府)下級生寸評(無料)



 高橋 周平(山梨・東海大甲府)三塁 180/83 右/左

サイズ通りのドッシリした下半身が目を惹く大型遊撃手。面構えも悪くない(去年の成田・中川に少し似てるかも…)。引いた右足で一旦タイミングを取ってから振ってくるバットスイングの鋭さと打球の速さは確かに非凡なモノがあった。

 この日は2打数2安打。8回には貴重な追加点となる2点タイムリーを放った。とにかく相手投手のマークが尋常でなく、最初の打席から死球、四球、四球。マジメな話、1回も打球を前に飛ばす機会も拝めず帰路に就くのではないかと焦らされた。幸いにも2番手以降の投手が勝負してくれて事なきを得たが…。

 2本のHITはライナーでセンターへ抜ける当たりと一二塁間をゴロで破る当たり。通算56本塁打という数字だけ見ると打球の上がる長距離砲のスラッガーという姿をイメージしがちだが、本質的には鋭いライナーを放つ中距離タイプの打者かもしれない。そういった点では確かに森野にダブるモノがある。

 秋がどうだったかは分からないがこの日は3番を打っていた。後ろに強力な打者が控えるなら、4番に座って歩かされまくるよりも3番を打つほうがチームとしての打線の回り、巡りとしては良いのでは!?

 プレー全体にダイナミックさを感じる場面はあったが、ショートの守備に鋭さやキレはあまり感じなかったので、上のレベルではサードか外野手タイプかもしれない。ベースランニングは結構速かったので、盗塁をビシバシ決めるほどではないにしろそれなりの走力を兼備。 スローイングは正確だし地肩も強そうだった。

 現段で今秋のドラフト上位24人に入る程かというとまだ何とも…といった印象だが、今後、特に夏までのアピール次第ではその可能性はなきにしもあらずか。東海大甲府は春季県大会を制し関東大会出場を決めたので、上手くタイミングが合えばそこでもう一度観戦してみたい。


(2011年 5月6日 DINAMO-JIN 氏)