10ky-7





駿太(オリックス)外野手のルーキー回顧へ








後藤 駿太(群馬・前橋商)中堅 180/75 右/左





                            「評価不動!」





 
夏の甲子園一回戦・宇和島東戦では、内野安打一本に終わった 後藤 駿太。しかしアウトにこそなったが、ボールを的確にミートポイントで捉えていた。続く北大津戦では、ダイビングキャッチから一気に飛び出したランナーを捕殺して余計な力みがなくなり、その後二打席でヒットを連発。元来の思いっきりの良いスイングが、蘇ってきた。

 春季関東大会の時点で☆をつけたその評価は、この甲子園でも揺らぐことはなかった。今回は、高校球界屈指と言われる、三拍子揃った男の最後の寸評をお送りしたい。


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後藤 駿太(群馬・前橋商)外野 [小説] 


(プレースタイル)

 鋭い打球で野手の間を抜けて行くのが、この選手の持ち味。けして筋骨隆々体格ではないのだが、バットの芯でしっかりボールを捉えられるので、打球はしっかり伸びて行く。春季関東大会で魅せた、センターバックスクリーンに一直線に伸びて行った打球は、今でも忘れられない。


(守備・走塁面)

 この選手、左打席からベース側にしっかり踏み込んでから走り出すので、どうしても一塁までの塁間は、それほど速いタイムは出ない。そのため一塁までの塁間は、4.1~4.2秒ぐらいと平均的。ちなみに走力の目安としては

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。


 後藤選手の場合、プロの基準に混ぜると、基準~やや上程度のタイムでしかない。しかし三塁までベースランニングは、11秒台前半。彼の最大の持ち味は、加速するベースランニングの速さに集約され、このタイムは、プロでも上位レベルの脚力となる。そのため彼自身が持っている走力は、一塁到達タイムでは計り知れず、実際にはもっと速いと考えて良いだろう。

 ただ夏の群馬県予選では、6試合で盗塁は僅か1個。春季関東大会では、スタートの良い積極果敢な走塁が目立ったものの、まだまだその技術・積極性においては、課題が多いのかもしれない。プロで足を売りにできるのかは、現状微妙だと言えよう。


 打球への勘・守備範囲の広さ・球際の強さなども、高校生としてはA級だ。その最たるものが、北大津戦に魅せたダイビングキャッチ。そして一塁への好返球である。将来的に、上のレベルでも売りにできるだけの守備力を有する可能性は充分あり、そういったセンスは持ち合わせている。

 ただ気になるのは、何処か痛めてしまったかのような返球動作。それでも強肩ぶりは健在だし、制球力も安定しているので能力的には問題はない。ただ将来的に今の投げ方だと、また痛めるかもと言った不安はよぎる。投げても140キロ台を記録すると言われていた強肩も、最後の夏は、僅か1/3イニングしか公式戦で投げていない。

 いずれにしても現時点で守備・走力共に、プロに混ぜても中の上レベルの能力を有しているし、更にその指導・努力次第では、それぞれの分野で売りにできる可能性を秘めている。真に三拍子揃った選手に育つ可能性は、充分ありそうだ。


(打撃内容)

 まずは、下記の寸評を参考に、春との違いについてのみ取り上げてみたい。

<変化1>

 春までは「遅すぎる仕掛け」を採用しており、プロレベルのスピード・キレに対応するには、あまりに始動が遅すぎた。しかし甲子園では「早めの仕掛け」を採用することで動作に余裕が生まれ、スピードボールにも対応しうる始動に変更したのが最大の変化。実際このタイミングがモノにできているかは微妙だが、上のレベルを意識して新たな取り組みをして行こうと言う姿勢は感じられた。

 仕掛けには大きく分けて、5つの種類に分かれる。単純に云えば、始動が早いほど、アベレージ打者の傾向が強く、遅く始動し出来るだけボールを引きつけて叩くタイプほど長距離打者の傾向が強いことを覚えておいて欲しい。この始動タイミングで殆どの打者は、打撃スタイルが決まって来る。

1,早すぎる仕掛け 投手が足を引き上げる前~引き上げきった段階での始動

 始動が早ければ早い程良いのならば、この段階でみんな始動すれば良い。しかし投手が足を降ろし始める前にスイング動作に入ると、投手がタメの時間を操作することで、事前にタイミングを狂わせることが可能なのだ。そのためプロレベルでは、この段階で始動する打者はいないはずだ。

2,早めの仕掛け  投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動

 これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな緩急に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。ち


3,平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。このスタイルは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイルだ。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、このスタイルを採用しているケースが多い。

4,遅めの仕掛け 投手の重心が沈みきった後、前に体重移動をする段階での始動

 多くのスラッガーが、この仕掛けを採用している。始動~ボールが到達するまでに時間がないので、狙い球を絞って叩くような打者でないと、上手く扱うことが出来ない。ボールをぎりぎりまで手元まで引きつけて、最大限のインパクトをぶつけるので、それだけ破壊力も大きくなる。これには、強靱なヘッドスピードや筋力が求められるので、大概は長距離打者が多い。

 ただ状況に応じて、瞬時に判断することが求められる二番打者タイプにも、この段階での仕掛けを採用する選手が多いことも覚えておきたい。ただそういった打者は、非常にヘッドスピードが鋭いはずだ。

5,遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動

 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。

 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトを間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用ないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。


<変化2>

 外の球を強く叩くと言う打撃の基本を重視するために、春までは真っ直ぐ踏み出していたのを、かなりベース側にインステップして踏み込むようになっていた。その弊害もあって、右投手の食い込んで来る真ん中~内角よりの球を引っ張る時に窮屈になって、ボールがゴロになって抜けるケースが増えた。以前よりもボールが上がらなくなったのは、仕掛け自体がアベレージヒッターの仕掛けに変わっただけではないように思える。


<課題>

 相変わらず打撃の準備段階である「トップ」を作るのも遅れ気味。その一番の要因は、バットを後ろに引くのが遅いからだと考えられる。この辺の技術を見ていると、少しプロでもスピードに対応するのは、苦労するかもしれない。

(それでも)

 技術的にはまだまだ課題はあるが、変化球を上手く合わせる技術も兼ね備える。確実にミートポイントで捉えられる技術・変化球に対応しうる上手さ・難しい球を見極める目・ヘッドスピードの鋭さなどには非凡な才能があるという春の印象は、最後まで変わることはなかった。

楽天


(最後に)


 甲子園の第二試合途中でダイビングキャッチ~捕殺を決めると言うプレーをするまでは、緊張なのか?彼らしいプレーが陰を潜めた。そう考えると、けして環境適応に早いタイプではないので、プロでどの段階できっかけを掴めるかで大成への道のりも変わってきそう。また野球への意識も春季大会を観る限り並であり、一軍の戦力になるには3年~5年程度はかかるのではないか。

 それでもプロを意識した時に、三拍子すべてに関して「プロの基準」を満たしており、「心技体」の観点でも大きな破綻はない。西川 遙輝(智弁学園)外野手と共に、高校球界では屈指の外野手と言えるのではないのだろうか。この二人が、どんな成長曲線を描いて行くのか、個人的には興味が尽きない。ぜひ高校からプロに入って欲しい選手であり、ドラフト会議当日には中位指名前後での指名が期待できそうだ。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)





後藤 駿太(群馬・前橋商)中堅 180/72 右/左


 下級生の頃から、将来を嘱望されてきた大型外野手ではあったが、昨夏よりも遥かにスケールアップを。今秋のドラフト会議でも、有力な指名候補に浮上してきた男 後藤 駿太 を 取り上げてみたい。


(プレースタイル)


 春季関東大会では、いきなりセンターバックスクリーンに叩き込む圧巻の本塁打を放つ。ただ本質的には、スラッガーと言うよりは、中距離タイプの強打者ではないのだろうか。ただ昨夏からの大きな成長は、甘い球を逃さない「鋭さ」に磨きがかかったことだろう。私が観戦した日大鶴ヶ丘戦では、最終打席のハーフスイングを三振と判定された打席以外は、すべての打席でミートポイントでボールを捉えていた。


(守備・走塁面)


 昨夏までは、それほど盗塁を積極的に仕掛けるタイプでもなく、50メートル 6秒0と言われる俊足の片鱗は観られなかった。しかしこの試合では、塁に出ればすかさず盗塁を試みるなど積極性が出てきたのは確か。塁間は、4.1秒ぐらいでプロレベルで足を売りにできるのは微妙なものの、基準レベルからそれ以上の走力があるのは間違いない。特に盗塁に一番大事なスタートの良さがあるのは、魅力だと言えよう。

 中堅手としての打球への勘などは悪くありません。昨夏までは、可も不可もなしといった感じの守備力でしたが、この一年間でよくなっていると思います。地肩もかなり強いのですが、試合前練習からフォームがおかしいのが気になっていました。どうも肘あたりを痛めたことがあるのか、その形が気になります。それでも試合前練習では、ホームにどんぴしゃのスローイングを魅せており、確かに気になる材料ですが、悲観するほどではないと思います。


動画:後藤 駿太(群馬・前橋商)外野


(打撃内容)


 打球は、センター方向に伸びますし、内角よりの球はライト方向におもいっきり引っ張ります。また変化球を上手く合わせる技術も兼ね備えます。確実にミートポイントで捉えられる技術・変化球に対応しうる上手さ・難しい球を見極める目・ヘッドスピードの鋭さなどには非凡な才能があるといえるのではないのだろうか。

 前足のカカトをトントンと揺らぎ、グリップの高さは平均的、あらかじめ捕手方向に引いて構えます。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などもよく、リラックスして構えられているのは良いのではないのでしょうか。

 仕掛けは「遅すぎる仕掛け」を採用しているのが気になります。一度ベース側につま先立ちして、そこから再度足を引き上げるので、どうしても一定レベル以上の球速の球に立ち遅れ気味です。その点では、上のレベルのスピードに苦労するかもしれません。

 足を軽くステップさせ、真っ直ぐ踏み込みます。踏み込んだ足元がブレないのは良いです。一見打てる球が限られていそうですが、天性のリストワークで対処できてしまうところが、この選手の強味。

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのも遅れ気味です。それでもバットのヘッドを立てながら、最後まできっちり振り抜けるスイング。スイングだけみていると、けして長距離打者ではなく、コンパクトヒッターに見えます。それでも打球が飛んで行くのは、しっかりしたミートポイントでボールを捉えられ、身体にも強さがあるからでしょう。ヘッドスピードは、プロの基準を満たすだけの鋭さがあります。

 頭のブレが小さく目線に狂いがありません。体の開きも我慢でき、軸足にも安定感を感じます、スピードボールに立ち後れない対処さえできれば、将来は楽しみな選手です。


(意識付け)


 ただ前の打者との対戦を見つめておりますが、試合への入り方などの集中力・素振りなどの意味を考えた意識の高さは、普通の高校生かなと思います。また打席のラインを踏まない繊細さはありますが、足場の慣らし方などを見ると、それほど打撃へのこだわりは感じません。それでも打席に入った時の、甘い球を逃さない集中力は素晴らしいものがある。三振をしても切り替えの早いタイプで、そういった意味でも野手に適した性格の持ち主だろう。


(今後に向けて)


 関東では、屈指の野手だと思います。それでいて、三拍子のバランスも高いです。野球への意識はまだまだ普通の高校生ですが、試合での集中力・持っている才能には光るものがあります。少し時間はかかるでしょうが、将来は楽しみな大型野手です。

 高校からプロ入りを期待出来る、数少ない野手だと思います。外野手と言う意味では、全国でも指折りの存在でしょう。最後の夏にどんなプレーを魅せてくれるのか、今から大いに楽しみです。

蔵の評価:☆☆中位指名級)


(2010年 春季関東大会)




楽天



(どんな選手?)

 チームの核弾頭を務める選手で、大きな弧を描きつつ、しっかり振り抜くスイングが出来るのが魅力の選手です。その上、しっかり左方向にも打ち返す技術も兼ね備えます。

(守備・走塁面)

 残念ながら一塁までのタイムは、しっかり計測することが出来ず。新チーム結成以来の65試合で盗塁は13個と、けして多いと言う程ではありません。ソコソコ動ける能力はあるようですが、現状飛び抜けた走力はないようです。それでもベースランニングなどは速いので、走る能力はあっても盗塁に結びつける能力がまだまだと言うことでしょうか。

 中堅手としてのキャッチング・反応・地肩の強さも平均的です。可も不可もなしといった感じで、これもまだまだ発展途上です。まだ新2年生と言うこともありますが、守備・走塁に関しては、改善の余地ありといったところでしょうか。

(打撃)

 好打者と言うよりは、強打に上手さを兼ね備えたタイプと言う感じが致します。やや三振は多いのですが、センバツを観ている限り、ボールを的確にバットに当てていたように思えます。ヘッドスピードも基準レベルがあり、来年までに更に強さが増して来るようだと面白そうです。

(今後は)

 体格もバランスが取れておりますし、打撃もすでに一定のレベルにあります。走力・守備力もアピールする程ではありませんが、破綻のないレベルまでは来ております。これから一年半の間に、どのぐらい三拍子の資質を引き上げられるか注目されます。更に夏までに引き上げれられるような資質があるのならば、最終学年ではドラフト候補としてマークされるところまで行けるかもしれません。今後の成長を期待してみたい新2年生でした。

(2009年・センバツ)