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谷口 雄也(日ハム)外野手のルーキー回顧へ




谷口 雄也(愛知・愛工大名電)中堅 182/78 左/左





                    「面白い選手!」





 独特の打撃センスの持ち主で、まさに三拍子バランスの取れた天才肌の雰囲気漂わす 谷口 雄也。あのイチローを見出した土地柄だけに、余計にこの選手の秘めたる才能には、興味が沸かずにはいられない。


(プレースタイル)

 高校通算44本塁打を記録する、愛知屈指のスラッガー。しかし雰囲気的には、完全にアベレージヒッターのそれである。この打撃スタイルで、通算44本ものホームランをかっ飛ばしているのだから、よほどミートポイントが的確なのだろう。打者としての雰囲気は、首位打者を二度獲得した中距離打者・鈴木尚典(元ベイスターズ)外野手の現役時代を彷彿させる。。


[高画質で再生]

谷口 雄也(愛工大名電3年)中堅手 [ネットショップ開業] 


(守備面)

 ボールの落下点までいち早く入る、打球への勘・守備力には確かなものがありそうです。地肩も左の好打者タイプながらまずまずのものがあり、基準を完全に上回ります。ただ少し格好をつけたがる傾向があり、プレー全体が雑な部分を感じます。その辺で無理な返球や送球の乱れには注意したいところです。

(走塁面)

 走塁もリードが小さく、50メートル5秒台と言われる脚力はどうなのかな?と思ってみておりましたが、相手の隙を突く走塁センスもなかなかもの。その走力以上に、相手への洞察・次の塁を狙う意欲と言う意味では、上のレベルでも通用する走力を身につけていると言えるでしょう。こと守備・走力に関しては、プロでも通用するだけの下地があります。





(打撃内容)

 私が生観戦したこの夏の東邦戦では、一打席目は、外角の難しい球を上手く合わせて三遊間への技あり。二打席目は、内角の厳しい球を引っ張って一二塁間を抜けて行くなど、内外角の難しい球をヒットゾーンに持って行く技術が目立ちました。またTV中継で確認した試合でも、カーブをセンターにはじき返しておりました。特にスイングに凄みがあると言うよりは上手さが際だつ内容で、広角に打ち返す中距離打者といった印象を受けます。


(打撃フォーム)


<構え> 
☆☆☆☆

 スクエアスタンスで足を揃え、グリップの高さは平均的。腰の据わり・全体のバランスは並ぐらいですが、両目で前を見据える姿勢は見事です。適度に揺らぎ、リラックスした中にも集中力を感じさせます。特に最後まで、ボールから目を離さない点は高く評価できます。

<仕掛け> 
遅めの仕掛け 投手の重心が沈みきった後、前に体重移動をする段階での始動

 多くのスラッガーが、この仕掛けを採用している。始動~ボールが到達するまでに時間がないので、狙い球を絞って叩くような打者でないと、上手く扱うことが出来ない。ボールをぎりぎりまで手元まで引きつけて、最大限のインパクトをぶつけるので、それだけ破壊力も大きくなる。これには、強靱なヘッドスピードや筋力が求められるので、大概は長距離打者が多い。

 ただ状況に応じて、瞬時に判断することが求められる二番打者タイプにも、この段階での仕掛けを採用する選手が多いことも覚えておきたい。

<下半身> 
☆☆☆

 足を引き上げ、真っ直ぐ踏み込みます。このことからも、内角でも外角の球でも捌きたいと言う、幅広い対応を意識しております。足を引き上げてから着地までの「間」がそれほどあるタイプではないのですが、早く地面を捉えてしまっても、天性のリストワークでボールに対応してしまうことがあり、彼は下半身だけで打撃をするタイプではないように思えます。また踏み込んだ足下は、最後までブレないでスイングできております。現状ボールをできるだけ引きつけて、狙った球を逃さないで叩く技術に秀でているタイプだと思われます。

<上半身> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」の位置にグリップを持って来るのは遅くはないが、少しバットを引くのが遅れ気味な印象は受ける。バットを寝せながら出すので、ミートポイントまでのスイング軌道は並。ボールを捉えてからのスイングの弧もそれほど大きくない。スイング軌道も横切りで、けしてフォロースルーでボールを運ぶような感じはなく、あくまでもアベレージ打者の印象が強い。

 ただボールを捉える時は、バットの先端が下がることなく、広い接地面でボールを捉えており、フェアゾーンにボールを落とす技術には秀でている。また天性のリストワークでボールを捉えられるセンスがあり、けしてヘッドスピードの鋭さ・スイングの強さがなくても、結果を残すことができている。

<軸> 
☆☆☆☆

 足を上げ下げするタイプにしては、頭の動きは小さく目線は安定している。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられるので、ボールに食らいつくしぶとさを併せ持つ。


(打撃のまとめ)

 技術的には、それほど現時点で突出したものは感じない。またスイングの鋭さ・強さと言う意味でも、高校生のそれで、ドラフト指名選手の力強さ・基準を満たしているとは言い難い。しかしながら、天才肌のミートセンスがあり、その才能は、まさにプロに入るべき選手との才能は感じさせる。





(意識づけ)

 打席での集中力と、天才肌の選手見られる独特の雰囲気を感じさせます。その反面、プレーに雑な面が感じられるのと、普段の所作には「鋭さ」が感じられません。この辺の矛盾をどう評価するのかは難しいのですが、才能はピカイチですし、瞬時の集中力は素晴らしいです。ただその力を、長く持続する能力には欠けると考えるべきでしょうか。


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(最後に)

 「心技体」の三つの要素から考えると、技術的には高校生だけに並です。ただ「心」の精神的な部分では、まだ成熟度と言う意味ではそれほど高いようには思えません。ただ「体」の部分では、筋力・体力と言う意味では物足りないかなと言う疑問はありますが、才能と言う意味ではピカイチではないのでしょうか。

 「旬」であるのか?と言われると、個人的には疑問があり時間はかかるかもしれません。ただボールを捉えるセンス・才能はピカイチなので、こういった天才肌の選手を、アマのちまちま世界で育てるよりは、一気にプロに混ぜて見るのも面白いと思います。少しギャンブルな部分は感じますが、守備・走力で潰しが効く選手でもあり、身体や打力が伴うまで我慢ができるタイプだと評価します。あとは、本人がどれだけ自覚を持って取り組み、周りの人間がそれを促す環境を用意できるかではないのでしょうか。ひょっとすると、もの凄い打者に化けるかもしれません。


蔵の評価:


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(2010年・夏)