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矢澤 宏太(藤嶺藤沢3年)投手 173/65 左/左





 「ボールの威力はNO.1左腕」





 春季大会・慶応藤沢戦では、素晴らしい投球を披露してくれた 矢澤 宏太 。しかし続く日大藤沢戦では、四死球を出しまくったと聞いていた。私がみた慶応藤沢戦では、そこまで制球難ではなかっただけに、その話を聞いて戸惑った。どうも精神的に余裕がないと、力んでしまって制球を乱す癖があるようだ。


(投球内容)

 夏の予選では、高校最後の登板となった 横浜創学館戦 の模様をみた。なるほど、噂どおり初回からコントロールに苦しみ、荒れ荒れの内容。これがいわゆる、悪いときの矢澤だということを確認できたことは大きかった。この選手は、両極端の振れ幅が半端ではないのだ。

ストレート 常時140キロ台~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 どうしても力んで投げてしまうと、ストレートのコマンドが大きく乱れる。しかしそういった球がストラクゾーンに決まったときは、鉛玉のような球がズボズボにミットに収まるのだ。春生で観た時はミットにビシッと収まる感じのボールに見えたが、今はキレよりも球威が勝っている感じ。しかしこの投手、少し力が抜けて140キロぐらいで投げているときには、打者の外角に決まって四死球で自滅するような危うさはみられない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 この暴れるストレートを補うのが、スライダーの存在。この球でカウントを整えることが多いのだが、さすがに多投すると甘く入ったところを狙われて打たれることも少なくない。ストレートが決まらない、スライダーが狙い打たれるというパターンに陥ると、どうしようもなくなる。他にはもっと緩いカーブや、右打者には小さく外に逃げてツーシームだかチェンジアップ系の球を持っている。この球自体は、それなりに有効ではある。もっと精度を磨いて、左打者の内角にも使えるようになると面白い。

 変化球でカウントを整えることはできるものの、ストライクゾーンの枠の中での制球力はさほど高くはない。そのため、甘く入ったところを打たれてしまうことがある。あとコントロールが特に乱れるのは左打者のことが多くく、打線に左打者が多いとリズムが掴めないのかもしれない。そういった意味では、あまり左投手ながら左腕の有り難みは薄いのかもしれない。

その他

 素晴らしいのは、フィールディングの動きの良さ。これは、高校生でも全国でもトップクラスの動きの良さがある。またクィックも1.0~1.15秒と素早く投げ込み、牽制もかなり鋭い。そういった運動神経の良さがあり、彼がもし右投げだったらショートで鍛えてみたいと思わせる運動神経と打撃能力を持っている。

(投球のまとめ)

 高校生レベルでもコントロールがままならないので、プロ入り後もさらに悪化する可能性は秘めている。しかし精神的に余裕があるときは、それほど乱さないので、身体ができてきたりセルフコントロールができたら、ある程度許容範囲のレベルに収まる可能性はあるとみている。好調時の投球は、大学・社会人含めても、今年みた左腕で一番のボールと投球を魅せていたので。


(投球フォーム)

 今後の可能性として、投球フォームの改善が見込めるのか検証してみたい。春もフォーム分析をしたが、改めて考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の落としは甘さは残すものの深くは落ちている。カーブで緩急をつけたり、フォークを投げるのにも、全く投げられないというほどではない。

 「着地」までの粘りは思ったよりもあり、身体を捻り出す時間はそれなり。決め手になるほどの変化球を投げられるかは別にして、いろいろな球種の習得は可能なフォームではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは抱えられているが、最後少し身体から離れてしまう。しかし両サイドにはボールを散っており、この動作が大きな問題とは考え難い。気になるのは、足の甲が地面から浮いてしまい、ボールが高めに抜けやすいこと。また「球持ち」が浅く、腕の振りが好い割にも投げ終わったあと全く身体に腕が絡んで来ない。また肘を立てて投げられないので、ボールが抜けてしまいやすいのもあるのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブは滅多に投げないし、フォークなどの縦の変化も観られない。そういった意味では、肘への負担はさほど大きくはないのでは?

 若干ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩が下がっていて、腕の送り出しに負担がかかっているようには見える。しかし全体的に力むと無駄な力がかかって負担は少なくないようにも見えるが、普段から球数が多いのに慣れているのだろう、150球投げても全然球威が衰えないタフさはあるようだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体の「開き」は抑えられている。すなわちコントロールを間違わなければ、けして打ちやすいフォームではないのだろう。

 気になるのは腕を振る勢いはあるものの、身体に絡んでくるような粘りがない。その辺が、プロの打者相手に空振りが誘えるのかというのは、やってみないとよくわからない。ボールへの体重の乗せ自体は悪くなく、打者の手元まで勢いが落ちないボールが投げられている。

(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に大きな欠点を持っている。「開き」と「体重移動」は悪くなく、そのへんは修正が不可能なほど癖が強いわけではない。

 故障のリスクや今後投球の幅を広げて行けるかに関して微妙ではあるが、最大の課題はやはりコントロールの部分。本人が力の抜いてもボールがゆく感覚を覚えられるかが、一つ大きな別れ目ではないかと思っている。


(最後に)

 持っているポテンシャルの高さは、今年の大学・社会人含めても、この投手が左腕ではNO.1ではないかと思っている。ただし、かなりモノにするのには乗り越えないといけないハードルも多く、リスキーな素材であることは間違いない。イメージ的には、大洋ファンならお馴染みの 田辺 学 を彷彿とさせるタイプ。果たして、どのような未来が待っているのか? 私自身、大変興味深い。春みたときは、ここまで荒れ荒れの素材だとは思わなかったので、その時よりはワンランク落として最終評価としたいと思う。しかし左腕だということも加味すると、中位(3位~5位)ぐらいの間では指名されるのではないのだろうか。確かな育成力のある球団に、託してみたいA級の逸材だった。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年夏 神奈川大会)









矢澤 宏太(藤嶺藤沢3年)投手 172/61 左/左  
 


 「本物きた~!」

        





 今年の神奈川で話題の投手といえば、この 矢澤 宏太 だった。奪三振マシーンとして秋から話題になっていたが、東大との練習試合では3打席連続ホームランを放ったなんて話まで耳にしていたサウスポー。その実力はいかなるものかと、春季大会に足を運んでみた。この春話題の選手を何人かみてきたが、はじめて本物と出会えた気がする。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションからゆっくり足を引き上げてきます。小柄ですが、シャープに身体を使ってくる左投手です。

ストレート 常時140キロ前後~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ビシッとミットに突き刺さる感じの球質で、キレ型の球質ですがボールの軽さはあまり感じられません。それほど細かいコントロールはありませんが、打者の外角には安定してボールが集められます。そのため、四死球で自滅するとかそういった危うさもありません。下級生の時は四死球も多かったようですが、この試合を観る限りそういったところも薄れているのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど

 横滑りするスライダーと、カーブのように曲がりながら落ちる2種類のスライダーを織り交ぜます。また右打者の外角には、チェンジアップ系の球も覚えたようで、速球と変化球との見分けが難しく三振を奪えます。さらに緩いカーブのような球もあるようですが、その球はあまり観られません。

その他

 左腕らしく、投球モーションと見分けの難しい牽制ができます。クィックはして来ないことが多いのですが、したときには1.10秒前後と、できないわけではなさそう。フィールディングはよくわかりませんでしたが、運動神経に優れたタイプかと。この試合でもセンターバックスクリーン横に本塁打を放つなど、3番を打つ打撃も超高校級です。

(投球のまとめ)

 速球と変化球とのコンビネーションが素晴らしく、三振が奪えるサウスポー。上背はありませんが、早熟で完成された投手という感じも致しません。素晴らしいのは、ピッチングだけではありません。ネクストでは前の打者とのやりとりをしっかり見つめ、タイミングを図っています。またバッターボックスに入るときには、投手らしくラインを踏まないことを意識するなどきめ細やかさがあります。足場の馴らしなどをみていると、それなりにプレーにこだわりも感じられます。精神的にもフラフラしたところがなく、高校生としてはしっかりしたものを持っているように思えます。強豪校相手に、どのぐらいのピッチングを見せるのか気になるところです。





(投球フォーム)

 腕の振りはシャープですが、全身を使って投げ込む力投派というよりもゆったりしたフォームで投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上の残り勝ち。したがって身体を捻り出すスペースは充分ではないので、捻り出して投げるカーブやフォークといった球種には適しません。

 「着地」に関しては、地面に着きそうなところからのひと粘りがあるので、淡白なところがないのも好いところ。カーブやフォークといった球種以外ならば、キレがあったり曲がりの大きな変化球を習得できる下地があります。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにありますので、両サイドの投げ分けしやすいはず。足の甲の押し付けも適度にできるように見え、それほど高めに集まるとか抜けるということもありません。「球持ち」は並で指先の感覚に優れているというほどではなさそうですが、投げ終わったあとのバランスに優れ大きく制球を乱すフォームではないように思います。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせないフォームではあるのですが、カーブやフォークをほとんど投げていないみたいなので問題ないのでは? 捻り出して投げる球を投げるには、どうしても窮屈なフォームなので。

 気になるのは、かなり角度をつけて腕を振り下ろしていること。グラブを持っている肩は下がりボールを持っている肩は上がっているので、角度は生めるものの肩への負担は大きなものになっている。けして力投派ではないので消耗が激しいとは思わないが、登板過多になった時は心配にはなる。


<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」が早すぎることもないので、けして合わせやすいというほどではない。まして肩の「開き」も抑えれており、コントロールを間違いなければ痛手食らい難いはず。

 腕も適度に振れており、特に速球と変化球の見極めが難しいのが特徴。ボールに適度に体重は乗せられており、地面の蹴り上げも好い。上体や腕を鋭く振ってキレを生み出すだけでなく、体重も乗せることができ球威もある程度作れている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、とくに悪いところは見当たらない。しいていえば「球持ち」が並なので、この辺がもう少しボールを押し込めたり粘りが出てくると、さらに厄介になってくるだろう。

 制球を司る動作に大きな欠点はないが、身体への負担がかかりやすいフォームなのが気になるところだろうか。



(最後に)

 春季大会・慶応藤沢戦を見る限り、とくに悪いところが見当たらない。こういったピッチングが安定して出せるのか? 本当に強い学校相手に、どのぐらいのピッチングができるのかは気になる。特に秋までは、結構四死球が多い投手だったので。

 しかしこの試合を投球見る限り、コントロールや精神面の不安定さは感じられなかった。またボールの威力・変化球のキレとも含め総合力で判断する限り、今年の高校生左腕では1番ではないかと思う。すでに大学・社会人の有力左腕の大半を今年見ているが、それを含めてもこの春一番だった。他候補との力関係はもう少し慎重に見極めて行きたいが、現時点で2位前後を意識できるではないかと思う。170センチ前半とそれほど体格に恵まれていないことを考えると、左腕だとはいえ1位指名とかいうことはないと思うが。それでも、今年見た選手の中では一番の衝撃だった。ぜひ、夏まで追いかけて評価を定めて行きたい。



蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2018年 春季神奈川大会)