出身団体別貢献・活躍選手

 高校・大学・社会人など最終所属団体によって、プロでの活躍の違いを表1で記してみた。これまで求めてきた獲得ポイントの中で、一年平均で、5.0ポイント以上の成績を残した選手を貢献選手。10.0P以上の実績の選手を活躍選手と呼んできた。貢献選手は、一軍の戦力に相応しい成績を残してきた選手。活躍選手は、チームに欠かせない主力として活躍してきた選手だと考えて頂きたい。

 この10年で、ドラフト会議を経てプロ入りした選手は、全部で780名。高校・大学・社会人は、4:3:3の比率で指名されていると観て好いだろう。高校生の場合、頭角を現すのに、かなりの時間を要することからも、在籍年数で成績を割ると、どうしても低くなってしまう傾向にある。

表1
所属団体 指名人数 貢献選手 活躍選手 合計
高校 308名
(39.5%)
12名
(3.9%)
1名
(0.3%)
13名
(4.2%)
大学 233名
(29.9%)
28名
(12.0%)
8名
(3.4%)
36名
(15.5%)
社会人 239名
(30.6%)
39名
(16.3)
7名
(2.9%)
46名
(19.2%)
合計 780名 79名
(10.1%)
16名
(2.1%)
95名
(12.2%)

(プロで活躍出来る確率は?)

 
プロの世界で、戦力としてある程度の年数活躍を続けられる選手は、実は全体の12.2%しかいないことになる。1年平均78名の選手がドラフトで指名されているのだから、6.4人に一人程度しか戦力にならない計算になる。一回のドラフトで、各球団の指名選手の中で、ものになるのは一人いるかいないと言われる所以はここにある。そう考えると毎年各球団は、7名前後は指名したいところであろう。

(高校生指名は、とてもリスキー)

 貢献・活躍選手を指名人数で割ると、高校生は(4.2%)。その4倍近い確率で、大学生(15.5%)は大成していることになる。社会人(19.2%)ならば5倍近いことになる。冒頭でも述べたように高校生の場合は、大成するのに時間がかかるので、在籍年数で割ると不利になると述べた。そこで在籍6年以上の選手に絞って数字を取り出してみる。該当人数は、147名。そのうち貢献選手は8名・活躍選手は、松坂大輔のみの1名である。そうすると5年間プロで漬け込んだ選手でも、貢献・活躍選手に入って来る選手は、僅かに6.1%しかいない。この数字は、大学生(15.5%)の半分にも満たないし、社会人選手の(19.2%)の1/3にも満たない確率である。それでは、彼等を追って、数年後、貢献・活躍選手になれそうな選手が多く控えているのかと言われれば、数える程しかいないのだ。これを考えると今後多く見積もっても、
大学生の1/2、社会人の1/3程度しか高校生は大成しないことがわかって来る。高校生指名とは、もの凄くリスキーな指名なのだ。

(高校生は、チームの柱?)

 私は高卒選手に漠然とイメージしていたのは、大成こそ難しいが一端大成さえすればチームの核となる選手に育つのは、やはり高卒選手が一番だと信じてきた。しかしだ、各チームのエースや主軸の面々を思い出して欲しい、その多くは大学・社会人選手であることに驚かされる。ましてやチームの核とも呼べる活躍選手の割合は、更に貢献選手の時よりも広がっていることがわかる。この10年での活躍選手は、松坂大輔一人のみである。今後、将来的にこの地位まで昇り詰められる選手も何人かはいるかもしれないが、その数は、大学・社会人に匹敵するのは無理だと言わざる得ない。ましてやそういった若くして才能を開花した選手は、FAで他球団に移籍したり、海外へ飛び出したりと育成する側としても、それに見合うだけのものは少ないシステムである。高校生の指名には、よくよく考えなければ行けないことになる。


(社会人出身者の活躍)

 こうやってみると、社会人球界出身の選手達の活躍が目立つ。活躍選手では、僅かに大学出身の選手が数を上回ったが、これも松坂世代と言う、何十年に一度の大学生の当たり年世代がいたからに他ならない。質・量共に、社会人出身者が、チームのエースであったり、打線の核となっているチームが実に多いのだ。ドラフトマニアからは、社会人選手で指名を固めると、えらく評判の悪いドラフトになりがちだが、弱いチームを短期間に立て直そうとするのならば、こういった戦略が間違いではないことを数字が証明しているのだ。逆に育成出来るノウハウもないのに、高校生重視の姿勢を貫くのは、指名される選手にとっても不幸だし、球団にとっても暗い陰を落とすことになる。


(これからは)

 高校生ドラフトと大学・社会人ドラフトが、昨年から分離されるようになった。先に行われる高校生ドラフトでは、より多くの高校生が今後指名される可能性が高い。しかし一球団が保有出来る選手枠や予算の関係から考えると、かなり高校生の指名人数を抑えることを意識したい。高校生の指名を行うならば、
適材適所に「これは!」と言う人材に絞るべきだろう。そう考えると、各球団毎年2名前後に指名を抑えることが、高校生ドラフトでは望ましいのではないのだろうか。結局モノになった高校生でも、育成に5年以上かかっているようでは、あまり高卒で指名した意味合いも薄くなる。やみくもに高校生を指名し、育てる時代ではないのかもしれない。

(チームの核に成り得る選手は、一年に一人か二人程度)

 この10年間で、活躍選手は僅か16名しか輩出されていない。そう考えると、一年あたり1.6名となる。その選手が、自分のチームに入団する確率は、更に12で割らないと行けないことになる。だからそういった選手が、自分のチームに入団して来る確率は、6年~12年に一人程度にしかいない計算になる。如何にそういった選手を見つけ出すかは、スカウトの本当の眼力と営業力が求められるのだ。そういった選手が2,3人揃う球団もあれば、何十年も出てこない球団もあるのである。