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斉藤 勝(日ハム)投手のルーキー回顧へ




斉藤 勝(22歳・セガサミー)投手 187/88 左/左 (修徳出身)





                             「あの斉藤ですか?」




 
斎藤は斉藤と言っても、ハンカチ王子のことではなく、その数年前に大型左腕として将来を嘱望されていた 斉藤 勝(修徳出身)が、ドラフト会議でアナウンスされた時、私には驚きだった。今年、彼の投球を確認した限り、とてもプロに入るような投手には見えなかったからだ。





 
高校時代は、故障に泣かされ、社会人・セガサミーに進むも、私はこの5年間で彼が投げているのを確認したのは、今年になってが初めてだった。しかしその投球内容は、高校時代から殆ど成長しているようには見えなかったのである。その投球内容のあまり、彼の投球をビデオで撮影しようとは最後まで思わなかったのだが・・・。

(投球内容)

 
大きな身体を持てあまし気味で、少し投げやりなフォームは相変わらず。スリークオーターから、淡々と投げ込んで来る。

ストレート 130~135キロぐらい

 球速もさることながら、球にキレとか伸びがあるとか、特別球威に優れるといった印象は殆どない。と言って、特別フォームがイヤらしく打ちにくいと言ったこともなく、何が特徴といった感じはしない。ただしいて言えば、少しストレートが意図的なのかどうかわからないが、カットボール気味にスライドして入ってくる傾向にあり、この辺が少し打ちにくいのかな?思えてくる。

変化球

 変化球は、左腕らしい大きなカーブ・スライダー・シュート系の球と横の変化が中心。特に絶対的な決め球があるわけではなく、ストライクゾーンの枠の中に集めてくる。


<右打者に対して> 
☆☆

 両サイドにアバウトに投げ別けて来る。ただカーブに関しては、あくまでも変化・アクセントが役割であり、それほど細かいコントロールはなく、真ん中近辺に甘く入ることも少なくない。

 球速に変化がないわけではないが、投球に強弱などをつけて投げているわけではないので、それほと投球に抑揚は感じられない。

<左打者に対して> 
☆☆

 少し長い手足を活かし、腕が下がって出てくるスリークオーターなので、左打者に強いかと思いきや、私の見ていた試合では、むしろ左打者に打たれるケースが目立った。右打者同様に、両サイドをアバウトに投げ別けつつ、カーブ・スライダー・シュート系の球を織り交ぜると言う投球スタイルに変わりはない。

(投球のまとめ)

 制球もピンポイントで投げるような制球力はなく、ただストライクゾーンに投げ込んで来るだけと言った感じで、特に投球に意図を感じさせる投球術ではない。フォーム・球の威力共に、特別何か特徴らしいものは見当たらず、何を見出して日ハムが獲得に動いたのかは、未だ持って私にはわからないのだが・・・。





(データから考える)

 ここからは、一回だけの印象で判断するのは危険なので、データに基づいて考えてみたい。

09年度成績 12試合 20回2/3 20安打 12奪三振 10四死球 防御率 3.92
10年度成績 11試合 44回1/3 26安打 31奪三振 18四死球 防御率 1.83

 これは、主立った公式戦の昨年と今年の成績を並べてみた。こうやって見てみると、目に見えて今年は良くなっていることがわかる。そこでいつものように、ファクター別に別けて考えてみたい。

1,被安打は、イニング数の70%以下 

09年度被安打率 97.1%
10年度被安打率 58.7%

 昨年に比べると、故障から回復が著しいのか、大きく被安打率を下げることに成功。特に昨年の投球を確認できてはいないので何が原因とは言えないが 基準を満たしていることがわかる。横の揺さぶりを駆使して、相手の的を絞らせないことに成功しているのだろうか。

2,四死球は、イニングの1/3以下 

09年度四死球率 48.5%
10年度四死球率 40.6%

 実際試合を見ていても、制球は四球で自滅するような破綻こそないが、アバウトな印象は否めない。やはり本当の意味での制球力には、データの上でも物足りないことを裏付けている。それでも昨年に比べると、明るい兆しは見えている。

3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ×

09年度奪三振率 0.58個
10年度奪三振率 0.70個

 目に見えて大きく数字を伸ばしているわけではないが、幾分数字は良くなっている。これは、球の威力を増したと言うよりも、制球力の向上・投球術の進化が、三振の数にも影響しているかもしれない。ただこの数字を観る限り、球の威力で圧倒し、牛耳るタイプではないことがわかる。

4,防御率は、1点台が望ましい 

09年度防御率 3.92
10年度防御率 1.83

 目に見えて大きな進化を魅せたのは、被安打率とこの防御率から来る安定感にある。社会人の場合、学生野球と違って、かなり防御率1点台の数字を残すのは難しく、価値のある数字だと評価したい。

(データから考える)

 奪三振を見ると、目に見えて球の威力が上がったわけではないようで、四死球率を見ても制球力が著しく向上したわけではない。むしろ大きな変化は、ヒットを打たせない投球術に磨きがかかり、投球が非常に安定感のあるものに変わったことを、数字は物語っているのではないのだろうか。

 もし日ハムが彼を評価したポイントを考えるならば、やはり大型左腕でありながら、これだけの安定感のあるピッチングを評価してとのことだろうか。日ハムのことだから、何か見た目からはわからない、彼の良さを、そのピッチングの中から見出したのかもしれない。そういった独自の切り口は、この球団のスカウティングらしい独自性だ。


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(最後に)

 実際にその投球を見た限り、私の感性に訴えかけて来るものはなかった。また投球を分析する限り、何故指名したのかな?と言う疑問は拭えない。ただデータを分析してみると、この一年間でかなりの安定感を身につけ、そこに何かを見出した可能性は伺うことができた。

 ただ私としては、自分の評価法で考える限り、指名レベルには達しておらず。特に評価を変えるつもりはない。ただこういった投手が、プロの世界でどんな成績を残して行くのかは個人的に興味深い。何より独自の見方で選手を評価する、日本ハムと言う球団がGO!サインを出した選手だからだ。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・関東選抜リーグ)





斎藤 勝(東京・修徳高)投手 183/82 左/左

 昨年は、2試合連続完封などを経験し、大きな自信を付けた。130キロ台中盤の速球と大きなカーブには、プロも注目するほどの潜在能力を秘める。しかし秋からの故障の影響で、選抜では120キロそこそこの球速・球威で、完全復活とまでは行かなかった。最後の夏に向けて、復活が期待される大型サウスポーである。