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靍岡 賢二郎(ベイスターズ)捕手のルーキー回顧へ







靍岡 賢二郎(四国・九州IL愛媛)捕手 177/77 右/右 (日体大出身)





               「再びその勇姿を観てみる。」





 鶴岡 賢二郎と言えば、なんと言っても辻内 崇伸(大阪桐蔭-巨人)投手から、甲子園でバックスクリーンに叩き込んだ打撃が思い出深い。日体大時代の下級生の時に触れたこともあるが、そのときはDHでの出場。結局大学時代は、リーグ戦でたいした実績も残せないで終わった。そんな不完全燃焼のまま、四国アイランドリーグに進み・愛媛に入団。そこで再びその才能を見出され、今年悲願のプロ入りを実現した。残念ながら、愛媛でのプレーの映像を持ち合わせておらず、試合でも確認できていないので、再び高校時代の映像を見直して考えてみたい。今回も、今年のプレーぶりを確認したわけではないので、具体的な評価づけができないことは、あらかじめご了承願いたい。


(プレースタイル)

 春日部共栄時代は、強肩・強打の捕手で、4番打者としても活躍した攻守の要。少々捕手としては荒削りだったものの、スケール感を秘めいていた。今年アイランドリーグにおいて、打率.180厘でも選抜メンバーに選ばれていたりと、実戦力よりも将来性に期待を持たせる雰囲気のある選手。そういったプレースタイルは、今もあまり変わっていないようだ。ちなみに2010年度のアイランドリーグでの成績は

45試合 1本塁打 10打点 0盗塁 打率.180厘

 この数字を観る限り、何故アイランドリーグ選抜に選ばれたり、実際に指名されたのかは疑問が残る選手ではある。その数字に表れない、高い可能性を感じさせるところに、この選手の魅力があるのではないのだろうか。





(ディフェンス面)

 甲子園で活躍する少し前の春季関東大会でも、この鶴岡の存在感は光っていた。グラブ軽く示し、そのミットを下げないで捕球。フットワークも結構使い、ボールを押し込むようなキャッチングではないが、低めの球にも素早く反応できる選手だった。けしてどっしりと動かない捕手ではなく、内野や投手にもこまめに指示を飛ばし、頭も使ったプレーをしていた。

 投手に軽く返球をしたりと、意外に気遣い・配慮型捕手の一面もあり、けしてオレ様タイプで叱咤激励しながら引っ張るタイプではない。逆にその控えめな側面が、非凡なポテンシャルを秘めていても、大学時代イマイチ殻を破れないで終わった要因かもしれない。

 一塁までの塁間も、1.95秒前後でスローイング。そのタイム以上に、地肩には強さを感じさせる選手だった。今は、更にその精度を増し、タイムを縮めることはできているのではないかと想像する。

 課題はインサイドワークと言われている選手ではあるが、けして捕手的センスや適正がないポテンシャルに頼ったタイプではない。ただ頭を使っていない選手ではないが、どうもリードが単調に陥りやすい傾向があるようだ。

 高校時代の印象では、強肩捕手ではあるが何故か捕手らしくないと言うか、野手がマスクを被っている感じがして、彼が将来捕手として活躍するイメージがわかなかった。そのため強肩・強打を活かして、他のポジションへコンバートされることで大成するのではないかという印象を受けた。





(打撃内容)

 一見粗そうなイメージがあるのですが、ボールをミートポイントで捉えるセンスには高いものがあります。それでも結果が伴わないのには、打撃技術に大きな欠陥があるからだと思われます。腕っぷしの強さを活かしたパワフルな打撃で、センターから右方向に打球が伸びる特徴があります。。

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引き、後ろ足に重心をかけて立ちます。グリップを下げリラックスして構えるのが、大きな特徴です。腰の据わり・全体のバランスは並ぐらい。両目で前を見据える姿勢は、それなりです。ただ身体を動かすことなく、自分のリズムを刻めていないのは残念でした。

<仕掛け> 
遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動

 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。

 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトを間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用しないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。

 鶴岡選手の場合、この仕掛けのタイミングが、今でも変わっていないのではないかと推測する。金属バットの反発力ならば、この仕掛けでも高校生レベルの投手の球ならば打ち返すこともできただろう。しかしレベルもあがり、木製バットになって結果が出なくなったのは、この仕掛けが打撃に大きな影響を及ぼしているのではないかと推測する。

<下半身> 
☆☆

 一度ベース側につま先立ちしてから、小さく踏み出すスタイル。そのため始動から着地までの「間」が短いので、極めて打てる球は限られます。このことが、対応力が低い最大の要因なのではないかと。

 アウトステップする癖があり、真ん中低めへの威力のあるストレートや逃げて行くスライダーに関しては、かなり辛いと言う傾向があります。特に腰の逃げが早いので、いくらボールを手元まで引きつけるタイプでも、打てる外角の球はあくまでも外角でも高めの球に限定されるのではないのでしょうか。踏み込んだ足下がブレる傾向にありますが、それほど悲観するほどではないので、この部分はそれほど気にしなくても良いかもしれません。

<上半身> 
☆☆☆

 これだけ始動が遅くても、辻内レベルのストレートをセンターバックスクリーンに叩き込んだのには、理由があります。構えたところから、グリップの位置が変わらず、そこから振り出す打撃を採用し、速いボールに立ち後れない打撃ができておりました。ただ事前に、打撃の準備段階である「トップ」を作れないまま振り出すので、どうしても慌ただしい印象は否めません。

 ただバットは上から、ミートポイントまで綺麗に振り抜けており、元来ボールを捉えるセンスは悪くないです。少々残念なのは、ボールを捉える時にバットの先端が下がって広い面でボールを捉えられないこと。そのためフェアゾーンにボールが落ちる可能性を狭めます。

 大きな弧を描きながら、フォロースルーまでしっかり振り抜きます。ボールよ~く引きつけて、少しポイントが遅いため、打球はセンターから右方向に大きく伸びる傾向があります。ただフォロースルーでグリップを高い位置まで引き上げるわけではないので、元来それほど本塁打連発のスラッガーではないものと思われます。

 引き手が強く、腕っ節の強さでボールを引っぱたくタイプの強打者です。ヘッドスピード・打球の速さなどは、高校時代から基準を満たすだけのものがありました。

<軸> 
☆☆☆

 結構足の上げ下げが小さい割に、上下に重心が動くので目線が動きやすい傾向にあります。腰の逃げが早いのですが、ある程度開きは我慢できます。軸足には強さが感じられ、ボールを遠くに飛ばせる資質は感じられます。


(打撃のまとめ)

 ボールをミートポイントで捉えるセンスがあり、スイング軌道もよく、ヘッドスピード・スイングの強さも基準を満たしているのに、何故数字があがってこないのか?

 その最大の理由は、仕掛けの遅さが打撃全体に大きな悪影響を及ぼしているからです。打てるポイントが限られている上に、バットの先端が下がり、目線が上下に激しく移動するスイングで、その非凡な才能を半減させている惜しい選手です。もしこの部分を改善できれば、大きく才能を開花させることは可能だと考えられます。また大学・独立リーグと経た今、この欠点をどの程度改善できているのか気になります。





(最後に)

 攻守に粗い素材型とのイメージは強いものの、打撃でも改善できれば資質の高さを感じさせる素材であり、守備でも意外な捕手的適正があると言う、単なる強肩が売りの選手ではない。

 大学時代は実績がなく、アイランドリーグでの数字はイマイチ。それでも指名されるほど、この選手のポテンシャルは高く評価されている。

 その数字から受ける印象とは違い、面白いものを持っている選手。そういったものは、確かに感じられた。一塁までの塁間4.4秒前後(左打者換算で4.1秒前後)と言う、基準を上回る脚力もあるが、やはりこの選手は捕手をしてなんぼと言う気がする。他のポジションでアピールするよりも、打力もある捕手として存在感を示した方が、得策ではないのだろうか。

 この魅力が損なわれていない限り、ドラフト8位での指名ならば、ありではないかと思わせるものがある選手。これから厳しい道のりになるとは思うが、少し期待を持って見守りたい選手でありました。ぜひ来年は、ファームでその成長した姿を、確認したいと思います。


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鶴岡 賢二郎(埼玉・春日部共栄)捕手 176/73 右/右

 春季関東大会では一際目立っていた一人で、甲子園でも辻内からバックスクリ-ンに叩き込んだ本塁打は圧巻だった。この選手の最大の魅力は、ミ-トポイント確かな打撃にある。春季大会で観戦したすべての打席で、ボ-ルをバットの芯で捉えていたことに驚かされた。甲子園でも辻内から本塁打、中田の高めの速球を振り遅れることなく強引にライト線にはじき返した。

 スクエアスタンスで両足の歩幅が狭いので、腰を据わらせることなく突っ立ち気味のフォ-ムで構える。それでも顔を前に見据えることができて折り、結構身体が柔らかい選手なのかもしれない。投手の重心が沈みきった底のあたりでベ-ス側にチョンとステップし、実際にはややクロ-ズスタンス気味に構えに近い状態でボ-ルを迎えに行く。本格的なスイング動作に入るのは、投手がリリ-スした後ぐらいなのに、辻内の剛球をバックスクリンに叩き込んだり、中田の快速球を強引に力でライト線に運ぶなど、速球に差し込まれないのが不思議ぐらいの選手だ。

 インパクトの瞬間も足元がブレたり、アウトステップだったりと、それでも無類の速球への強さを発揮できることは、私の理論をことごとく破壊する強打者だ。トップは身体の陰に入るようなロスはないが、きっちり作れない。これであれだけの打球を放てるのだから、ある意味凄い。ただし木製バットで、この打撃ができるとは考えずらい。非凡なのは、インパクトの瞬間のボ-ルの押し込みと軸足が非常にしっかり安定している点である。この辺の非凡さが、この驚異的な打撃を支えているのだろう。前に書いたように、ミ-トセンスも高いところも打撃に非凡な可能性を持った選手だと言えるであろう。

 ただし捕手としては、二塁までのスロ-イングを1.95秒前後、キャッチングも、打球への反応・グラブ捌きも悪くない。ただ何故か捕手と言う印象を受けない選手である。一塁までの塁間を4.4秒前後(左打者ならば4.2秒を切るような)脚力の持ち主で、むしろその身体能力の高さを活かして、将来は別のポジションにコンバ-トされるかもしれない。打力・身体能力共にドラフト候補としてマ-クできる存在だと言えるであろう。