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大森 廉也(24歳・JFE東日本)外野 183/80 左/左(市立船橋-駒沢大出身) | |
大卒2年目の社会人選手ながら、完成度の高い選手というよりも、まだまだ発展途上の段階にあるイメージが強いのが、この 大森 廉也 だ。果たして、どのような選手なのか考察してみたい。 。
走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁までの到達タイムは、左打席からやや緩めても3.95秒前後で到達する。それだけに、走力自体はプロの中でも 中の上~上の下クラス の能力がありそうだ。2025年度での公式戦は16試合では盗塁4個と、走力を全面に押し出すプレースタイルではないが、盗塁失敗はなく、技術も悪くなさそうだ。 守備面:☆☆☆☆ 4.0 球際でのプレーに強い印象があり、普段の落下点への入り方や打球の追い方にも余裕があってまずまずだ。都市対抗では当初ライトを守り、途中からセンターに起用されていた。16試合で失策はなく、守備に大きな問題はないと思われるが、転がってきたボールに対して腰を十分に落とさず、やや雑に処理するのが気になった。一方で、地肩は強く、プロの外野手としても十分通用するだろう。 打撃内容 駒大時代は3年春に首位打者を獲得し、「戦国東都」で4年間在籍中に3度のベストナインを受賞した。2025年度の公式戦成績は、55打数18安打、0二塁打、0三塁打、4本塁打、13打点、4四死球、9三振、打率.345 といった内容。特に、内角低めの球を強引に引っ張り、都市対抗では東京ドームの上段に突き刺さる本塁打を放った。セイバーメトリクスの指標であるOPS(出塁率+長打率)は約.972で、社会人レベルでは優秀な部類に入り、特に本塁打による長打力が際立つ。ただし、四死球が4個と少なく、選球眼には向上の余地がある。 構え:☆☆☆★ 3.5 左打席から広めに足を引き、グリップを高めに添えている。やや後ろ足に重心を預けつつ、全体のバランスや両目で前を見据える姿勢は標準的だ。 仕掛け:遅め 早めに開いていた足をスクエアに戻し、かかとを浮かせる形に。本格的な動き出しは、投手の重心が沈みきって前に移動する段階の「遅めの仕掛け」。このタイミングは、ボールをギリギリまで引き付けてから動き出すため、生粋の2番打者や天性の長距離打者に多く見られる。おそらく彼は後者のタイプだろう。この仕掛けは、セイバーメトリクスのwOBA(加重出塁率、打撃の総合的な生産性を測る指標)約.420に見られる長打力の高さに繋がっている可能性がある。 足の運び:☆☆☆★ 3.5 足を軽く浮かせて回し込み、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」は短めで、狙い球を絞り、それを逃さないスタイルだ。ベース側に踏み込むため、外角への意識が強いと思われる。それでも、都市対抗ではインローの球をすくい上げ、圧巻の飛距離の本塁打を放った。この選手のツボは、まさにこの辺にあるのだろう。この長打力は、長打率(SLG)約.582に反映されており、社会人平均を大きく上回る。 踏み込んだ前足は、インパクト時にブレずに耐えられている。そのため、逃げる球や低めの球にも対応でき、実際レフト方向へ打ち返すこともできていた。ただし、流し打ちでも長打が生まれる天性の長距離打者というよりは、特定の球を捉えた時の長打力が光るタイプだ。 リストワーク:☆☆☆★ 3.5 打撃準備の「トップ」を早めに作り、速い球に遅れる心配は少ない。内角の球に対しては、早めにバットを下げてラインに入れ、きれいに振り抜けている。外角の球に対しても、インパクトまでのロスは大きくないが、バットの先端がやや下がりがちなため、打ち損じが生じる可能性がある。この点は、出塁率(OBP)約.390と四死球の少なさから、選球眼や外角対応の改善が今後の課題であることを示唆する。 バットの先端が投手側に倒れるなど、ヘッドの動きに多少のロスはあるが、インパクト後に大きな弧を描き、内角寄りの球を豪快にカチ上げるスイングが見られる。このスイングが、16試合で4本塁打という長打力に繋がっているのだろう。 軸:☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げは静かで、目線の上下動は少ない。体の開きも我慢できているが、軸足がやや不安定な場面があり、打撃の確実性に影響を与えている可能性は否定できない。この不安定さが、打率.345を維持しつつも、より高い出塁率や一貫性を求める上で課題となるかもしれない。 打撃のまとめ 完成度の高い打者というよりは、まだ細部を追求する余地が残されている。資質をさらに伸ばせるかは多少疑問が残るものの、長打力を含めた高い可能性を秘めた素材だ。打率.345に加え、OPS約.972、wOBA約.420は社会人レベルで上位の打撃生産性を示し、特に本塁打による長打力が貢献している。大学時代には一部と二部で首位打者を獲得しており、短期的な爆発力を秘めているのは間違いない。あとは、この打撃を長いシーズンでいかに持続できるかが鍵だろう。 最後に 守備や走力、肩などの能力は高く、打撃も一発長打を含む魅力的な素材だ。しかし、都市対抗で7番打者だったように、まだ発展途上の印象が強い。大卒社会人ではあるが、即戦力かと問われると疑問が残り、1年ぐらいファームで育成すれば才能が開花する可能性がある選手だ。OPS.972やwOBA.420といったセイバー指標は、ファームでの調整を経てプロの環境でさらに磨かれれば、平均以上の打者に成長する可能性を示唆する。余裕のある球団であれば、左打ちの外野手でも指名する価値は十分にある。上手くいけば、清水隆行(元巨人)のようなパンチ力のある打者として活躍する存在になり得るかもしれない。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2025年 都市対抗) |