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田中 多聞(21歳・JFE西日本)外野 184/84 左/左 (呉港出身) | |
田中 多聞 のフルスイングを見ていると、「ギータ」の異名を持つ柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせる。まだ未完成ではあるが、プロ入り後に大きく才能を開花させそうな大器だ。 走塁面:☆☆☆ 3.0 一塁までの塁間タイムは、左打席から約4.1秒。このタイムはドラフト候補の基準程度だが、加速時のスピード感からは高い走力が感じられる。ただし、今年の公式戦20試合で3盗塁にとどまり、走力を全面に押し出したプレースタイルとは言い難い。 守備面:☆☆☆★ 3.5 打球への反応、落下点への入り、キャッチングは中~上のレベルで、悪くない印象だ。守備範囲が特に広いわけではないが、外野手として基準を満たす守備力はある。加えて、外野からの返球は一級品で、肩の強さはプロでも強みになるだろう。まだ身体能力を最大限に活かしきれていないが、走力や肩のポテンシャルは高い。プロでこれらをさらに引き出す意識を持てれば、現在以上のパフォーマンス向上が期待できる。 打撃内容 2025年の公式戦成績は、59打数18安打、6二塁打、0三塁打、0本塁打、10打点、2四死球、18三振、打率.302。出塁率(OBP)は.328、長打率(SLG)は.407で、OPSは.735とまずまずの数値。 ただし、ISO(純粋長打率)は.105と長打力は控えめで、BABIP(運に依存する打率)は.400と高く、打球の運に恵まれた可能性がある。昨年は打率.404と社会人2年目で注目を集めたが、今年は18三振(三振率27.7%)と粗さが目立つ内容で、都市対抗ではチームの下位打線を担っていた。 OPS(出塁率+長打率):出塁率.328、長打率.407でOPS.735を算出し、総合的な打撃力を評価。 ISO(純粋長打率):長打率-打率=.105を算出し、長打力の低さを指摘。 BABIP(運に依存する打率):.400と高く、打球の質や運の影響を補足。 三振率:18三振/65打席=約27.7%を算出し、コンタクトの課題を強調。 <構え> ☆☆☆ 3.0 左打席から軽く前足を引き、かかとを浮かせて構える。グリップの高さは平均的で、やや捕手側に添えている。背筋を伸ばし、両目で前を見据える姿勢は、全体のバランスとして標準的だ。 <仕掛け> 平均 投手の重心が下がりきったタイミングで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。このタイミングは、確実性と長打力を兼ね備えた中距離ヒッターや、勝負強さを売りにするポイントゲッターによく見られる。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 軽く足を上げ、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」は適度で、速球や変化球のスピード変化にも対応可能だ。外角への意識が強く、踏み込んだ前足はインパクト時にややブレるものの、パワーロスは少ない。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃準備の「トップ」は自然体で、力まずボールを呼び込めている。ただし、バットを引くタイミングが遅れないよう注意が必要だ。バットの振り出しはインサイドアウトではなく、内角のさばきに課題が残るが、外角の球にはロスなく対応でき、ヘッドが下がらず広い面でボールを捉えられるため、打球はフェアゾーンに飛びやすい。 この点は高いBABIPにも表れている。スイングは大きな弧を描き、カチ上げるようなフルスイングで、柳田悠岐の影響を強く感じさせる豪快さがある。ただし、ISOの低さから、現時点では長打よりも単打や二塁打が多く、角度をつけた打球が少ない。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げは静かで、目線の上下動は抑えられている。体の開きも我慢できているが、軸足の形はまだ安定しない。この点が改善されれば、打撃の再現性がさらに高まり、三振率の低下やOPSの向上が期待できるだろう。 (打撃のまとめ) 技術的には粗さが目立つ未完成な印象だが、資質は高い。高いBABIPは打球の質を示すが、三振率の高さや低いISOは課題。プロの指導や環境次第で大きく成長する可能性がある。社会人レベルでは限界が見えつつあり、さらなる飛躍には上の環境で資質を伸ばす必要があるだろう。 (最後に) まだ資質を十分に活かしきれていない印象だ。即戦力というより、1~2年かけて一軍戦力に育て上げる段階が必要だろう。それでも、才能を開花させればプロの主力になれる可能性を秘めており、下位指名でも確保したい素材だ。OPSや三振率の改善が、プロでの成功の鍵となるだろう。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2025年 都市対抗) |