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竹丸 和幸(23歳・鷺宮製作所)投手 178/69 左/左 (崇徳-城西大出身) | |
2025年度最初のアマチュア野球公式戦である東京スポニチ大会で、一躍ドラフト候補として注目を集めたのが、この 竹丸 和幸 ではないでしょうか。少しスリークォーター気味の腕の振りから、コンパクトに腕を畳んで投げ込んでくる、実戦的な左腕です。 投球内容 昨年からの投球を含めた直近の公式戦10試合の登板成績は、46回を投げて44安打、12四死球、27三振、防御率1.17という内容です。 ストレート 常時140キロ~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0 ボールには適度なキレと勢いが感じられるものの、スポニチ大会準決勝のJFE東日本戦を見る限り、左打者が苦もなく真っ直ぐに対応していた点が気になりました。成績を見ても、46イニングで44安打を浴びており、1イニングあたり約0.957本と高い数字です。ボール自体は両サイドに散らし、高さも真ん中から低めのゾーンに集める傾向があります。つまり、甘くない球でも打たれており、フォームが打者に合わされやすい可能性が高いと考えられます。 変化球 チェンジアップ・スライダー・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 むしろ、この投手を評価するなら、真っ直ぐよりも変化球の良さでしょう。特にチェンジアップに威力があり、左打者に対しても有効に使えるのは大きな強みです。また、左打者に対しては外角低めに切れ込むスライダーが効果的でした。余裕が出てくると緩いカーブを織り交ぜ、真っ直ぐで魅せておいてから変化球を巧みに落とし込むコンビネーションが光ります。 その他 残念ながら牽制は確認できませんでしたが、クイックは1.05秒前後とまずまずの速さです。走者を背負っても落ち着いて対処できており、元々好投手タイプの実戦派だけに、そういった場面でのマウンド捌きに不安は感じられません。 投球のまとめ 現状、ボールの威力で圧倒する投球というより、変化球を上手く織り交ぜてゲームメイクする好投手という印象が強いです。この実戦力で、NPBの一軍で通用する投手と言えるのか? 今後を見極める一年になるのではないでしょうか。 投球フォーム ワインドアップで振りかぶり、ゆったりとした始動ながら、足を引き上げる勢いや高さは十分に感じられる入り方です。軸足一本で立った際も、膝から上がピンと伸び切ることがなく、力まずに立てています。このような投手は、制球が安定しているケースが多いです。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向ける傾向があり、やや二塁側に送り込みがちです。そのため、お尻を三塁側(左投手の場合)へ落とす動作に甘さが残っています。この点から、カーブやフォークのような捻り出して投げる球種の変化は鈍くなりやすいと言えるでしょう。 「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準程度です。そのため、大きな曲がりの変化球よりも、球速を活かした小さな変化を中心に投球を組み立てていくスタイルになるのではないでしょうか。それでも、現時点でチェンジアップの抜けは悪くなく、左打者の外角に切れ込むスライダーの曲がりも十分です。この部分に関しては、あまり悲観する必要はなさそうです。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブを最後までしっかり抱えているわけではありませんが、比較的体の近くに留められています。そのため、外に逃げようとする遠心力をある程度抑えられ、軸のブレはそれほど大きくありません。したがって、両サイドへのコントロールもつけやすいのではないでしょうか。 足の甲で地面を捉える感覚も悪くなく、浮き上がろうとする力を抑えられています。ゆえに、球筋は真ん中から低めのゾーンに集まりやすく、ボールが抜けたり高めに浮きやすいのを防げています。「球持ち」は平均的ですが、指先の感覚は悪くないように思えます。実際、46イニングで12四死球と、四死球率は26.1%で制球は安定しています。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークといった球種を多用するタイプではないため、窮屈な動きになる機会は少なそうです。その意味で、肘への負担も少ないのではないでしょうか。 グラブ側の肩がやや下がり、ボール側の肩が上がりがちではありますが、それほど極端ではないため、肩への負担が大きいほどではないように見えます。決して力投派でもないので、疲労が溜まりやすいという心配もなさそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの地面の捉え方が標準的であるため、打者にとってはタイミングが計りやすいかもしれません。しかし、ボールの出どころは隠せているように見えるので、甘くない球が打たれる理由は出どころが見やすいからではなさそうです。むしろ、タイミングが計りやすい一方で、簡単に打ち返されてしまう球威に原因があるのかもしれません。 腕は適度に振れており、打者としては吊られやすいはずです。ただし、三振数は1イニングあたり0.59個と少なめで、打者がそこまで吊られてこない要因がフォームにもあるようです。また、体重がグッと前に乗っている感じが薄いため、打者の手元までの勢いや圧が物足りなく映ります。 フォームのまとめ フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の中で、「体重移動」に課題を残しています。制球を司る動作は悪くなく、故障リスクも標準程度です。武器となるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、変化球一つ一つのクオリティは低くなく、コンビネーションで投球を組み立てる能力は備えています。 最後に 確かに、実戦派の左腕として目立つレベルには達しています。ただし、現状でNPBの一軍の戦力になり得るかと問われると、微妙な印象も受けます。そのため、現時点では指名確実とまで言えるパフォーマンスではなかったように思えます。今後も、その能力を見極めて行けたらと思っています。 蔵の印象:追跡級! (2025年 東京スポニチ大会) |