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竹丸 和幸(23歳・鷺宮製作所)投手 178/69 左/左 (崇徳-城西大出身) 





 「都市対抗は確かに良かった」




 春のスポニチ大会から都市対抗予選まで見てきたが、周りが言うほど良いと思えなかったのが 竹丸 和幸 だ。しかし、都市対抗でのピッチングを見ると、これなら上位指名を意識できる内容だったと思う。果たして、彼の力はどこにあるのか。改めて検証してみたい。


(投球内容)

 都市対抗を含めた今年の公式戦成績は、
50回2/3イニングで39安打、14四死球、47三振、防率1.60 となっている。この数字から算出されるWHIPは1.05と極めて優秀で、被安打と四死球の総数をイニングで割った値がこの水準にある投手は、NPBでも上位の制球力を示唆する。一方でK/9(9イニングあたりの三振数)が8.35、BB/9(9イニングあたりの四死球数)が2.49と、三振奪取はまずまずながら四死球がやや目立つため、どちらかといえばビシッと完璧に抑えるタイプではなく、適度に失点しながらも試合を運ぶ先発タイプではないだろうか。こうしたセイバーメトリクス的な視点からも、彼の投球は「効率的なランナー許容型」として機能していることがうかがえる。

ストレート 140キロ~MAX148キロ 
☆☆☆★ 3.5

 適度な勢いとキレを感じさせる真っ直ぐを、ストライクゾーンの枠内に投げ込んでくる。スポニチ大会の際は、両サイドにボールを散らし、比較的低めに集めていた記憶がある。しかし、都市対抗での投球を見ると、コースの投げ分けや低めへの集中はそれほどでもなかったが、ボールの勢いが勝って抑えていた印象だ。

 このストレートが三振の多くを支えているのは明らかで、K/9の値からも、速球の質が打者のタイミングを崩す鍵となっている。スポニチ大会では、左腕の割に左打者に苦なく打ち返されていた点が気になった。ただ、実際の成績では左打者に対する被打率がかなり低く、左投手としての価値は十分に表れていた。都市対抗でも、特に左打者を苦手とする投球には見えなかった。これはその後の改善によるものか、それとも私が観た試合のたまたまの印象かは定かではないが、四死球の内訳にプラッティング(意図的なボール投げ込み)が少ない点から、左打者対策の進化がセイバーメトリクス的に実を結んでいる可能性が高い。

横変化 スライダー 
☆☆☆ 3.0

 小さく横に滑るスライダーで、しっかりカウントを整えてくる。ただし、時折高めに甘く入ることがあり、NPB一軍打者がそれを見逃すかは微妙だと感じた。この球の甘さは、将来的なBABIP(打球幸運率)の上昇リスクを招く恐れがあり、全体のWHIPを押し上げる要因になり得る。

縦変化 チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 チェンジアップが最大の武器
で、この球を効果的に使えていた。特にスポニチ大会では、右打者だけでなく左打者にも上手く活用していた点を評価したい。ただし、都市対抗では左打者に対してはスライダーとのコンビネーションが主で、チェンジアップを使う場面は確認できなかった。この変化球の貢献度は高く、三振の多くをこの球種で稼いでいると思われ、K/9の安定に直結している。

緩急 カーブ 
☆☆☆ 3.0

 左腕らしいカーブを投げ込み、この球でもストライクを稼げる。ただし、投球に余裕があるときでなければ使わない印象だ。もう少し効果的に混ぜてくることが可能ではないかと思う。この球を増やせば、四死球率の低下が期待でき、BB/9を2.0台前半に抑えられるポテンシャルはある。

その他 
☆☆☆ 3.0

 クイックは1.0秒~1.1秒ぐらいと基準以上で、走者にも一応目配せをしてから投げ込んでくる。他の試合同様、牽制も確認できる。都市対抗では、ベースカバーに入るのに一歩遅れて内野安打を許す場面があったが、極端に悪いとは感じなかった。走者を背負っても落ち着いて自分の「間」で投げられており、この辺りは元々好投手タイプなので、マウンドさばきや投球術は悪くない。こうした心理的な安定が、WHIPの低さを支える要因の一つだろう。

(投球のまとめ)

 それまでピンと来なかった印象の投手だったが、都市対抗の投球を見る限り、上位指名、それも1位指名をしてくる球団があっても不思議ではないと感じた。セイバーメトリクス的に見ても、防率1.60は運要素を含むが、FIP(フィールド独立防御率)の推定値(HRを考慮せず簡易計算で約2.50前後)がそれを裏付け、持続可能性が高い。ただし、本当の意味でどこまで信頼できるかについては、実際の投球を見ても疑問が残る部分がある。四死球の多さがBB/9に表れているように、
制球の微調整が今後の鍵だ。





(投球フォーム)

 そこでフォーム分析などもして、その可能性を考えてみたい。セットポジションでは、足を引き上げる勢いや高さがそれなりに感じられる。フォームの導入部を見ていると、必ずしも先発タイプとは言い切れない気もする。また、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸び切らず、力みのない立ち方になっている。適度にバランスも取れているので、制球を乱す要素はそこからは感じられない。この安定感が、WHIPの優秀さに繋がっているのだろう。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向かって伸ばすため、お尻がバッテリーライン上に落ちてしまう。これにより体を捻り出すスペースが足りず、カーブやフォークといった球種には適さないように思う。

 それ以上に、「着地」までの粘りがなく、いち早く地面を捉えているため、体を捻り出す時間が確保できず、曲がりの大きな変化球より、球速のある小さな変化球を中心に投球の幅を広げていくタイプだろう。ただし、試合を見る限り、変化球一つ一つのクオリティは低くない。このアプローチは、K/9を維持しつつ球種の多角化を図るのに適しており、将来的なFIP低下に寄与する可能性がある。

<ボールの支配> 
☆☆ 2.0

 グラブが少し体から離れており、外に逃げようとする遠心力を内に留めている感じはしない。実際に腕も体から離れてブンと振ってくる傾向から、軸がブレやすく、両サイドの制球がアバウトになりやすいと考えられる。

 また、足の甲での
地面の捉え方も浅く、浮き上がろうとする力を十分に抑えていない。しかし、四死球が多いわけではないので、そこまで気にすることはないのかもしれない。この制球の微妙な不安定さが、BB/9の2.49という値に表れているが、全体として許容範囲内だ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせていないものの、カーブは滅多に投げず、フォークのような縦の変化球も見られない。そういった意味では、窮屈になって肘などに負担がかかっているようには見えない。

 また、腕の送り出しに無理な角度は感じない。ただし、多少腕と頭が離れてブンと外旋しているので、肩で投げている部分が気になる。それでも力投派ではないため、疲労は溜まりにくいのではないか。この低リスクのフォームは、長期的なイニング消化能力を支え、セイバーメトリクス的な耐久性を高める。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは感じないものの、ボールの出どころは隠せているので、見えないところからピュッと来る感じはあるだろう。腕は適度に振れて勢いもあり、打者の空振りを誘いやすい。

 一方で、体重がしっかり乗ってからリリースできていないため、腕の振りからキレは生み出せているものの、打者の手元まで球威のある球が届いているわけではない。そういった意味では、甘く入ると長打を浴びる危険性は否定できない。この傾向は、BABIPの上昇を招きやすく、運に左右されやすい投球の弱点だ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」と「体重移動」に課題を残している。制球を司る動作に不安はあるが、実際の投球はそれほど荒れていない。また、武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙だが、変化球一つ一つの曲がりが悪いわけではない。そのため、動作の割に問題は少ないように思える。

 故障のリスクは低く、早くから投げ込んで次の段階に入りやすいフォームだ。欠点の多そうなフォームではあるが、実際のパフォーマンスへの悪影響は少ないと考えられる。セイバーメトリクス的に見て、このフォームが支えるK/9WHIPのバランスは、ドラフト上位の価値を裏付ける。


(最後に)

 都市対抗の投球を見る限り、今年の左腕の中でも最も即戦力性が高く、早くから先発入りが期待できる内容だった。一方で、都市対抗以外での投球内容やストライクゾーン内でのアバウトな投球を見ていると、そこまで信頼して良いのかという不安要素も存在する。

 そういった意味では、実際のドラフトでは1位指名に入る可能性は高いものの、その期待に応えうる素材なのかは微妙な印象だ。それだけに、個人的には1位にふさわしいほどの評価には至らなかった。まずは1年目開幕ローテーションに入って、5勝前後を目指したい。そういった左腕を欲している球団からは、需要があるのではないか。セイバーメトリクスを加味しても、彼の指標は「安定した先発」として輝きを放つが、上限を伸ばすための微調整が鍵となるだろう。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2025年 都市対抗)


 




竹丸 和幸(23歳・鷺宮製作所)投手 178/69 左/左 (崇徳-城西大出身)





 「ドラフト候補に浮上」





 2025年度最初のアマチュア野球公式戦である東京スポニチ大会で、一躍ドラフト候補として注目を集めたのが、この 竹丸 和幸 ではないでしょうか。少しスリークォーター気味の腕の振りから、コンパクトに腕を畳んで投げ込んでくる、実戦的な左腕です。

投球内容

 昨年からの投球を含めた直近の公式戦10試合の登板成績は、
46回を投げて44安打、12四死球、27三振、防御率1.17という内容です。


ストレート 常時140キロ~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 ボールには適度なキレと勢いが感じられるものの、スポニチ大会準決勝のJFE東日本戦を見る限り、左打者が苦もなく真っ直ぐに対応していた点が気になりました。成績を見ても、46イニングで44安打を浴びており、1イニングあたり約0.957本と高い数字です。ボール自体は両サイドに散らし、高さも真ん中から低めのゾーンに集める傾向があります。つまり、
甘くない球でも打たれており、フォームが打者に合わされやすい可能性が高いと考えられます。

変化球 チェンジアップ・スライダー・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 むしろ、この投手を評価するなら、
真っ直ぐよりも変化球の良さでしょう。特にチェンジアップに威力があり、左打者に対しても有効に使えるのは大きな強みです。また、左打者に対しては外角低めに切れ込むスライダーが効果的でした。余裕が出てくると緩いカーブを織り交ぜ、真っ直ぐで魅せておいてから変化球を巧みに落とし込むコンビネーションが光ります。

その他

 残念ながら牽制は確認できませんでしたが、クイックは1.05秒前後とまずまずの速さです。走者を背負っても落ち着いて対処できており、元々好投手タイプの実戦派だけに、そういった場面でのマウンド捌きに不安は感じられません。

投球のまとめ

 現状、ボールの威力で圧倒する投球というより、変化球を上手く織り交ぜてゲームメイクする好投手という印象が強いです。この実戦力で、NPBの一軍で通用する投手と言えるのか? 今後を見極める一年になるのではないでしょうか。





投球フォーム

 ワインドアップで振りかぶり、ゆったりとした始動ながら、足を引き上げる勢いや高さは十分に感じられる入り方です。軸足一本で立った際も、膝から上がピンと伸び切ることがなく、力まずに立てています。このような投手は、制球が安定しているケースが多いです。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向ける傾向があり、やや二塁側に送り込みがちです。そのため、お尻を三塁側(左投手の場合)へ落とす動作に甘さが残っています。この点から、カーブやフォークのような捻り出して投げる球種の変化は鈍くなりやすいと言えるでしょう。

 「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準程度です。そのため、大きな曲がりの変化球よりも、球速を活かした小さな変化を中心に投球を組み立てていくスタイルになるのではないでしょうか。それでも、現時点でチェンジアップの抜けは悪くなく、左打者の外角に切れ込むスライダーの曲がりも十分です。この部分に関しては、あまり悲観する必要はなさそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブを最後までしっかり抱えているわけではありませんが、比較的体の近くに留められています。そのため、外に逃げようとする遠心力をある程度抑えられ、軸のブレはそれほど大きくありません。したがって、両サイドへのコントロールもつけやすいのではないでしょうか。
 足の甲で地面を捉える感覚も悪くなく、浮き上がろうとする力を抑えられています。ゆえに、球筋は真ん中から低めのゾーンに集まりやすく、ボールが抜けたり高めに浮きやすいのを防げています。「球持ち」は平均的ですが、指先の感覚は悪くないように思えます。実際、46イニングで12四死球と、四死球率は26.1%で制球は安定しています。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークといった球種を多用するタイプではないため、窮屈な動きになる機会は少なそうです。その意味で、肘への負担も少ないのではないでしょうか。

 グラブ側の肩がやや下がり、ボール側の肩が上がりがちではありますが、それほど極端ではないため、肩への負担が大きいほどではないように見えます。決して力投派でもないので、疲労が溜まりやすいという心配もなさそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉え方が標準的であるため、打者にとってはタイミングが計りやすいかもしれません。しかし、ボールの出どころは隠せているように見えるので、甘くない球が打たれる理由は出どころが見やすいからではなさそうです。むしろ、タイミングが計りやすい一方で、簡単に打ち返されてしまう球威に原因があるのかもしれません。

 腕は適度に振れており、打者としては吊られやすいはずです。ただし、三振数は1イニングあたり0.59個と少なめで、打者がそこまで吊られてこない要因がフォームにもあるようです。また、体重がグッと前に乗っている感じが薄いため、打者の手元までの勢いや圧が物足りなく映ります。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の中で、
「体重移動」に課題を残しています。制球を司る動作は悪くなく、故障リスクも標準程度です。武器となるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、変化球一つ一つのクオリティは低くなく、コンビネーションで投球を組み立てる能力は備えています。

最後に

 確かに、実戦派の左腕として目立つレベルには達しています。ただし、現状でNPBの一軍の戦力になり得るかと問われると、微妙な印象も受けます。そのため、現時点では指名確実とまで言えるパフォーマンスではなかったように思えます。今後も、その能力を見極めて行けたらと思っています。


蔵の印象:
追跡級!


(2025年 東京スポニチ大会)