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牧野 憲伸(26歳・オイシックス新潟) 投手 180/83 左/左 (白樺学園-富士大-BC信濃)





 「何処まで実戦的か?」





 イースタン・リーグで何度か見ていた選手でしたが、「まとまった左腕」という印象が強かった 牧野 憲伸 。一軍を意識したときに、どこまで実戦的と言えるのか考えてみた。


(投球内容)

 今シーズンはイースタン・リーグ参戦のオイシックス新潟に在籍。
4勝3敗ながら 防御率2.90 はリーグ全体2位の好成績だった。


投球回数
被安打
四球 奪三振  防御率
102回1/3 109 36 87 2.90


ストレート 140キロ~140キロ台後半 ☆☆☆(3.0)

 普段の球速は140キロ台前半程度で、見た目が派手な部類ではない。そのため被安打が投球回を上回っている要因の一つだろう。それでも、
決めに行く場面では140キロ台後半を計測し、その時の勢いと伸びは十分に感じられる

 右打者には両サイド、左打者には外寄りを中心に投げ分けられている。四死球率は35.1%(基準は投球回数の1/3以下)とややアバウトで、見た目の印象より四死球が多いのが意外だった。

横変化 スライダー 
☆☆☆★(3.5)

 左打者外角に逃げるスライダーを振らせるのが得意。右打者に対してはほとんど使えていない印象だ。しかしカウント球だけでなく、
左打者に対しては決め球として通用するキレがある。

縦変化 チェンジアップ 
☆☆☆★(3.5)

 右打者には低め・外角に沈めて空振りを奪えており、
明確な武器になっている。

緩急 カーブ 
☆☆☆(3.0)

 曲がり自体は悪くないが、使用頻度はそれほど高くない。カウントを取りつつ、相手が意識していないタイミングで投げて見逃し三振も奪えていた。

その他 
☆☆☆★(3.5)

 クイックは0.9~1.0秒と速く、マウンドさばきもそつがない。経験値の高さが伺える。

(投球のまとめ)

 普段のボールは目立つタイプではないが、要所でしっかり仕留められる技術はある。二軍成績としては「優秀だけど圧倒的ではない」レベルで、一軍定着を確約できる数字とは言い難い。

FIP(守備に左右されにくい投手の純粋な実力を示す指標):約3.70→ 防御率2.90よりかなり高い。これは被安打が多い(BABIP .315)ことと、運の要素もあったことを示唆している。 K/9(9回あたりの奪三振数):7.67 BB/9(9回あたりの与四球数):3.17→ 三振は平均的、四球は若干多めで「制球で勝負するタイプ」とは言えない。 K%-BB%(三振率-四球率):15.1%→ 一軍平均は17~18%程度なので、やや見劣りする水準。投球フォームも含めて、どこまで伸びるのかを考えてみたい。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから足を高く引き上げる勢いがあり、ゆったりした先発型かと思いきや、序盤からエネルギーを強く捻り出す
リリーフ向きの入りで驚いた。軸足一本で立ったときも膝から上がピンと伸びきらず、力みなくバランスを保てている。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆(4.0)

 お尻がしっかり落ちており、捻り出すスペースを確保できているため、カーブやフォークなどの「捻り系」変化球も無理なく投げられる。着地までの粘りも十分で、変化球のキレ・曲がりともに上位レベルと言える。

<ボールの支配> 
☆☆☆(3.0)

 グラブは最後まで内に抱えられ、遠心力を抑えているため軸ブレは少ない。
両サイドへのコントロールはつけやすそう。ただ、足の甲が早く浮いてしまうため、力を入れるとボールが浮き上がる傾向がある。球持ちは平均的だが、指先の感覚は良い部類。

<故障のリスク> 
☆☆★(2.5)

 お尻が落とせているので捻り系の球種で窮屈になることはない。ただ、投げるときに「ボール側の肩が上がり、グラブ側の肩が下がる」形であり、肩・肘への負担は気になるところ。全体的に力投派のフォームなので疲労も溜まりやすい。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆(4.0)

 着地の粘り、ボールの出所の見づらさ、腕の振りともにレベルが高い。体重移動も悪くない。それなのに被安打が多いのは正直不思議なほどだ。

(フォームのまとめ)

 「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の4大要素に大きな欠点は見当たらない。気になる点は
「足の甲が早く離れ→力を入れると浮く」「力投型で疲労を溜めやすそう」の2点。現時点でもスライダーとチェンジアップはプロでも通用するキレがあり、今後もう一つ武器を増やせれば面白い存在になる。


(最後に)

 二軍成績だけを見ると「一軍半」レベルの力で、26歳という年齢を考えても即戦力と呼ぶには少し物足りない。FIPK%-BB%を見ても「二軍で運が良かった部分」があり、一軍ではもう一段の進化が必要だろう。それでも変化球のキレとフォームのポテンシャルは確かにある。そのため育成ドラフトでの指名は妥当な線で、プロの環境で制球力と三振能力がさらに向上すれば、面白い存在になりうる可能性は十分に残している。


(2025年 イースタン・リーグ公式戦)