25sp-10
谷内 隆悟(25歳・エイジェック)投手 180/75 左/左 (鳥羽-同志社大出身) | |
滑らかなフォームと美しい球筋のストレートを見ると、谷内隆悟の投球には独特の印象を受ける。この特徴がプロでの活躍にどう影響するのか、その可能性について考察する。 投球内容 SUBARUの補強選手として都市対抗野球でも登板した谷内。自チームでは先発・リリーフの両方をこなすが、プロではまずリリーフとして起用される可能性が高い。2025年の公式戦成績は、33回1/3を投げ、被安打27、四死球9、奪三振41、被本塁打2、防御率4.32。 セイバーメトリクスで見ると、K/9(9回あたりの奪三振数、投手の奪三振能力を示す)は11.07と高い奪三振力を示し、BB/9(9回あたりの四死球数、制球力を測る)は2.43と平均以上だ。WHIP(1回あたりの被安打+四死球数、投手の打者抑止力を示す)は1.08と優秀。防御率4.32に対し、FIP(守備に依存しない防御率、投手の真の投球力を推定)は被本塁打2を反映して約4.07(計算式:((13×2 + 3×9 - 2×41) / 33.33) + 3.2)と防御率に近く、運の影響は限定的だが、被本塁打がやや気になる。 ストレート ☆☆☆ 3.0 都市対抗ではリリーフ登板で、常時145キロ前後(最速146キロ)を記録。球威や球速が特に際立つわけではないが、きれいな球筋で伸びのあるストレートが特徴的だ。細かい制球力は目立たないものの、両サイドに適度に散らす投球ができている。高いK/9(11.07)は、このストレートの伸びとコースの使い分けによるものと考えられる。 横変化 スライダー ☆☆☆ 3.0 横に滑るスライダーでカウントを整える。空振りを誘うほどのキレはないが、ストレートと組み合わせて投球を構築できている。WHIP(1.08)の優秀さは、このスライダーが打者を打ち取る上で一定の役割を果たしていることを示唆する。 縦変化 チェンジアップ ☆☆★ 2.5 右打者の外角に小さく逃げるような変化で、チェンジアップというよりツーシームに近い。空振りを誘う威力は乏しく、スライダーほどの信頼性はない印象だ。K/9の高さに対し、この球種の空振り誘発率は低いと推測される。 緩急 カーブ ☆☆★ 2.5 カーブのブレーキは悪くないが、使用頻度は高くない。相手打者の意識が薄い場面や精神的に余裕があるときに投じる傾向がある。セイバーメトリクス的には、この球種が投球全体に与える影響は限定的だろう。 その他 クイックは1.05秒前後と基準以上で、走者への目配せも適切だ。左投手ということもあり、ランナーにとってスタートを切りづらいタイプかもしれない。フィールディングや牽制については確認できなかったが、投球タイミングの変化や微妙なコースの出し入れといった技巧派の要素はあまり感じられない。 投球のまとめ 谷内はきれいなフォームから標準的なストレートと一通りの変化球を、破綻のないコントロールで投げ込むバランス型投手だ。WHIP1.08の低さは打者を抑える能力の高さを裏付けるが、FIP4.07と防御率4.32の近さから、被本塁打2本の球威の無さが成績に影響を与えていることが分かる。大卒3年目の年齢を考慮すると、「何が売りか」という明確な武器が不足している。被本塁打の抑制や変化球の強化が今後の課題といえる。以下、フォーム分析を通じてその可能性を探る。 投球フォーム セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立つ際、膝から上が直立気味になり、力みが感じられる「トの字」の形になる。それでも着地が早すぎたり、制球を大きく乱すことはない。BB/9(2.43)の低さは、このフォームの安定性が制球力に寄与していることを示す。 広がる可能性 ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向かって伸ばすため、お尻がバッテリーライン上に落ちがちだ。このため体を捻り出すスペースが確保しづらく、カーブやフォークのような球種には不向きな投げ方といえる。 着地までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準的。そのため、大きな変化を伴う球種よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げる方向性が適している。 ボールの支配 ☆☆☆☆ 4.0 グラブを最後まで内に抱えられ、外に逃げる遠心力を抑えているため、軸がブレにくい。両サイドへのコントロールもつけやすく、足の甲で地面を捉える動作もできており、浮き上がる力を抑制している。球持ちもまずまずで、ボールが上ずるのを防げている。直立気味の姿勢でも、これらの動作により制球の乱れを抑えており、BB/9の低さがこの点を裏付ける。 故障のリスク ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としは不十分だが、カーブの使用頻度が低く、フォークのような球種も投げないため、肘や肩への負担は少ないと考えられる。腕の送り出しも無理がなく、力投派ではないため疲労蓄積のリスクも低そう。 実戦的な術 ☆☆☆★ 3.5 着地までの地面の捉え方は平均的だが、ボールの出どころはある程度隠せている。これにより、打者にとってボールが突然現れるようなギャップが生まれている。腕の振りも十分で、投げ終わった後に体に絡むような動作があり、打者が勢いで吊られやすい効果がある。これが、K/9(11.07)という高い奪三振率に繋がっている要因だろう。また、ボールに適度に体重を乗せて投げられており、投げ終わった後の地面の蹴り上げも良好で、しっかり前に体重移動できている。 フォームのまとめ フォームの4大要素(着地、球持ち、開き、体重移動)では、「着地」にやや粘りが欲しいものの、大きな欠点はない。制球を司る動作は優れており、BB/9やWHIPの数値からもその安定性が窺える。故障リスクも低い。将来的に武器となる変化球を見出せるか、被本塁打を抑える工夫ができるかが鍵だが、美しいフォームは見た目通り理にかなった投球動作といえる。 最後に 谷内の投球内容を総合すると、大卒3年目の選手としてはドラフト指名が微妙な位置にある。K/9(11.07)はリリーフとしてのポテンシャルを示すが、FIP4.07と防御率4.32の近さから、被本塁打2本が成績に影響を与えており、プロでの即戦力性は未知数だ。このクセのない美しいフォームを基盤に、被本塁打の抑制や変化球の強化で光るものを発掘できれば、指名に動く球団が出てくる可能性は十分ある。ただし、個人的には支配下指名級の評価に至るほどのインパクトまでは感じられなかった。 (2025年 都市対抗) |