25ky-9





櫻井 ユウヤ(昌平3年)三塁 180/83 右/右  
 




 「最初の入札もありでは」





 全国の強打者を見てきて、今年の高校No.1の打者は誰かと聞かれれば、迷うことなく 櫻井 ユウヤ の名前を挙げたい。両親がタイ人でありながら日本で生まれ育った彼のパワーは、まさに超高校級と言っても過言ではない。


走塁面:
☆☆☆ 3.0

 一塁までの塁間を右打席から4.4秒前後(左打者換算で約4.15秒)で駆け抜ける。昨年は4.2秒前後(左打者換算で約3.95秒)で走っており、プロの基準を上回るタイムを記録していた。1年生からの公式戦35試合で、6盗塁を決め失敗は2回。圧倒的な脚力ではないものの、走っている姿に重苦しさは感じられず、内野ゴロでも最後まで全力で走る姿勢が見られる。強打者ながら走塁への意欲は高く、適度な走力も持ち合わせていると評価できる。

守備面:
☆☆☆ 3.0

 サードとしてのフットワークや守備範囲は悪くない。ただし、
送球にやや不安が残り、今後改善できるかは未知数だ。しかし、高校生のサードとしては下手な部類ではなく、岡本和真(巨人)の高校時代と比べても、明らかに上手いと感じられる。少なくとも肩の強さは基準を満たしており、1年生からの公式戦35試合で失策は4個。最後の夏も、7試合で1失策といった内容だった。

 肩や足といった身体能力よりも、プレーの精度をどれだけ高められるかが鍵となる。






打撃内容

 3年夏の埼玉大会では、決勝戦までの7試合に勝ち進み、以下の成績を残した。準決勝の浦和実業戦では、レフトポール際に特大のファールを放ち、あわやホームランという場面もあった。

打数
安打
二塁打
三塁打
本塁打
打点
四球
死球
三振
打率
20
10
5
0
1
11
4
4
2
.500

セイバーメトリクス補足:打率.500に加え、ISO(純粋長打率).400は
高校生トップクラスBB/K(四球/三振比)2.0は優れた選球眼を示す。


構え:
☆☆☆☆ 4.0

 右打席で前足を軽く引き、グリップを肩の高さに添える構え。腰を深く据え、両目で前を見据える姿勢はバランスが良く、
強打者らしい威圧感を漂わせる。昨年は前傾姿勢がやや目立つ癖があったが、この1年で大きく改善された点に好感が持てる。

セイバーメトリクス補足:安定した構えは打球速度(Exit Velocity)の向上に寄与。姿勢の改善により、コンタクト率の上昇が期待される。

仕掛け:
平均的

 投手の重心が沈みきったタイミングで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。このタイミングは、確実性と長打力を兼ね備えた中距離打者やポイントゲッターに多く見られる。昨年は「遅すぎる仕掛け」だったが、始動を早めることで打撃の幅を広げた。

セイバーメトリクス補足:平均的な仕掛けはBABIP(打球打率).500を支える要因。タイミング調整により、速球への対応力(Whiff%低下)が向上。

足の運び:
☆☆☆★ 3.5

 軽く足を上げ、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」は標準的で、速球や変化球のスピード変化にもそれなりに適応できる。外角への意識が強いインステップを採用している。踏み込んだ足は、
強い上半身の振りにも動かず安定し、逃げる球や低めの球にも食らいつける。一方で、インステップによる内角球の捌きがやや窮屈な点が課題。

セイバーメトリクス補足:インステップは外角球への高い打球角度(Launch Angle)を促進。内角球のPull%向上にはスイング軌道の調整が必要。

リストワーク:
☆☆☆★ 3.5

 打撃準備の「トップ」を早めに形成でき、速い球にも対応しやすい。ボールを呼び込む際、バットのヘッドが投手側に大きく倒れるため、
バットの出がやや遠回りになる点が気になる。それでも、スイング軌道に全体には大きなロスはなく、ヘッドスピードの速さで補えている。インパクトでは、ボールの下にバットを潜り込ませて打球に角度をつけるのが得意なタイプ。ロスはあるものの、インパクト後のスイングの弧やフォロースルーの形から、長距離打者としての資質も感じられる。

セイバーメトリクス補足:ヘッドスピードの速さは打球速度90マイル以上を記録可能。バット軌道の遠回りはミスヒット率(Pop-up%)に影響する可能性。

軸:
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動は少ない。体の開きも我慢できており、軸足の形がやや崩れがちな点が若干気になる程度。軸足の
内腿の筋肉は発達しており、強烈な打球を生み出す原動力となっている。

セイバーメトリクス補足:安定した軸は打球角度の最適化(10-30°)に貢献。軸足の強さは高ISOを裏付けるパワー源。

打撃のまとめ

 スイングに多少のロスはあるため、確実性に粗さが残る。しかし、致命的な欠点ではなく、各動作の課題も許容範囲内である。
飛距離を稼げる技術と肉体の強さに加え、強打者らしいマインドを備えていると評価する。

セイバーメトリクス補足:wOBA(加重出塁率)推定.550は高校生トップレベル。打球速度と角度の最適化でプロでのHR生産性が期待される。


最後に

 正直、智弁学園時代の岡本和真(巨人)よりも魅力を感じている。プロでも飛距離でアピールできる素材であり、脆さが少ない点も強み。
課題に真摯に向き合う姿勢や、プレーに手抜き感がないところも高く評価する。ドラフトでは外れ1位から3位前半での指名が予想されるが、個人的には文句なしの1位級だと評価しており、最初の入札から指名してみても良い素材ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2025年夏 埼玉大会)





櫻井 ユウヤ(昌平2年)内野 180/86 右/右 





 「思ったより脆くない」





守備・走塁面


 一塁までの塁間を右打席から約4.2秒(左打者換算で約3.95秒)で駆け抜けるなど、想像以上に足が速い。昨年の公式戦11試合では、6盗塁を記録し、しかも失敗はゼロ。見た目のゴツさからは想像しにくい俊足ぶりだ。全力で一塁まで駆け抜ける迫力もあり、走力に関しては「中の上」から「上の下」クラスと評価して良いだろう。


 旧チームでは一塁手を務めており、夏の埼玉大会の準決勝・決勝戦の様子を見る限り、目立った大きなミスはなかった。ただし、両足を伸ばして捕球するような柔軟性や反応の良さはあまり感じられず、一塁への入りもワンテンポ遅い印象を受ける。三塁手としてのプレーは確認できていないが、中学時代に投手を経験しており、肩の強さはありそうだ。

 走力は速そうだが、守備に関しては正直よくわからない。この点は、ぜひ春季大会で確認したいポイントだ。






打撃内容

 夏の細田学園戦以降の7試合では、全てでヒットを記録している。特に秋季大会で敗れた狭山ヶ丘戦を除く6試合では、いずれもマルチ安打を達成。一方で、腕っ節が強すぎるゆえか、打球が思ったほど上がらない印象も受ける。

構え 
☆☆☆ 3.0

 右打席でやや足を引き、前足のかかとを浮かせ、グリップを高く構えて捕手側に引いている。腰を深く沈め、両目で前を見据える姿勢は悪くないが、
少し前傾気味で打席での力みを感じさせる点が気になる。

仕掛け 遅すぎ

 投手の重心が沈むタイミングでベース側につま先立ちし、浮かせた前足のかかとを下ろす独特な動作が特徴。始動のタイミングは「遅すぎる仕掛け」に分類され、木製バットを使う日本人選手には扱いが難しいとされる。しかし、彼のような強靭な肉体を持つ選手なら、この遅さを補って打撃を成立させる可能性を秘めている。

足の運び 
☆☆★ 2.5

 前足のかかとを浮かせて下ろすシンプルな動作だが、ベース側につま先立ちしているため、インステップ気味にスイングしている。始動から着地までの「間」が短く、狙い球を絞って逃さない技術が求められる。クロス気味にボールを捉えていることから、外角への意識が強いのかもしれない。

 踏み込んだ足はインパクト時にやや動いたり腰が早く開くため、逃げる球や低めの球には弱そうだが、ボールを引きつけて右方向へ打球を飛ばすことはできている。

リストワーク 
☆☆★ 2.5

 グリップをあらかじめ引いて構えているため、「トップ」の形は早めに作れている。これが始動の遅さを補う要素に。バットの振り出しはやや腰が早く開き、遠回り気味になるため、スイングにロスを感じる。

 それでも、バットヘッドが下がりすぎず、ドアスイングとまではいかない。ボールに角度をつけて飛ばすタイプではないが、最後まで力強く振り切る。フェアゾーンに飛びやすいインパクトを生み出し、強烈な打球で野手の間を抜いている。抜群の飛距離が出る場合は、右方向より引っ張って巻き込んだ時ではないだろうか。

軸 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ幅が小さいため、
目線の上下動は少ない。だが、腰が早く開き、インパクト時に足元が動くため、開きを我慢できているとは言えない。軸足もベース側にやや傾きがちで、体が突っ込まないよう注意が必要だ。一方で、軸足の内ももの筋肉が発達しており、強い打球を生み出す原動力となっている。

打撃のまとめ

 バットの振り出しが遠回りだったり、開きを我慢できなかったりと課題はある。それでも、長所が欠点を上回っており、致命的な弱点にはなっていない印象だ。強打者でありながら脆さを感じさせず、ある程度の対応力を見せる。ただし、ホームランを量産するタイプかと問われると、現状では微妙な印象も受けている。

最後に

 圧倒的な体の強さを活かし、日本人離れした打撃を成立させている。足は想像以上に速いが、最終学年で守備面での評価をどこまで高められるか。2025年度は目立つ高校生野手が少ない年だけに、彼が上位候補として一気に浮上する可能性もある。今から、春季大会が楽しみな選手だった。


(2024年夏 埼玉大会)