25ky-35
| 野上 士耀(明秀学園日立3年)捕手 170/77 右/右 | |||||||||||||||||||
25年夏の甲子園、聖隷クリストファー戦で7回に投じたセカンドへの送球で指名を決定づけた 野上 士耀。一体、どのような選手なのか考えてみよう。 (ディフェンス面) 小柄ながらガッチリした体格で、投手にしっかりミットを示して構えます。どちらかというと勝ち気な性格の捕手といった感じで、投手や打者の細かい変化に気がつくというよりは、「俺について来い!」というタイプのように思えます。 キャッチングに関しては特筆すべきものは感じられませんでしたが、ワンバウンド処理などの際には、ミットを素早く下から出せて止めるなど、フットワークなどの足回りは良かったです。最大の魅力は、捕ってから素早く、二塁ベースまで勢いが落ちない送球にあります。そのタイムは1.8秒台中盤~1.9秒台前半。地肩・フットワークなど、送球に関してはプロでも十分やっていけそうです。あとは、捕手としてのきめ細やかさなど、他者を意識するプレーを身につけられるかが鍵になりそうです。 (打撃内容) 決してオーバーフェンスを連発するタイプではなさそうですが、腕っぷしの強さを生かしたパワフルな打撃が印象的。そんな野上選手の3年夏の成績は、以下の通りです。この成績から算出されるOPS(出塁率と長打率の合計で、打撃の総合力を示す指標)は.980と高水準で、出塁とパワーのバランスが良いことを示しています。
<構え> ☆☆☆★ 3.5 右打席から前の足を軽く引いて、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並ですが、両目で前を見据える姿勢はしっかりしており、球筋を錯覚することなく追うことができます。構えからも、強打者の雰囲気がプンプン漂ってきます。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下る時に、ベース側につま先立ち。本格的に動き出すのは、リリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用しています。日本人のヘッドスピードや筋力を考えると、プロレベルの球を木製バットで打ち返すのには厳しい始動のタイミングです。特に、ある程度筋力が伴う段階での使用は、なかなか厳しいのではないでしょうか。それでも、これで結果を残してきた選手だけに、壁に当たるまでは今のタイミングを大事にしてほしいと思います。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプではないのでしょうか。 ただし、引っ張り重視のスイングなので、踏み込んだ前の足が早く地面から離れます。確かに引っ張る時にはそれで構いませんが、基本的に逃げていく球や低めの球には弱いと考えられます。追い込まれた時、あるいは引っ張り切れない球に対し、どう対処していけるかが鍵になるでしょう。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力みなくボールを呼び込めています。バットの振り出しは、少し遠回りに出てきます。それでもバットの先端であるヘッドは下がらず、スイングスピードも速いので大きな欠点にはつながっていません。 広い面でボールを捉えられているので、打球もフェアゾーンに飛びやすいです。ただし、上手く引っ張り込めた時には長打も期待できるものの、基本的に打球に角度を付けて飛ばすタイプではないように思えます。一方で、ISO(長打力を示す指標)が.048と低めな点から、本塁打の少なさがパワーの限界を表しています。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きが我慢できていないですが、今のように引っ張り重視であれば、それもありでしょう。特に軸足の形も崩れず、軸を起点にキレイに回転できています。軸足の内腿の筋肉も発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。 (打撃のまとめ) タイミングの取り方と引っ張り重視のスイングであるために、打てる球は限られていそうです。その一方で、スイングは力強く、また根本的な打力は低くないように思えます。プロ入り後、打球方向を広げたり、「間」の取り方などを工夫すれば、打撃でも存在を示せても不思議ではありません。特に、このOPSの高さが示す出塁力とパワーのポテンシャルを活かせば、さらなる向上余地がありそうです。 (最後に) 捕手としては、プロでも売りにできそうな強肩が自慢です。ただし、繊細さを感じさせるタイプではないので、捕手としていかに信頼を得られるかが鍵になります。打撃の能力も低くなさそうですが、現状は打てるポイント・コースなどは限定されそうです。これを、いかに広げていけるかではないでしょうか。そのため個人的には、☆(支配下級)の評価には至りませんでした。一軍戦力になるまでには、プレーの柔軟性を広げ、何処まで深く追求できるかどうか、そのあたりが求められることになりそうです。 (2025年夏 甲子園) |