25ky-34
| 能戸 輝夢(明秀学園日立3年) 右翼 183/79 右/左 | |||||||||||||||||||
甲子園では、左足首靱帯断裂のため、代打の一打席で終わった 能戸 輝夢。しかし、怪我をする前の茨城大会の模様を見ても、正直よくわからなかったというのが率直な感想だった。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁までの塁間は、左打席から 4.05秒ぐらい。このタイムは、ドラフト指名される左打者の基準タイム(4.1秒)を満たすタイムだが、ドラフト候補としては平均的なタイムとなる。ただし、三塁打の時の到達タイムは、ベース前で多少緩めても 11.0秒ぐらいということもあり、加速すると大型でもかなり速い走力があるように見えた。3年夏の茨城大会では、5試合で1盗塁。チームの一番打者を務めていた選手だが、現時点ではそこまで走力を全面に出すプレースタイルではなさそうだ。 守備面:☆☆☆ 3.0 ライトとしては、可も不可もなしといった感じで、特に際どい打球も飛んで来ないで無難にさばいていた印象。時にはマウンドに上がることもあるとのことで、地肩は決して弱くはないのだろう。ただし、強めに送球する場面が見られなかったので、そのへんは最後までわからなかった。 (打撃内容) 3年夏の茨城大会の成績は、
この限定的なサンプルながら、打率.500をマークした上で、出塁率(OBP、四死球を含めた出塁の効率を示す指標).611、長打率(SLG、安打の質を総塁打で測る指標)1.071を記録し、OPS(出塁率と長打率の合計で、総合的な打撃力を示す指標)1.682という驚異的な数値を叩き出している。加えて、ISO(長打率から打率を引いた純粋な長打力を測る指標)が.571と高く、三塁打3本の貢献が光る内容だ。ただし、打数が少ないため、これをプロの安定したパフォーマンスとして継続できるかが鍵となる。 <構え> ☆☆☆ 3.0 左打席から前の足を少し引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並だが、両目でしっかり前を見据えられているところは良いところ。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下る時に、開いていた足を元に戻し、つま先立ち。本格的に動き出すのは、リリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いタイミングでの始動は、木製バットを握ってプロレベルのスピード・キレに対応するのは難しい。特に筋力が備わる前の高校生では、なかなか厳しいのではないのだろうか。このスタイルが、出塁率の高さを支える選球眼の良さを生んでいる可能性もあるが、プロ移行時にはBABIP(打球後の運要素を除いた打率を示す指標)の低下リスクを考慮する必要がありそうだ。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 小さく足を上げて、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められる。しかし、このタイミングの取り方でも高い打率を残してきた選手だけに、壁に当たるまでは、このスイングで良いのではないのだろうか。 アウトステップするように、内角への意識が強そう。それもインパクト際にブレずに前の足が止まっていて、アウトステップでもある程度は逃げて行く球や低めの球にも食らいつくことができる。特に膝を柔らかく使い、低めの球を拾うのには優れている。この低め対応の巧みさが、三塁打の多発につながり、長打率を押し上げている印象だ。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めている。バットの振り出しは、上から振り下ろしてくるインサイドアウトのスイング軌道。バットのしなりを活かせないスイングなので、プロの力のある球を打ち返せるのかには疑問は残るが、ボールを捉えるのには優れている。 インパクトの際もバットの先端であるヘッドは下がっておらず、広い面で捉えられるのでフェアゾーンに飛びやすい。打球に角度を付けて飛ばすタイプではないので、それほど長打は期待できないものの、それでも夏の茨城大会では二塁打・三塁打の長打を連発できていた。まだまだ、スイングの強さ・鋭さを磨くのは、これからといった感じがする。ISOの高さが示すように、このリストのしなやかさが長打の基盤となっているが、プロの高速球群ではその耐久性が試されるだろう。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられ、調子の波の少なそうなスイングだった。あとは、内腿の筋肉などを鍛えて、打球に強さ・鋭さを磨きたい。この安定した軸が、三振率の低さ(打数に対する三振の割合)を支え、出塁率の向上に寄与している点は評価できる。 (打撃のまとめ) ボールを捉える技術・センスは悪くないので、あとはプロ仕様の遠心力を生かしたスイングや体作りを進めるべきではないのだろうか。OPSの優秀さが示すように、選球眼とコンタクトのバランスはすでにプロ級の片鱗を見せているが、ISOを維持するためのパワーアップが急務だ。そういったことができた時に、どのぐらいのパフォーマンスを示せるかが鍵になりそうだ。 (最後に) ちょっと見ただけだと、守備・走塁・打撃共に、特徴が見え難い選手という印象を受けた。逆に、この未完成な状況で、才能の片鱗を魅せているといったところが魅力の選手なのかもしれない。ただし、個人的には、今がプロ入りの「旬」の時期なのかと言われると、正直ピンと来るものは感じられなかった。そのため、評価としては ☆(支配下級)にまでは至らなかったというのが率直な感想。それでも、打席に入る際の足場のならし方などをみると打撃へのこだわりが感じられ、そういった部分がプロ入り後の想像以上の成長に繋がって行くかもしれない。 (2025年夏 茨城大会) |