25ky-33
| 岡村 了樹(富島3年)捕手 173/77 右/右 | |||||||||||||||||||
岡村 了樹 が、プロのキャッチャーを続けていく上で、どうしても気になるポイントが2つほどあった。今回は、その点を主軸に、彼の今後について考えてみた。 (ディフェンス面) 俊敏な反応と機敏なフットワークが特徴だ。捕手としてのキャリアは浅いものの、キャッチングは安定しており、意識も高い。ボールを受け取ると立って返球するなど、決して雑なプレースタイルではなかった。また、リード面では積極的に内角を使い、そこを意識させた上で外角の球で仕留めるスタイルを確立している。 捕球から送球までの動作が素早く、二塁到達タイムは1.8秒台後半で、プロ級の送球を見せる。地肩の強さに加え、捕ってからの動きの速さも際立つ。ただし、いち早く投げようという意識が強く、しっかり型を作って投げられていない印象で、制球の精度はどうだろうか。 ただし、捕手として続けていく上には、2つの大きな懸念点が残る。一つは、バウンドする球を捕球する時に顔を背けてしまうクセだ。そのため、全身でボールを止める体勢ができず、しっかり受け止められるのか疑問が残る。もう一つは、投手をリードする際に全く野手の方を見ないで、投手との間だけで配球を決めている点だ。そのため、打者のちょっとした変化を読み取ったり、何かを得ようとする習慣がないまま、ここまで来てしまった部分がある。これは、センターカメラの映像を見て初めて気づくことができた点だ。 この2つの部分を、今後改善していけるかが大きな課題となる。一つは体に染みついたクセ、もう一つは相手を見る習慣を積めなかった部分。これらがプロの捕手としてどうなのか、という疑問が残るのだ。 (打撃内容) 3年夏の宮崎大会では、チームの3番打者として4試合に出場した。その内容は次の通り。ちなみに、盗塁も6個決めている。
この成績から算出されるOPSは1.333(出塁率.667+長打率.667)と非常に高く、限定的なサンプルながら総合的な攻撃力の高さを示唆する。また、BB%(四球率:33.3%)が高い一方、K%(三振率:16.7%)が低く、選球眼の安定がうかがえる。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 右打席から、前の足を軽く引いてかかとを浮かせて立っている。グリップを高めに添え、腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスという意味では、それなりといった感じだろうか。このバランスの良さが、BB%の高さに寄与し、ボールを見極める基盤を形成している可能性がある。 <仕掛け> 平均&遅すぎ 投手の重心が下る時に動き出し、リリース直前に再度ステップさせる「遅すぎる仕掛け」と、投手の重心が沈み切った時に動き出す「平均的な仕掛け」を採用するなど、複数のタイミング取り方を使い分けている節がある。仮に「平均的な仕掛け」となると、ある程度の確実性を兼ね備えた中距離ヒッターや、勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られる始動とタイミングとなる。この柔軟性が、ISO(孤立長打力:.167、打球の質を測る指標)の貢献を支え、二塁打を効率的に生んでいる。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 足を軽く上げて、少しベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球にもそれなりに対応する。夏の延岡学園戦では、オリックスに1位指名された 藤川敦也 のストレートを第一打席に捉え、続く打席ではスライダーを捉えて二塁打を放っていた。そういった球速の変化には対応できる器用さがありそうだ。 また、アウトステップを採用するように、内角への意識が強い打者なのかもしれない。踏み込んだ足元は、地面から早く離れやすい。すなわち、打球がセンターからレフト方向への引っ張り中心の打撃を好む傾向にある。今後の意識次第では、右方向への打球も可能ではあるように見えたが。この引っ張り傾向が、SLGの高さを支える一方、OPSの持続には多方向打撃の改善が鍵となりそうだ。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めていた点は良いところ。バットの振り出しは少し遠回りでバットが出てくる感じもするが、バットの先端であるヘッドは下がっておらず、ヘッドスピードも速いので、そこまで大きなロスは感じられない。 打球がセンターからレフト方向への偏りは感じられるものの、最後まで力強く振り抜けていた。このヘッドスピードが、ISOの値を押し上げ、打球の質を向上させている。 <軸> ☆☆☆ 3.0 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。ただし、踏み込んだ足元が早く動くので、開きが我慢できているとは言えない。また、軸足も前に傾きがちで、開きだけでなくツッコミにも注意したい。この軸の不安定さがK%の低さを助けている面もあるが、プロレベルではさらに安定化が必要だ。 (打撃のまとめ) 藤川敦也のストレートにも変化球にもきっちり対応するなど、打撃能力は一定のものがあると判断できる。また、4試合で6盗塁を決めるなど、捕手ながら確かな走力と積極性があるところは押さえておきたい。ヘッドスピードも鋭いが、基本的に打てるポイントは限られている印象を受けた。セイバー的に見てOPS1.333は優秀だが、BB%の高さが全体を支えており、軸の強化で持続的な攻撃力が期待できる。 (最後に) 相手に傾いた流れの時でも、率先してタイムなどを入れることができずに失点する場面が見られた。そういった部分は、捕手に転向して日が浅いなどのキャリアの無さを露呈した夏だった。何より、ワンバウンドの球に対し顔を背けてしまったり、相手打者を考察する習慣が薄いことは、捕手としては気になる材料だった。 フットワークや足回りの良い選手でもあり、脚力も肩もある。そういった意味では、何年か捕手をやらせてみた後に、他のポジションへコンバートされる可能性が高い選手ではないかと見ている。他のポジションへの大成の可能性も感じなくはないが、現状はまだ「旬」ではなく、個人的には育成枠ぐらいの評価に留まった。 (2025年夏 宮崎大会) |