25ky-32





清水 詩太(京都国際3年) 三塁 180/78 右/右





 「ショートを試して欲しい」





 1学年上の 藤本 陽毅(現・中央大)が病気で欠場した際にショートを守っていたのが、この 清水 詩太 である。ダイナミックな動きでありながら、送球が乱れないのが印象的だった。


走塁面:
☆☆★ 2.5

 一塁までの塁間は、右打席から4.4秒前後。このタイムを左打者に換算すると、4.15秒前後に相当する。基準である4.1秒に比べるとやや遅い。夏の京都大会でも、8試合で1盗塁と、
走力を前面に出すプレースタイルではなさそうだ。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 最終学年ではサードを守っていた。高校生のサードとしては、打球への反応や動きはまずまず。この選手の魅力は、ショートの守備でも見せたように、
長い距離でも送球が安定している点にあるのではないか。状況に応じてバウンドさせたり、体勢次第では横から送球することもある。ある意味、自由奔放なプレースタイルだが、それは豊富な練習量に裏打ちされ、最善のプレーを選択しているものと思われる。プロでは動き以上に送球で苦労する選手が多い中、この選手はそうした心配が少ない点からも、ショートのプレーを試す価値がある。逆に大型選手ゆえに、二塁のような細かい動きが求められるポジションは得意ではないように思える。無理な体勢からの送球でも乱れないのは、足腰や地肩の強さによるものだろう。

 走力に関しては、試合を観る限り際立つものは感じられなかった。むしろ守備では、基本に忠実とは言えないものの、
日本人離れしたプレーを見せてくれる。





(打撃内容)

 3年夏の京都大会5試合と甲子園での3試合の通算成績は以下の通り。右に左に打ち返す打撃が得意で、時にスタンドインできるパンチ力を秘める。

 打数  安打  二塁打  三塁打  本塁打  打点  四死球  三振  打率
26 9 1 0 1 8 4 3 .346


<構え> ☆☆☆ 3.0

 右打席でやや前の足を引いて構える。ただし、背番号が見える程度に上半身がクロス気味になっていることが伺える。腰の据わりは浅めで、後ろ足に体重を預ける癖があり、全体のバランスにはクセがある。それでも
両目でしっかり前を見据えており、錯覚を起こすことなく球筋を追えていた。

<仕掛け>
早め

 投手の重心が下がり始めるタイミングで動き出す「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる始動タイミングである。

<足の運び>
☆☆☆★ 3.5

 足を上げて回し込み、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」が取れており、速球にも変化球にも幅広く対応できそう。踏み込むことから、外角への意識が強いタイプと思われる。

 踏み込んだ前の足は、
インパクトの際もブレずに我慢できている。そのため、逃げる球や低めの球にも食らいつける。実際に打球はセンター、右、左とどの方向にもはじき返す。ただし、長打は引っ張って上手く巻き込めた時に出るのではないか。

<リストワーク>
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力みなくボールを呼び込めている。バットの振り出しもインパクトまでロスが少なく、ヘッドも下がらず広い面でボールを捉えている。そのため、打球はフェアゾーンに飛びやすい。スイングの最後までしっかり振り抜けている。

 打球に角度をつけて飛ばすタイプではないが、上手く引っ張って巻き越えた時にはスタンドインできるパンチ力はある。IsoP(長打率-打率、純粋な長打力).154は高校生としては上位水準で、潜在的なパワーを示唆する。ただし、スイングの力強さはまだ高校生レベルであり、プロ入り後は筋力を強化し、スイングを磨くことが求められる。

<軸>
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは控えめで、目線の上下動は平均的。体の開きは我慢できており、軸足も大きく崩れずにスイングできている。まだ
内腿の筋力が十分でない印象だが、ここを鍛えれば打球の鋭さや飛距離も向上しそうだ。

(打撃のまとめ)

 ある程度「間」を取ってボールを呼び込めており、
コンタクト能力は水準を満たしている。BB/K(四球と三振の比率、選球眼とコンタクトのバランス)1.33は優秀で、打率.346に加え出塁率(安打や四死球で出塁する割合).433、長打率(打撃の威力を示す指標).500、OPS(出塁率+長打率).933と、高校生離れした総合生産性を誇る。

 一方で、強く叩く、しっかり打ち返す部分ではプロレベルに達するには時間がかかりそう。ただし、体が仕上がれば、ボールを捉える根本的な技術はあるため、打撃でも一定の存在感を示せる可能性がある。


(最後に)

 現状、高校生の三塁手としては守備では上位クラスに入る。むしろ、DeNAのチーム編成を考えると、
ショートに挑戦し適性を見せる方が存在感を増すかもしれない。そのための身体能力と動きは十分にあり、個人的にはサードよりもショートとしての期待が高い。打撃に関しては、ボールを捉えるセンスは悪くないが、プロ仕様の体を作り、プロの球に負けないスイングを身につけるには数年かかりそう。走力・打力はまだ支配下登録レベルには達していない印象で、育成枠での評価は妥当だろう。「コンタクト能力のある遊撃手」になれれば、支配下登録から一軍戦力への可能性を秘めた素材ではないのだろうか。


(2025年夏 甲子園)