25ky-29
高田 庵冬(仙台育英3年)三塁 183/87 右/右 | |||||||||||||||||||||||||
恵まれた体格から繰り出されるパワーと、巨体からは想像できない動きの良さが特徴の 高田 庵冬。プロのスカウトなら、育ててみたいと思う球団は少なくないだろう。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁までの到達タイムは、右打席からやや抑え気味でも4.3秒前後。これは左打者に換算すると約4.05秒に相当し、プロの基準レベルを満たしている。全力で走れば、さらに0.1~0.2秒短縮できる可能性があり、純粋な脚力はかなり高いと言えるだろう。また、公式戦29試合で8盗塁(1失敗)の実績から、盗塁成功率(88.9%)も高く、技術も十分に持ち合わせていると考えられる。 技術補足: 走塁では、スタートの鋭さと状況判断が鍵。盗塁成功率の高さから、投手の癖を見抜く能力や加速のタイミングに優れていると推測される。プロでは、より高度な投手の牽制に対応する必要がある。 守備面:☆☆☆ 3.0 大型選手ながら動きが良く、特に難しい体勢からのゴロ処理でも確実にアウトにできる点で、地肩の強さがうかがえる。守備の精度にはまだ粗さがあるものの、鍛えればプロの三塁手として十分に通用する可能性を感じさせる。29試合で失策4個。プロの年間143試合に換算すると約20個の失策となり、さらなる精度向上が求められる。 技術補足: 三塁手としての反応速度は良好だが、送球の安定性向上が必要。失策数はプロ基準では多めだが、強肩を活かしたスローイングの精度を磨けば、プロでも三塁手としての活躍が見込めそうだ。 打撃内容 甲子園では12打数5安打と結果を残したが、チームでは下位打順にとどまっている。そのため、公式戦通算成績から傾向を分析する。成績表(公式戦29試合)
セイバーメトリクス補足:OPS(出塁率+長打率): .829は高校生としては優秀な数値で、長打力と出塁能力のバランスを示す。プロ基準(.800以上が上位)には達しているが、四死球が少ないため出塁率向上の余地がある。 ISO(純粋長打率): .230は強打者として高い長打力を示し、5本塁打がこの数値を押し上げている。プロの速球や変化球に対応できれば、さらに長打を量産可能。 構え:☆☆☆★ 3.5 右打席で前足を軽く引き、グリップを高めに構える強打者スタイル。腰の据わり具合、両目でボールを捉える姿勢、全体のバランスはまずまず。強打者らしい打席の雰囲気も悪くないが、構え時に「揺らぎ」のような動きが少なく、やや固い印象を受ける。構えの静けさは集中力を高める一方、動的なリズム感が不足。プロの球に対応するため、軽い体重移動やリズムを意識した調整が有効。 仕掛け:遅すぎ 開いていた足を一度ベース側に踏み込み、リリース直前で本格的に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。プロレベルの球を木製バットで打つには、通常の筋力やヘッドスピードでは遅すぎる。しかし、彼のような強靭なヘッドスピードを持つ選手なら、このタイミングでも打撃が成立する可能性はある。壁にぶつかるまでは、無理に始動タイミングを変更する必要はないだろう。 遅い仕掛けはタイミングの取りづらさを補う強靭なスイングスピードに依存。プロでは投手の変化球に対応するため、ピッチクロックを意識した微調整が必要。ちなみに、始動を早めて打つこともあり、甲子園での開星戦での本塁打などは、始動を早めて対応していた。そういったタイミングの取り方は、複数持っているのかもしれない。 足の運び:☆☆ 2.0 足をわずかに浮かせ、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」が短いため、狙い球を絞り、逃さない「鋭さ」が求められる。インステップの動きから、外角への意識が強い選手と推測される。インステップは外角への対応力を高めるが、内角の速球に対して窮屈になるリスクがある。ステップ幅の調整や内角への意識強化が課題。 リストワーク:☆☆ 2.0 打撃準備の「トップ」を作るまでは自然体で力みがない。ただし、始動が遅い分、バットを引くタイミングも遅れないよう注意が必要。バットの振り出しでは腰が早く開く傾向があり、インパクトまで遠回りになりがち。踏み込んだ足元も早く地面から離れるため、基本的に引っ張り意識が強い打者と考えられる。 逃げる球や低めの球への対応が課題となるだろう。腰の開きを抑え、バットの軌道をコンパクトにする練習が必要。低めや外角の変化球に対応するため、リストの柔軟性とスイングの調整力を磨くべき。 軸:☆☆☆ 3.0 足の上げ下げが静かなため、目線の上下動が少なく、錯覚を起こしにくい点は良い。しかし、体の開きが早く、踏ん張りが不足するため、外角の逃げる球や低めの球に対応しにくい。また、インステップで踏み込むため、内角のさばきも窮屈になりがち。無理にさばこうとして軸足が崩れることも多く、調子の波が大きいタイプかもしれない。 軸の安定性を高めるには、下半身の強化と踏み込み時の体重移動のコントロールが重要。外角低めの球に対応する柔軟なスイング軌道の習得が求められる。 打撃のまとめ パワフルな打撃で飛ばせる力は彼の最大の魅力。ISO.230が示す長打力は高校生レベルでは傑出しているが、四死球の少なさ(出塁率.312)から選球眼の向上が必要。対応できるコースが限られており、プロのレベルに対応するには時間がかかると予想される。それを覚悟でじっくり育てたい球団に指名してほしい。 最後に 技術的には課題が多いものの、飛ばせる能力とボールを見極める目は持ち合わせている。素直にバットに力を伝えられるスイングを習得できれば、プロで大成する可能性がある。守備や走力も一定レベルあり、我慢して起用できる強みがある。高校生と大学生の違いはあるが、新井 貴浩(現広島監督)の駒大時代を彷彿とさせるものがある。 評価としては育成枠での指名が妥当と思われるが、どこかの球団が指名する可能性は高い。個人的には、支配下級(☆)の評価は難しいが、こういう選手を育ててあげてこそプロといった気がしている。時間は5年ぐらいはかかるかもしれないが、その将来性は高いとみている。 (2025年夏 甲子園) |