25ky-24


 




遠矢 文太(高川学園3年)捕手 180/90 右/右 
 




 「バッティングは素晴らしい」




 プロ注目の江藤蓮(未来富山)投手に対し、遠矢 文太が3安打を放ち存在感を示した。その捉えた球というのが、緩いカーブ、チェンジアップ、ストレートと異なる球種を見事に打ち砕いたのは印象的だった。県大会まではノーマークの選手だったが、甲子園での活躍で強烈なインパクトを残した。


(ディフェンス面)

 ミットをしっかりと投手に示し、的を付けやすく構えられる点は強みだ。
投手にとって投げやすい捕手とはどういうものかを常に意識してプレーしている選手と言えるだろう。そういった意味では、投手の気持ちを汲み取ったり、相手打者のちょっとした変化にも気がつく、そういった捕手としての適正を感じさせる。

 一方、際どいコースのキャッチングも悪くないが、足回りがやや重く、ワンバウンドの処理や
フットワークに重苦しさを感じるのは否めない。また、低めの球を上から捕りにいく傾向があり、落ちる球への対応は気になる点だ。

 送球に関しては、小さなモーションで素早く投げることを意識しているようだが、テイクバックが小さく、しっかりとした投球フォームが作れていない印象を受ける。そのため、手だけで投げているように見え、
地肩の強さもやや物足りなく映った。その点を考慮すると、社会人やプロレベルでは、捕手以外のポジションで勝負することになるかもしれない。





打撃評価

大会
打数
安打
二塁打
本塁打
打点
四死球
三振
打率
出塁率 (OBP)
長打率 (SLG)
OPS
IsoP
三振率
山口県・中国地区大会(通算)
74
24
不明
0
23
11
10
.353
.412
.426(推定)
.838(推定)
.073
12.0%
2025年夏 甲子園
8
6
2
1
7
1
1
.750
.778
1.000
1.778
.250
11.1%


  2025年夏の甲子園で8打数6安打、2二塁打、1本塁打、7打点、1四死球、1三振、打率.750 OPS1.778と圧巻の活躍を見せた。一方、1年秋からの山口県・中国地区大会の通算成績は74打数24安打、0本塁打、23打点、11四死球、10三振、打率.353、OPS.838(推定)と、安定したコンタクト力を発揮。セイバーメトリクス的に見ると、甲子園での出塁率.778とIsoP.250は高い長打力と選球眼を示すが、地区大会のIsoP.073は長打力不足を露呈。低三振率(甲子園11.1%、地区大会12.0%)と地区大会での23打点は、チャンスでの勝負強さとコンタクト力を裏付ける。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに構える強打者らしいスタイル。腰はしっかりと据わり、両目で前を見据える姿勢と全体のバランスが優れている。

<仕掛け> 遅過ぎ

 投手の重心が下がるタイミングで足をベース側につま先立ちさせ、リリース直前に動き出す「遅過ぎるの仕掛け」を採用。甲子園の低三振率(11.1%)と地区大会の12.0%は
選球眼の良さを示すが、プロレベルの速球(150km/h以上)を木製バットで打ち返すにはタイミングの改善が必要かもしれない。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 小さくステップし、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動から着地までの「間」が短く、狙い球を逃さない鋭さが求められる。甲子園ではカーブ、チェンジアップ、ストレートに柔軟に対応したが、地区大会の長打不足(本塁打0)はタイミングの限界を示す。内角への意識が強く、地区大会の23打点はチャンスでの勝負強さを物語る。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」を早めに作り、始動の遅さを補う。バットの振り出しはインサイドアウトの軌道でロスが少なく、内角球にも肘を畳んで対応可能。甲子園の本塁打は、低めのチェンジアップをボールの下にバットを潜らせ、角度をつけた好例。地区大会のIsoP.073はパワー強化の必要性を示すが、コンタクト力はプロ基準に近い。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが静かで、目線の上下動が少ない。体の開きを我慢し、軸足も崩さず振り抜ける。甲子園の低三振率と長打、地区大会の安定した打率は、この軸の安定性が支えている。


打撃のまとめ

 始動の遅さやバットの入れ方から、確実性よりも破壊力を重視したスイングと言える。甲子園での打率.750(8打数6安打)は、ドラフト指名級の素材であることを示している。ただし、始動の遅さは彼なりのタイミングであり、現時点では無理に修正する必要はないだろう。プロや社会人レベルの速球に対応するためには、タイミング調整の柔軟性が求められる。今後、必要に応じて微調整していけば良いだろう。


最後に

 遠矢文太は強打者らしい打撃と、捕手としての細やかな意識を兼ね備えた選手だ。対応力とパワーを併せ持つ打撃は高校トップレベルと言えるが、プロの捕手としては
肩の強さに課題がある。そのため今後は、打撃でのアピールが鍵となるだろう。

 甲子園でホームラン直後の打席でピッチャーゴロを打ちながら、最後まで全力で一塁に駆け抜けた姿は、日頃の真剣な姿勢を物語る。

 このひたむきさは、さらなる成長を予感させる。今後、強打を武器に進む上で、ポジション適性(外野や一塁が現実的か)や高いレベル投手への対応力が課題だ。大学進学は打撃と守備と向き合う良い選択肢となるだろう。これからも、彼の可能性を追い続けたい。


(2025年夏 甲子園)