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藤田 一波(智弁和歌山3年)中堅 176/76 右/左 





 「高卒プロがあるとすれば彼か?」





 智弁和歌山のタレント揃いの野手陣の中でも、高卒でのプロ入りが最も期待されるのは、藤田 一波 かもしれない。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5

 一塁までの塁間を左打席から約4.0秒で到達。このタイムは、プロで足を売りにするにはやや物足りないが、ドラフト候補としては 
中の上位クラスの脚力と言える。新チーム結成後の32試合で盗塁15個とまずまずの成績を残しており、一番打者として脚力を活かしたプレーができている。

守備面:
☆☆☆☆ 4.0

 打球への反応、落下点までの入り、次のプレーを想定した捕球など、高校生としては上位クラスのセンター。ただし、肩の強さは標準的で、プロでアピールできるほどの強肩とは言い難い。しかし、センターは遠くに長く投げる肩よりも、中継プレーに素早く正確に返球する能力が重要と考えれば、そこまで悲観する必要はないだろう。また、横浜高校戦で魅せたスーパーキャッチのように、非常に広い守備範囲を誇っている。

 走力や地肩に関しては、突出した素材とは言えない。そのため、高卒プロというよりは大学進学向きの選手とも思える。智弁和歌山の野手陣の中では完成度と総合力の高さで今回取り上げたが、選手としてのポテンシャルでは、2番打者の奥雄大の方がよりスケールの大きさを感じさせる。






打撃内容

 3年春のセンバツで決勝まで進んだ藤田一波は、
5試合で20打数9安打、0本塁打、1打点、1盗塁、打率.450 という好成績を残した。特に注目すべきは、新チーム結成後の113打数で三振0、センバツでも三振2個にとどめた高いコンタクト能力だ。

構え:
☆☆☆★ 3.5

 左打席で前足を軽く引き、グリップは平均的な高さで捕手側にやや引いて構える。腰の据わりや全体のバランスは標準的だが、
両目でしっかりと球筋を追える視線が確保されており、錯覚なくボールを捉える構えができている。

仕掛け:遅すぎ

 投手の重心が下がり始めると、開いていた足をベース側に移動させ、つま先立ちになる。本格的な動き出しは投手のリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用している。日本人の筋力やヘッドスピードを考慮すると、この遅い始動は厳しい印象があるが、本人なりのタイミングの取り方とも言える。スピード負けしない限り、現時点では過度に悲観する必要はないだろう。打者としてのタイプは、対応力を重視したアベレージヒッターの特徴が強い。

足の運び:
☆☆☆ 3.0

 小さくステップし、真っ直ぐ踏み出す。始動から着地までの「間」が短いため、狙い球を絞り、それを逃さない対応が求められる。内角・外角問わず幅広くボールをさばくタイプと考えられる。

 踏み出した足は
インパクト時に動かず安定しており、逃げる球や低めの球にも食らいつける。実際、レフト方向への打ち返しは巧みだ。

リストワーク:
☆☆☆☆ 4.0

 打撃準備の「トップ」を早めに形成でき、始動の遅さを補っている。
バットの振り出しは内からバットが出てきて、インパクトまでのロスが少ない。バットのヘッドも下がらず、広い面でボールを捉えられる。

 
内角の球にも肘をうまくたたんで対応でき、難しい球を捉えるのが特別に上手いわけではないが、自分のポイントに来た球を高い確率で仕留めるスイングが特徴だ。

軸:
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動が少ない。体の開きを我慢でき、軸足も安定しているため、調子の波は小さいだろう。軸足の
内ももの筋力がさらに強化されれば、打球の強さや飛距離が向上する可能性がある。

打撃のまとめ

 三振の少なさから伺える高いミート力と、
打てる球を確実に仕留めるスイング軌道の良さに非凡な才能を感じる。肉体的にはまだ発展途上だが、段階を踏んで成長できる可能性を秘めた打者だ。


最後に

 常識的には大学進学向きの選手とも思えるが、非凡なミートセンスと打撃技術に加え、走力や守備力も兼ね備えている。この総合力から、高卒でのプロ入りも視野に入れられる選手と言える。夏までのさらなる成長を見守りたい。


蔵の評価:
追跡級!


(2025年 選抜大会)