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森 陽樹(大阪桐蔭3年)投手 190/90 右/右 | |
スーパー1年生として注目された 森 陽樹 だが、その後はやや伸び悩んでいる印象が否めない。最後の夏、大阪偕星戦では9回を完封したが、投球内容には依然として不安が残る。以下、技術論とセイバーメトリクスの観点も織り交ぜながら、彼の投球を分析する。 投球内容 3年夏の大阪大会では、3試合に登板し、15回を投げて6安打、2四死球、18奪三振、防御率1.20 を記録。WHIP(1イニングあたりの安打+四死球)は0.53と優秀で、K/9(9イニングあたりの奪三振)は10.8と高い奪三振能力を示す。一方で、BB/9(9イニングあたりの四死球)は1.2と制球力は安定しているが、以下に示す技術的課題から、真の支配力には疑問が残る。 ストレート:140~147km/h(☆☆☆★ 3.5) 球速は、下級生時からほぼ横ばい。時折指にかかったボールの勢いは素晴らしいが、制球にバラつきがあり、大胆に投げ切れていない。高校野球の広いストライクゾーンに助けられ、BB/9が低く抑えられているが、ストライクゾーン内の高めへの失投が散見され、防御率ほど完璧ではない。真の制球力の向上は今後の課題だ。 横変化:スライダー(☆☆☆ 3.0) 横に大きく変化するスライダーでカウントを整えるが、空振りを誘う威力は不足し、決め球としての信頼性はまだ高くない。 縦変化:スプリット(☆☆ 2.0) 縦の変化球は時折投げるが、信頼度が低く使用頻度も少ない。打者から振ってもらえないことも多く、打者を仕留める決め球としては機能していない。 緩急:カーブ(?) 以前は緩いカーブを投げていたが、この試合では確認できず。緩急による打者のタイミング崩しは現状ほぼ見られない。 その他 (☆☆☆★ 3.5) 牽制は鋭さが少なく、走者を刺す積極性は低い。ただし、投球の「間」を変える工夫は見られ、淡々と投げる印象を与えつつ、考えて投球する能力を持つ。 投球フォーム ノーワインドアップから足を引き上げる勢いはまずまずで、フォーム前半のエネルギー引き出しはリリーフ向きの資質を示す。しかし、軸足一本で立つ際、膝から上が直立しがちで、無理にバランスを取ることで余計な力が入り、制球を乱す要因に。この点が、WHIPの優秀さにもかかわらず高めの失投を生む一因と考えられる。 広がる可能性(☆☆★ 2.5) 重心を下げて前に倒れ込むフォームのため、お尻がバッテリーライン上に落ちがちで、体を捻り出す動作が制限される。これにより、カーブやフォークの習得は難しいが、広くステップすることで着地に粘りを作れており、スライダーなど横変化球のさらなる向上は期待できる。 ボールの支配(☆☆★ 2.5) グラブを内に抱えきれず、軸がブレやすいため、左右のコントロールがアバウト。足の甲での地面の押しつけも爪先中心で、ボールが高めに浮きやすい。「球持ち」は前方でリリースされており、指先での微妙な操作が可能な点が救い。 故障のリスク(☆☆☆ 3.0) お尻が落ちないことで体を捻り出すスペースが不足するが、カーブやフォークをほとんど投げないため、肘への負担は少ない。腕の送り出しも肩に優しく、力をセーブする投球スタイルから疲労蓄積のリスクは低い。 実戦的な術(☆☆★ 2.5) 着地の粘りにより、打者にタイミングを合わせられにくい一方、ボールの出どころが見えやすいため、球筋が読まれやすい。縦の変化球の空振り率が低く、打者に振ってもらえない課題がある。体重が前に乗り切れていないのは、ステップの広さによる後方への体重残留が原因か。今後「体重移動」の改善が求められ、これが進めばK/9や空振り率の向上が期待できる。 投球のまとめ 最後の夏では、ストレートとスライダーを中心としたシンプルな配球で丁寧に投げる姿勢が印象的。WHIP0.53、K/9 10.8と数字は優秀だが、制球の不安定さや高めの失投が被打リスクを高め、FIP1.50前後が示すように防御率ほどの安定感はない。スペックは高いが、上位評価には慎重さが求められる。 フォームのまとめ 投球フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)のうち、「開き」と「体重移動」に課題が残る。制球に関わる動作の不安定さが、BABIPの高さや高めへの失投傾向に表れている。投球の幅を広げるには課題が多く、リスクの高いフォームと言える。 最後に 森陽樹の伸び悩む姿は、大阪桐蔭の先輩・藤浪晋太郎のプロ入り後の苦悩と重なる部分がある。高いスペックを持ち、K/9の高さが示す奪三振能力は魅力的だが、制球力や投球の幅の課題を克服できる球団でなければ、高評価は難しい。課題を克服できれば、世代屈指の素材として主力投手への成長が期待できるが、現状では3位前後の評価が妥当か。リスクを考慮し、個人的にはやや慎重な評価に留めたい。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2025年夏 大阪大会) |
森 陽樹(大阪桐蔭2年)投手 190/88 右/右 | |
150キロに迫る勢いのあるボールを投げ込む 森 陽樹 。確かにボールに力はあるのだが、微妙に決まって欲しいところに決まらない制球力が気になっている。 (投球内容) ノーワインドアップから投げ込んでくる本格派で、秋は4試合で 20回2/3を投げ、14安打、8四球、27三振、防御率0.87 という数字を残している。 ストレート 145キロ~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0 球速は常時140キロ台後半ぐらい出せる能力があり、特に打者の手元までボールの強さは一級品です。その反面、やや真っ直ぐは全体に高めに集まりやすく、微妙に決まって欲しい時にしっかり投げきれないアバウトさがあるところが気になります。一冬越えて、そういった部分が改善されてくるのか気になるところです。高めの真っ直ぐでは吊られて空振りが奪えますが、基本的には球威で詰まらせる感じの球質に思えました。 変化球 カット・スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5 カットボールでしっかりカウントを整えて来られることが良いところで、さらに緩いスライダーやカーブなども織り交ぜてきます。フォークなども投げるのですが、振ってもらえない見極められてしまうことが多いのは確かです。この球の精度も、春までの大いなる課題ではないでしょうか。 その他 牽制はあまり鋭いものを入れないことが多いのですが、時には鋭く走者を刺しにきます。投げるタイミングも、いつも変えているわけではなさそうですが、時々長く持ったり速く投げたりと「間」を変えて投げてきます。淡々と投げていそうなイメージを受けますが、結構考えて投げていました。 (投球のまとめ) 収まりが微妙に悪い制球力や縦の変化を振ってもらえないなどの課題があり、この辺が改善されてくると、手がつけられなくなる恐れがあります。現時点でも有力な1位候補ではあると思いますが、まだまだ絶対的な感じはしません。そういった部分がどう最終学年で変わってくるのか? 見極めて行きたいところです。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはある投手です。意外にフォーム導入部からのエネルギー捻出が高く、リリーフ的な適性も高い投手なのかもしれません。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びがちで力みが感じられます。それでも、適度なバランスは保ててはいますが。 広がる可能性 ☆☆★ 2.5 前に少し倒れるように重心を落としてくるので、お尻の落としはどうしても甘くなってしまいます。したがって身体を捻り出すスペースは充分ではないので、カーブやフォークの曲がりは鈍くなりがちです。 「着地」までの地面の捉えは平均的で、身体を捻り出す時間も並程度です。そういった意味では、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げていくことになるのではないでしょうか? ボールの支配 ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。したがって軸はブレにくく、両サイドへのコントロールはつけやすいです。その一方で、足の甲での地面の捉えが浮いてしまい、浮き上がろうとする力を抑えられず、ボールは上吊りやすいです。「球持ち」は前で放していて悪くはないのですが、その割に微妙なコントロールがつかないのは、指先の感覚があまり良くないのかもしれません。 故障のリスク ☆☆☆ 3.0 お尻の落としが甘い割に、結構フォークやカーブを織り交ぜてきます。そういった意味では、窮屈になりやすく、肘などへの負担が心配になります。今後、フォークを使う頻度が多くなると、その点は気になる部分です。 それでも、腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担は少なそうです。少し力んで投げる傾向があるので、その辺で疲労を溜めやすい恐れがあります。 実戦的な術 ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは並程度で、ボールの出どころも平均的です。それほど、打者が苦になるような嫌らしさはフォームにはありません。腕は強く振れているのですが、ボールが見やすいせいか? 思いのほか打者が手を出さないのは気になるところです。前に体重移動はできている感じですが、足の甲が地面から離れてしまっているので、その効果は限定的なのかもしれません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に改善の余地があるように思います。足の甲の押し付けが浮いてしまい、高めに集まりやすいこと。お尻のスペースが確保できないことでの、肘などへの負担などが心配されます。将来的にも、武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙で、総合力で勝負してゆくタイプになるのではないでしょうか。 (最後に) 順調に能力を高めていければ、秋には1位の12名になる可能性は高いと思います。ただし、そこからプロで通用する投手になるのには、もう何段階かあって、そこの部分で苦労するかもしれないと思うところがあります。そういった不安を、高校の間にどこまで払拭できるのか? 注意深く、見守って行きたいところです。 (2024年夏 甲子園) |