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中山 優人(水戸啓明3年)投手 182/65 右/左 
 




 「なんだか大貫みたいだな」





 中山 優人 の投球を見ていると、長くベイスターズで活躍している 大貫晋一 投手を彷彿とさせるものがある。果たして彼も、プロで一流の投手になりうるのか? 考えてみた。


(投球内容) 

 それほど腕を上から叩く感じではなく、少しスリークォーター気味に振ってから来る。この夏の大会の成績は



投球回数
被安打
四死球 奪三振  防御率
17 13 2 21 1.59


 この成績は、WHIP(イニングあたりの被安打と四球の合計)が0.88と極めて低く、ランナーを溜めにくい安定した投球を示しており、制球力の基盤が固いことを物語っている。また、K/9(9イニングあたりの奪三振数)が11.12と高く、空振りを量産するポテンシャルを裏付け、一方BB/9(9イニングあたりの四球数)が1.06と低く、コントロールの良さが光る内容だ。

ストレート 135キロ~140キロ 
☆☆★ 2.5

 まだまだ
球威に欠ける球といった感じで、球速的にもドラフト指名選手としては物足りない。ボールは両サイドに散らせているが、高めに浮いた球を狙い打たれることが、こうしたWHIPの低さを支えるコントロールの裏返しでもある。

横変化 スライダー 
☆☆ 2.0

 小さく横滑りするスライダーでカウントを整えるが、やや高めに抜けてしまうこともあるが、両サイドには散っている。もう少し、精度・切れを高めたい。

縦変化 チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 フォークのような、
落差のあるチェンジアップで空振りが奪えている。ただし、まだ振ってもらえないことも少なくない。しかし、この低めに沈む球を意識させることで、高めの球筋を活かすことができており、K/9の高さを支える大きな要因となっている。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは、1.0~1.1秒ぐらいとまずまず。牽制も、マウンドを外すだけでなく、積極的に鋭いものを入れて来る。ボールもじっくり持つので、走者としてはスタートが切りにくい。

(投球のまとめ) 

 まだ、球威に欠ける球が高めに集まりやすく、その球を打ち返されてしまうことが多い。それでも、両サイドには散らすコントロールがあり、低めに高い確率で沈むチェンジアップが、大きなアクセントになっている。このバランスが、全体のWHIPの低さとK/9の高さを生み出しており、真っ直ぐに磨きがかかれば、両サイド・高低を生かした、幅広い投球も可能になりそうだ。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から将来像を考えてみたい。ノーワインドアップから、ゆったりと高い位置までジワ~と足を引き上げて来る。そのため、自分の「間」を大切にした、先発の方が合う選手に思える。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸びがちだが、バランスを保っては立てている。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 お尻の一塁側への落としには甘さを残しているので、カーブやフォークといった球種が投げられないほどではないが、その変化は鈍くなりやすいのでは? 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。そういった意味では、曲がりの大きな変化よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げて行くことになりそう。ただし、すでにチェンジアップの落差は非凡なので、その点は大いなる強みとして活かして行きたい。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは
最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。しかし、足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力は抑えられていない。したがって力を入れて投げると、ボールが高めに集まりやすい。現状「球持ち」は良いので、指先の感覚は良さそう。体ができてくれば、制球に苦しむようなタイプにはならないのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すが、カーブやフォークを多く投げない限りは窮屈になる機会も少なそう。腕の送り出しを見る限りは、肩への負担も少ないのでは。決して力投派でもないので、疲労を溜めやすいといったこともなさそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆ 2.0

 「着地」までの粘りが平凡で、ボールの出どころも少し
開きが早く見える。そういった意味では、打者からは合わされやすいフォームだと言えそう。腕の振りもまだ弱く、打者としては吊られ難い。ボールにもまだ充分に体重を乗せて投げられていないので、打者の手元まで球威に欠け、投げ終わったあとの地面の蹴り上げも乏しかった。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ良いが他には課題を残す。高めに集まりやすい球筋は気になるが、体ができてくれば制球で苦しむタイプではなさそう。故障のリスクが少ないのも、新しい技術を積極的に試せる助けとなるはず。あとは、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかが問題になるが、すでにチェンジアップの落差は非凡なので、この部分を活かすようなピッチングスタイルを確立したい。


(最後に) 

 まずは、プロで戦えるだけの体作りからはじめる段階。そういった体を作るのには、3年ぐらいはかかりそうな体つき。それができてきた時に、どんなボールが投げられ、ピッチングができるのか? 個人的な将来像は、冒頭にも書いたように大貫晋一(DeNA)のようなタイプだと見ている。現時点では、
(支配下級)の評価はできないが、数年後、この段階でのプロ入りが正しかったのか答えが出るのではないのだろうか? センスの良い投手だけに、それを活かせる土台を作れればと。


(2025年夏 茨城大会)