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モレチ・アレシャンドレ(誉3年)投手 190/84 右/右 
 




 「単なる素材型ではない」





 父はブラジル人で、母はイタリア人のハーフであるモレチ・アレシャンドレ。彼は恵まれた体格を活かしたパワーピッチャーというイメージが強い。しかし、その投球には肉体の資質だけでなく、技術の裏付けが隠されていた。


投球内容

 3年夏の愛知大会では、3試合すべてリリーフで登板。
3回1/3イニングを投げ、1安打、4四死球、7三振、防御率0.00 という成績を残した。全身を大きく使って投げ込む力投派だ。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 この夏の最速は147キロを記録。打者の手元でグンと伸びるような球質や、鋭く切れるような空振りを誘う球ではないが、
ボールの勢いと球威で打者を詰まらせる強さが自慢の投手だ。ボールはまだ荒々しく、ストライクゾーン内に投げ込むことに主眼を置いたシンプルなピッチング。細かい技術の習得はこれからの課題で、まさに素材型の投手と言える。

横変化 スライダー・カットボール 
☆☆☆ 3.0

 ストレートが荒れる分、130キロ台で小さく横に変化するカットボールと、120キロ台のスライダーでカウントを整える。空振りを誘うというよりは、カウントを有利にするための変化球が主体だ。

縦変化 フォーク 
☆☆ 2.0

 フォークらしき縦の変化球も投げるが、沈むものの打者に空振りを誘うには至っていない。現状では投げられる程度で、ここぞという場面で頼れる変化球にはなっていない。

緩急 ?

 試合を見る限り、緩いボールは確認できなかった。リリーフ登板ということもあり、力で押すピッチングが中心のようだ。

その他 
☆☆☆ 3.0

 クイックモーションは1.05~1.15秒で基準を満たす。走者を刺す鋭い牽制は見られなかったが、フィールディングでは落ち着いてボールを処理していた。走者への目配せも怠らず、ただ投げるだけではない姿勢が伺える。投球の細かい駆け引きはまだ見られないが、指導次第で段階的に技術を身につけられる選手ではないだろうか。

投球のまとめ

 現状では、肉体の資質に頼ったピッチングと評価されても仕方ないだろう。しかし、彼のフォームを見ると、単に才能に頼ってきた選手ではないことが伺える。確かに時間のかかりそうな素材ではあるが、いずれそれが形になることを予感させる。





投球フォーム

 セットポジションから投げ込むフォームだが、ランナーがいなくても軸足に体重を乗せる前に重心を沈め、クイックモーションのような動きで常に投げ込んでくる。

広がる可能性 
☆☆☆★ 3.5

 深く一塁側に落とすフォームで、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種でも
十分なスペースを確保できている。そのため、カーブやフォーク変化球の習得において無理が感じられないのは強みだ。ただし、現状では着地までの地面の捉え方が平均的で、体を捻り出すための十分な時間が確保できていない。この点がフォークのキレに影響している可能性がある。しかし、この時間を確保できるようになれば、変化球を武器にできる可能性が感じられる。

ボールの支配 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くに留められており、外に逃げる遠心力を抑えられている。そのため、両サイドへのコントロールは安定しやすいだろう。また、
足の甲で地面をしっかり捉えており、浮き上がる力も抑制されている。あとはリリース時にボールをもう少し押し込めるようになれば、高めに抜ける球も減りそうだ。土台は良好で、体が完成しリリースが安定すれば、制球の不安も解消されていきそうである。

故障のリスク 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせているため、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈さは感じにくい。その意味では、肘への故障リスクは低い。一方で、ボールを持つ肩がやや上がり、グラブ側の肩が下がるなど、腕の送り出しには少し負担がかかっている。ただし極端ではないため、肩のケアに留意すれば問題は少ないだろう。現状は力投派で力む傾向があるため、疲労が溜まりやすい。疲労が蓄積すると、肩や肘だけでなく思わぬ部位の故障リスクが高まるため、注意が必要だ。

実戦的な術 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの地面の捉え方は平均的だが、
ボールの出どころがやや早い。そのため、縦の変化球が見極められやすく、その効果は限定的だ。強みである尋常でない腕の振りが十分に活かせていない。股関節の可動域を広げ、「球持ち」を改善できれば、体重がしっかり乗った球を打者の手元まで投げ込めるようになりそうだ。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)では、特に
「開き」に課題があり、他の動作にも改善の余地が残る。制球を司る動作自体は悪くないため、体がしっかりしてくれば安定するだろう。故障リスクも現時点では大きくない。力まずに投げられるようになれば、この点もさらに改善しそうだ。体を捻り出す時間をフォームに確保できれば、曲がりの大きい変化球の習得も期待でき、将来的に武器となる球を生み出せる可能性がある。そういった意味で、非常に可能性を感じさせるフォームと言える。


最後に

 現状は未完成で、育成枠での指名が現実的と考えられる。しかし、欧米人の両親を持ちながら、お尻をしっかり一塁側に落とす「ヒップファースト」のフォームを習得している点は、意識的に取り組んだ結果と推察される。また、グラブを最後まで体の近くに留めたり、足の甲で地面をしっかり捉える動作は、闇雲に投げる選手では身につかない技術だ。これは自分の頭で考え、努力して習得した証と判断する。そのため、この選手は思考力と努力を兼ね備え、段階的に技術を身につけられる器用さを持つと評価する。肉体の資質の高さと技術が噛み合えば、爆発的な力を発揮できるだろう。夏のパフォーマンスは育成指名レベルだが、その高い将来性を評価し、あえて支配下級(☆)の評価をしたい。今年の候補の中でも、最も大化けが期待できる存在ではないだろうか。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2025年夏 愛知大会)