25kp-31
中野 大虎(大阪桐蔭3年)投手 180/79 右/右 | |
中野 大虎 を下級生の頃から何度も見てきたが、ドラフト候補として意識したことはなかった。そのため、2025年夏に生で観戦した際も、有力な大学に進学するものだと思っていた。そんな彼がプロ志望届を提出したと聞き、驚いた。このレポートでは、彼の投球内容とフォームを詳細に分析し、セイバーメトリクスの視点を取り入れながら、その実力と将来性を評価する。 投球内容 2025年夏の大阪大会では、大阪桐蔭のエース兼主将としてチームを牽引。3試合に登板し、17回を投げ、16安打、6四死球、14三振、防御率1.59 を記録した。1イニングあたりの走者許容率(WHIP)は1.29((16安打 + 6四死球) ÷ 17回)で、高校生としては優秀だが、プロレベルでは平均的だ。この数値は、ボールがやや上吊る傾向が被安打につながっている可能性を示唆する。 ストレート 140キロ前後~MAX147キロ ☆☆☆ 3.0 ドラフト候補としては平均的な球速だが、ボールがやや平面的な印象を受ける。特に力んで速い球を投げようとすると、ボールが上吊る傾向が見られ、これがWHIPの数値に影響している可能性がある。9イニングあたりの奪三振率(K/9)は7.41((14三振 × 9) ÷ 17回)で、空振りを誘う球種が少ない中ではまずまずだが、プロで競うにはさらなるキレの向上が必要だ。 下級生の頃は低めに丁寧に集める好投手という印象が強かったが、現在は両サイドに投げ分け、勝負どころで内角を厳しく突く強気なスタイルが目立つ。6月の関東一高との交流戦では、マイガンで140キロ前後だった。 横変化 スライダー ☆☆☆ 3.0 大きく横に滑るスライダーを投げ、そのキレは悪くない。空振りを誘うほどの威力はないが、右打者に対してカウントを整えるのに有効だ。この球種が四死球を抑える一因となり、9イニングあたりの四死球率(BB/9)3.18((6四死球 × 9) ÷ 17回)という安定した制球力に寄与していると考えられる。 縦変化 チェンジアップ・フォーク? ☆☆☆ 3.0 縦の変化球を積極的に投球に取り入れている。この球がフォークなのかチェンジアップなのか、あるいは縦スラなのかは判然としなかった。空振りを誘うより、相手打者に的を絞らせない効果があり、左打者に対して真っ直ぐとのコンビネーションで機能している。ただし、K/9の数値から見ると、さらなるキレの向上が奪三振率の向上に繋がる可能性がある。 緩急 ? 夏の大会ではカーブを確認できず、6月の観戦時にもカーブらしき緩い球は見られなかった。投球が単調に見えるのは、緩急による奥行きが少ないためで、これが打者に球筋を読まれやすい要因かもしれない。WHIPをさらに下げるには、緩い球種の習得が有効だろう。 その他 ☆☆☆★ 3.5 豊富な経験から、マウンドさばきは洗練されている。クイックは0.95~1.05秒と素早く、牽制も巧みで、走者を出しにくい点がWHIPの優秀さに寄与している。ピンチでも冷静に牽制を挟むなど、熱い投球スタイルの中にも冷静な一面を持つ。ただし、細かい制球力やボールを長く持って相手を焦らす投球術は見られず、BB/9のさらなる改善にはこうした技術の向上が必要だ。 勝負どころで内角を厳しく突くハートの強さが光る。フィールディングは動きが良いが、一塁まで走ってアンダーハンドトスをする癖が気になる。 (投球のまとめ) 当初はまとまりのある実戦派というイメージだったが、改めて観戦すると、熱い気持ちで投げる力投派の印象が強い。それでいて冷静さも維持でき、防御率1.59やWHIP1.29といった成績に表れている。 ただし、緩急に乏しく、それほど体格に恵まれていないせいか、投球の奥行きがやや浅い。K/9(7.41)は高校生としてはまずまずだが、プロで競うには変化球のキレや緩急の強化が必要だ。 投球フォーム セットポジションから、足を勢いよく高く引き上げる。フォーム前半からエネルギーの捻出が高く、リリーフタイプの色彩が強いかもしれない。軸足一本で立つ際、膝から上がピンと伸びがちで、バランスを取ろうとして余計な力が入り、制球を乱しやすい立ち方になっている。この点は、BB/9の数値(3.18)がプロレベルでやや高めである要因の一つかもしれない。 広がる可能性 ☆☆☆★ 3.5 お尻は適度に一塁側に落とせているため、体を捻り出すスペースは確保できている。この点から、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種の習得は可能だと考えられる。「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間は標準的だ。着地までの時間をもう少し稼げるようになると、曲がりの大きい変化球が加わり、K/9の向上やWHIPの改善が期待できそうだ。 ボールの支配 ☆☆★ 2.5 グラブを内に抱えきれず、最後で遊んで崩れてしまう。そのため軸がブレやすいはずだが、両サイドへの投げ分けは安定しており、BB/9の数値が極端に悪化していない理由と考えられる。 むしろ、足の甲で地面をしっかり捉えているにもかかわらず、ボールが上吊る傾向が強く、これがWHIP(1.29)に影響している。リリース時にボールをもう少し押し込むまで我慢できるようになれば、低めへの投球が増え、被安打の抑制に繋がるだろう。 故障のリスク ☆☆☆★ 3.5 お尻はある程度落とせているため、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈にはなりにくい。ただし、フォークのような縦の変化球の使用頻度が高いフォームなので、肘への負担に注意が必要だ。 腕の送り出しに無理は感じられないが、全身を使って投げ込む力投派であるため、疲労が蓄積しやすい。登板間隔の管理が、長期的な安定性や防御率(1.59)の維持に重要だろう。 実戦的な術 ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころがやや早く見える。そのため、打者に球筋を読まれやすく、WHIPや被安打に影響している可能性がある。腕の振りが鋭いにもかかわらず、縦の変化球で空振りを誘えないのは、ボールが見やすいためと考えられ、K/9(7.41)の伸び悩みの一因だ。体重を乗せる前にリリースしてしまう傾向があり、球持ちを我慢できるようになれば、体重がしっかり乗った球を投げられ、奪三振率の向上が期待できる。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)には改善の余地があり完成度には課題を残す一方で、これは将来的な伸び代の大きさを示す。BB/9(3.18)は安定しているが、フォームのブレや球持ちの課題を克服すれば、さらに四死球を減らせるだろう。故障のリスクは予想以上に低そうだが、縦の変化球の多用による肘への負担は注意が必要だ。 (最後に) 高校生としては完成度が高い選手というイメージだったが、フォーム分析を通じて改善の余地が多く残されていることがわかった。持ち前の野球センスに、変化球の強化やフォームの微調整が加われば、WHIPやK/9の向上を通じて大きく化ける可能性がある。ドラフト的には下位~育成枠あたりでの指名が妥当と見るが、個人的には大学を経由してプロ入りした方が成長の可能性が高いと考え、☆(支配下級)の評価にまでは至らなかった。 (2025年夏 大阪大会) |