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宇佐美 球児(西条3年)投手 182/85 左/左 | |||||||||||||||||||||||
宇佐美 球児は、130キロ台後半のストレートを軸に、球速表示以上の勢いと球威を感じさせる左腕投手だ。昨夏から球速の大きな伸びは見られなかったものの、2025年夏の愛媛大会での投球内容は決して悲観するものではなく、ドラフト候補としてのポテンシャルを示した。フォームや投球スタイルには改善点があるが、体格に恵まれ、悪い癖が少ない左腕として、将来性に期待がかかる。 投球内容 3年夏の愛媛大会では3試合に登板。うち2試合は最終回に1イニングのみの登板で、先発したのは敗戦した小松高校戦のみだった。この試合では序盤に素晴らしい投球を見せたが、後半に疲れが見え始め、打者に捉えられた。 投球成績
セイバーメトリクス分析: WHIP(1.09):1イニングあたり1人強の走者を許しており、高校レベルでは優秀な部類。コントロールに課題はあるが、打たれにくい投球ができている。 K/9(13.09):高い三振奪取率は、ストレートの勢いやカーブの有効性を示す。打者を圧倒する能力がある。 BB/9(4.91):四死球がやや多く、制球力の改善が必要。疲労時の高めへの浮きが影響している可能性。 K/BB(2.67):三振と四死球のバランスはまずまずだが、四死球を減らせればさらに評価が上がる。 FIP(2.91):防御率(0.82)に比べ高めだが、これは小松高校戦での失点集中や守備の影響を除いた投手の実力指標。高校生としては上々の数値。 球種分析 ストレート 130キロ台後半~MAX142キロ ☆☆☆ 3.0 球速は140キロ前後で、左腕のドラフト候補としてはやや物足りないが、ボールの勢いや打者の手元での強さは数値以上の印象を与える。両サイドに散らし、右打者の内角へのクロスファイアーも厳しく投げ込む。ただし、小松高校戦では高めに浮く球が目立ち、疲労時の制球に課題が見られた。 横変化 スライダー ☆☆★ 2.5 カーブのように曲がりながら落ちるスライダーを投げるが、精度やキレは平凡。使用頻度も低く、現時点では脇役の球種。 縦変化 ツーシームなど ☆☆ 2.0 右打者の外角にわずかに逃げるツーシームを投げるが、使用頻度は低め。より効果的な活用が求められる。 緩急 カーブ ☆☆☆ 3.0 左腕らしい大きく曲がるカーブを多用し、カウントを整える場面で有効。スライダーより使用頻度が高く、投球の軸の一つ。 その他 ☆☆★ 2.5 クイックは1.2秒前後で、左腕としては標準的。フィールディングは悪くないが、細かい投球術や繊細なコントロールはまだ不足。現時点ではストライクゾーン内に勢いのある球を積極的に投げ込むスタイルが特徴で、細かい駆け引きや球種の引き出しを増やす余地がある。 投球フォーム セットポジションから足を引き上げる勢いはそれなりだが、足を高く上げない。軸足一本で立つ際、膝から上がピンと伸びがちで、やや力んだ印象。このため、バランスを保とうとして余計な力が入りやすい。 広がる可能性 ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向かって伸ばし、二塁側に大きく送り込む。お尻がバッテリーライン上に落ち、体を捻り出すスペースが不足気味。この動きは、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種に不向き。 着地までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準的。大きく曲がる変化球よりも、球速を生かした小さな変化球で投球の幅を広げる方向性が適している。 ボールの支配 ☆☆☆☆ 4.0 グラブを最後まで内に抱え、外に逃げる遠心力を抑えられているため、軸がブレにくい。両サイドへのコントロールがつけやすく、足の甲で地面をしっかり捉えて浮き上がる力も抑制できている。本来は高めに浮くボールが少ないはずだが、小松高校戦では上吊る場面が目立った。 球持ちも悪くないが、疲労時の制御に課題がある。体力向上が進めば、リリースが安定し、制球力も向上するだろう。 故障のリスク ☆☆☆ 3.0 お尻がバッテリーライン上に落ちるフォームでカーブを多用するため、肘への負担が懸念される。ただし、腕の送り出しに無理はなく、肩への負担は少ない。力投派ではないため、過度な疲労蓄積のリスクは低い。 実戦的な術 ☆☆☆★ 3.5 着地までの粘りは平均的だが、ボールの出どころを隠せ、体の開きも早くない。打者にはボールが突然現れる感覚を与える。腕は力強く振れ、投げ終わりには体に絡む動きで、打者を勢いで圧倒しやすい。適度に体重を乗せたリリースで、打者の手元までボールの強さが保たれている。 フォームのまとめ フォームの4大動作(着地、球持ち、開き、体重移動)に大きな欠点はない。制球を司る動作は優れており、体力向上とともに制球力は安定するだろう。一方で、故障リスクや武器となる変化球の習得が課題。セイバーメトリクスの観点からも、K/9の高さが際立つが、BB/9の改善がフォーム安定のカギとなる。 最後に 宇佐美はまだ成長途上の投手であり、球速の向上や球種のバリエーション増加が求められる。現時点では、ストレートの勢いとカーブを軸に、高校レベルで高い三振奪取率(K/9=13.09)を誇るが、四死球の多さ(BB/9=4.91)が課題。フォーム面では、制球を支える動作が優れている一方、捻り出しの不足やカーブ多用による肘の負担が懸念点だ。1軍戦力として活躍するには、制球力の向上と新たな武器となる変化球の習得が必要で、5年程度の育成期間が見込まれる。 それでも、体格に恵まれ、フォームに大きな癖がない左腕であるため、2025年ドラフトでの指名が期待される。評価としては、本会議の下位指名~育成枠での指名が予想される。セイバーメトリクスの指標からも、打者を圧倒するポテンシャルを持ちつつ、制球の安定がプロでの成功のカギとなるだろう。個人的には、高校からのプロ入りも十分可能な選手と評価する。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2025年夏 愛媛大会) |