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芹澤 大地(高蔵寺2年)投手 182/68 左/左 | |
2年秋の時点では、全国で最も評価の高いサウスポーは、この 芹澤 大地 である。全国的には無名に近い学校の選手でありながら、その評価は早くから評判になっている。 (投球内容) 夏の大会では4回戦まで勝ち上がったが、秋の大会では初戦敗退である。今回は、夏の名城大付属戦の模様を参考に、レポートしてみたい。 ストレート常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 左腕からコンスタントに140キロを超える球速を誇り、力を入れて投げた時に140キロ台中盤を記録する。ボールにも適度な勢いが感じられるが、細かいコースの投げ分けなどはなく、とりあえずストライクゾーンの枠の中に投げ込むといった投球スタイルである。 変化球カーブ・スライダー・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0 左腕らしい大きなカーブ、曲がりながら沈むスライダー、それに右打者にはチェンジアップを使ってくる。どの球も打者の空振りを誘うほどの威力はないが、ストレートとの球速差や、カウントを整える、そういった働きは期待できそうだ。 その他 クィックは1.0秒前後と素早いが、フィールディングや牽制は並ぐらいである。まだ「間」を意識して投げるとか、微妙な出し入れができるような、細かい投球術は見られない。 (投球のまとめ) あくまでもスラッとした体型から、勢いのある球を投げ込む左腕といったレベルに終始している。68キロという体重からも、まだまだ伸び代は多く秘めていそうではある。現時点では、まだ上位指名確実だとかそういったことはないものの、全国的に見渡してもトップクラスの左腕であるのは間違いないだろう。全ては、一冬越えた成長次第ではないだろうか。 (投球フォーム) 今後の可能性を考える意味でも、投球フォームを分析してみたい。セットポジションから、足を引き上げる高さや勢いは静かに入ってくる。そのため、リリーフで持ち味が出るというよりも、先発向きの投手なのかもしれない。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸び切るような力みは感じられないものの、全体のバランスとしてはイマイチか。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 足をピンと伸ばさずに重心を沈めて来るので、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としも甘く、身体を捻り出すスペースも充分確保できているとは言えない。しかし、それによってカーブやフォークといった球種の曲がりが鈍くなりやすい。 「着地」までの地面の捉えも並ぐらいで、身体を捻り出す時間も平均的。そのため、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化で投球の幅を広げてゆくことが期待できる。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。そういった意味では、両サイドにボールは散りやすい。ただし、少し腕が外旋してブンと振って来るぶん軸はブレやすく、その効果は限定的になっているのかもしれない。 足の甲での地面の捉えは少し浅く、力を入れて投げるとボールは上吊りやすい。しかし、実際は、そこまで高めに抜けたり集まってくるといった感じではない。それは、「球持ち」が比較的良く、ボールを押し込めているからではないだろうか。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としに甘さを残す割に、カーブなどは結構使ってくる。それでも今ぐらいの頻度であれば、そこまで肘に負担がかかっているというほどではないように思える。むしろ、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がりがちな腕の送り出しの方が気になる。外旋気味な腕の振りも相まって、肩への負担はそれなりにあるかもしれない。それほど現時点では、力投派といったほどではないので、そこまで疲労を溜めやすいということはなさそうだが。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的で打者が苦になるフォームでもなさそうだが、ボールの出どころ自体は隠れている。腕は強く振れているので勢いがあり、打者からは空振りを誘いやすいフォームになっている。「球持ち」も好いので、ある程度ボールに体重を乗せてからリリースはできている。ただし、現時点ではウエート不足なのもあり、そこまで打者の手元までのボールの迫力・球威というのは圧倒的ではない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」こそ並で粘りが欲しいものの、あとの部分は悪くない。制球を司る動作自体もそこまで悪くないが、故障のリスク高めなのと将来的に武器になるような変化球を習得できるかが鍵になりそうだ。フォーム全体としては、好い部分と悪い部分が混在しており、どちらが全面に出てくるのかは現時点では読み難い。 (最後に) 確かに現時点では、全国で最も目立つ高校生左腕であることは否定しない。ただし、ドラフトでの順位は、一冬越えた成長次第といった感じで、上位指名が有力な候補かと言われると、個人的には流動的だなといった印象を受けた。ぜひ春季大会で、その成長ぶりを確認しに行き、評価を固めて行きたい。 (2024年夏 愛知大会) |