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鈴木 蓮吾(東海大甲府3年)投手 177/70 左/左 





 「豊作の高校生左腕で一番速い」





 2025年度は、高校生左腕の当たり年だと言える。そんな中でも、プロ志望届を提出しそうな左腕の中で、最も速い球を投げ込む高校生左腕は、鈴木 蓮吾 ではないだろうか。


投球内容

 2025年夏の山梨大会では、初戦で強豪・日本航空と対戦し、
8回を投げて2安打、7三振を奪うも、7四死球で1失点。短い夏が終わった。しかし、大会前から多くのスカウトが彼のもとに足しげく通っていたという。

ストレート:140キロ~最速147キロ 
☆☆☆★ 3.5

 剛速球というより、
キレと勢いのある球を投げ込む。そのため空振りを誘える一方で、勢いが鈍ると甘く入り、長打を浴びやすいタイプかもしれない。それ以上に気になるのは、球が高めに抜けたり、制球のバラつきが大きい点。本当の意味での制球力がないことが、今後の課題となりそうだ。

横変化:スライダー 
☆☆☆ 3.0

 横に滑るスライダーとのコンビネーションで投球を組み立てる。空振りを誘うというより、この球でカウントを稼ぎ、真っ直ぐの粗さを補っている。

縦の変化:チェンジアップ? 
☆★ 1.5

 チェンジアップ系の球があるように見えるが、単にスライダーが外角に流れただけかもしれない。少なくとも、頼れる変化球としては機能していないようだ。

緩急:カーブ? 
不明

 そういった球種も投げるらしいが、投球時に明確に確認できず。少なくとも、余裕がある場面でなければ使えない球だと考えられる。

その他:
☆☆☆ 3.0

 クイックは1.05~1.10秒程度でまずまず。牽制やフィールディングも平均的。ランナーを背負うと、ボールをじっくり持って打者や走者を焦らすなど、マウンドさばきはできている。制球は荒れ気味だが、
投手としてのセンスや経験は持ち合わせている選手と言えるだろう。

投球のまとめ

 豊作の高校生左腕の中でも、社会人入りを表明している芹澤大地(高蔵寺)に次ぐ球速の持ち主だと言える。
真っ直ぐの魅力は確かだが、制球の粗さによる不安定さが課題。その点をどう評価するかでスカウトの意見は分かれそうだが、惚れ惚れするような腕の振りから投げ込む選手だけに、今回のドラフトで何らかの形で指名されるのは間違いなさそうだ。





投球フォーム

 彼の今後を占う意味でも、フォームを分析して考えてみたい。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは適度で、フォーム前半からエネルギーを生み出す力が強い
リリーフ向きのフォームと言える。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びがちで、バランスを保つために余計な力が入りやすく、制球を乱しやすい立ち方になっている。

広がる可能性 
☆☆ 2.0

 引き上げた足をピンと伸ばしきる前に重心を下げてしまうため、お尻がバッテリーライン上に落ちてしまう。これにより体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種の習得は難しいと考えられる。


 「着地」までの地面の捉え方も平均程度で、体を捻り出す時間も十分とは言えない。そのため、現状では球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げていくことが予想される。

ボールの支配 
☆☆ 2.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、遠心力が外に逃げるのを抑えている。しかし、投げ終わった後に大きくバランスを崩し、
三塁側に倒れ込む傾向があるため、軸がブレてしまっている。これにより、両コーナーへの制球が安定しにくいと考えられる。

 また、
足の甲で地面を捉える力が浅いため、浮き上がる力を抑えきれていない。力を入れて投げるとボールが上ずりやすく、「球持ち」も浅いため、指先でのコントロールが難しい。これらが制球を乱す大きな要因となっている。

故障のリスク 
☆☆ 2.0

 お尻を落とすスペースが確保できていないため、無理にカーブやフォークを投げようとすると窮屈になり、身体に負担がかかる。また、腕を送り出す際にボールを押し出すような形になっており、肩への負担も懸念される。投げ終わった後にバランスを崩すほどの力投派でもあるため、疲労が溜まりやすい可能性がある。

実戦的な術 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的だが、ボールの出どころは隠せている。そのため、打者にとっては
見えないところから急にボールが飛び出すような感覚があり、差し込まれやすい。

 腕の振りも鋭いため、打者は
勢いで吊られやすい。ただし、体重をしっかり乗せる前にリリースを迎え、投げ終わった後に三塁側に大きく流れることで、作り出したエネルギーをリリースに繋げきれずロスしている点が気になる。

フォームのまとめ

 フォームの四大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は抑えられているものの、他の部分には改善の余地がある。
制球を司る動作、故障のリスク、将来的に球種を増やし投球の幅を広げられるかという点に不安が残り、フォームとしてはかなりリスキーな素材と言えるだろう。

 ただし、「開き」が抑えられていることや、腕を強く振れることで打者が振り遅れたり、勢いでタイミングを外されやすいという長所もある。この長所を活かせれば、欠点を補える可能性がある。


最後に

 球速やボールの勢いに魅力があり、
打者が差し込まれやすいフォームを作り出せている。こうした強みを活かしてくれる球団であれば、大いに化ける可能性を秘めている。一方で、欠点が全面に出て成長を阻害する可能性もあり、評価は難しい。魅力溢れる素材であるため、高校からのプロ入りは濃厚と判断する。そのためドラフトでは、下位指名~育成枠での指名が予想される。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2025年夏 山梨大会)