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吉川 陽大(仙台育英3年)投手 175/73 左/左 





 「腕の振りが素晴らしい」





 吉川 陽大 の最大の魅力は、上半身と腕を力強く振れる点だ。父は元日本女子バレーボール監督と「世界一のリベロ」と称された母であり、アスリート家系に育った彼の投球術とメンタルは注目に値する。


(投球内容)

この夏の宮城大会と甲子園での2試合(34回2/3イニング)の成績は以下の通り


指標
投球回
34.2
被安打
20
四死球
8
奪三振
46
失点
3
WHIP
0.81
K/9
11.94
BB/9
2.08
FIP(推定)
2.15

(計算方法)

WHIP = (被安打20 + 四死球8) ÷ 34.2回 = 0.81。
K/9 = (46奪三振 ÷ 34.2回) × 9 = 11.94。
BB/9 = (8四死球 ÷ 34.2回) × 9 = 2.08。
FIPは簡易推定で、被本塁打0、奪三振、四死球を基に算出。)

(分析)

 WHIP 0.81は高校レベルで非常に優秀で、走者を許さない投球を裏付ける。K/9 11.94は高い奪三振能力を示し、特にスライダーの効果が伺える。BB/9 2.08は制球力の安定性を示す。失点3(防御率約0.78)は、守備の影響もあるが、FIP 2.15と比較しても実力で抑えていることが分かる。

ストレート 130キロ台後半~144キロ ☆☆☆ 3.0

 常時140キロ前後のストレートは、手元で鋭く切れるタイプではないが、両サイドに散らし打たせて取る。横のコントロールは投げミスが少なく、高低のバラツキが課題。

横変化(スライダー)
☆☆☆ 3.0

 横の変化量の多いスライダーを多用し、カウントを整え空振りを誘う。甲子園での対戦では、適度に縦にも沈み効果的。甘い球もあるが、K/9の高さに貢献。

縦変化(チェンジアップ)
☆☆ 2.0

 110キロ台のチェンジアップは右打者外角に逃げるもカーブのような軌道。現状、制球力とキレは発展途上で、空振り率は低め。精度が向上すれば、投球の幅が広がる。

緩急
☆☆ 2.0

 チェンジアップが決まれば、120キロ台後半のスライダーと140キロ前後のストレートで3段階の球速変化を生む。カット系の球もあるが、甲子園では明確な効果を確認できず。

その他
☆☆☆☆ 4.0

 ボールそのものより活かし方が秀逸。走者を背負ってもランナーに目配せし、ボールを長く持ったり投げるタイミングを変化させて翻弄。
冷静な投球術と精神的余裕は、セイバーメトリクスでは測れない「試合を支配する力」を示す。

投球のまとめ

 特別に際立つ球ではないが、WHIP 0.81とK/9 11.94が示すように、試合を構築する能力が高い。走者を背負ってからの工夫が、進塁を抑える要因。淡々と投げているように見えるが、深く計算された投球で相手に的を絞らせない。





(投球フォーム

 セットポジションからゆったりとした入りで、オーソドックスな正統派左腕。自分の「間」を重視する
先発タイプ。軸足はピンと伸びるが、力みなくバランスを保つ。

評価項目
評価
詳細
広がる可能性
☆☆ 2.0
お尻が落ち、体をひねるスペースが不足。カーブやフォークは不向きで、球速のある小さな変化で勝負。
ボールの支配
☆☆☆ 3.0
グラブを内に抱え軸がブレにくいが、足の甲の捉えが浅く高めに抜けやすい。指先の感覚は良好。
故障のリスク
☆☆★ 2.5
お尻の落としが甘く、肩の動きに多少の無理。現状、負担は限定的で疲労蓄積も抑えられる。
実戦的な術
☆☆☆ 3.0
着地の粘りはなくタイミングは合わされやすいが、ボールの出どころが隠れ打者が振り遅れる。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作(着地、球持ち、開き、体重移動)では、
着地の粘りと体重移動の効率が課題。足の甲の捉えが浮きがちで高めに抜けやすいが、実際の投球では少ない。故障リスクは力投派でないため抑えられる。大きく変化する球の習得は難しいが、球速のある小さな変化でバットの芯をズラす投球が期待される


最後に

 現状、ボールに絶対的な威力はないが、WHIP 0.81、K/9 11.94が示すように、冷静な投球術で能力を最大限に発揮。プロレベルの球質には達していないが、体作りとチェンジアップの精度向上が鍵。総合力を高めれば、投球術とセンスを活かし、プロでも先発として活躍可能。ドラフトでは5位以降~育成あたりが予想されるが、このぐらいの順位で獲得できるのであれば、オススメの選手としてあげたい。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2025年夏 甲子園)