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矢吹 太寛(東海大札幌3年)投手 179/69 左/左





 「2戦目は良かった」





 選抜大会では、日本航空石川戦に登板した 矢吹 太寛 。注目される中での投球だったが、ボールのキレや制球力は精彩を欠いた。しかし、2戦目の浦和実業戦では終盤に登板。この試合では、テンポ、制球力、ボールのキレともに、ドラフト候補としての片鱗を見せる内容だった。


投球内容

 先輩の門別啓人(阪神)より一回り小柄だが、しなやかな投手体型をしている。

ストレート:135~140キロ 
☆☆★ 2.5

 驚くほどの球威や球速はないが、浦和実業戦ではボールの勢いは悪くなかった。やや力んで高めに抜ける傾向があったものの、勢いのおかげで空振りを奪えていた。今後は、先発登板時でも、この球速や勢いを維持できるかが課題だろう。

変化球:カーブ・スライダー・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 緩いカーブをアクセントに、チェンジアップはツーシームのように小さく外に逃げる。現時点では、左打者の外角低めに切れ込むスライダーで空振りを誘うのが持ち味だろう。

投球のまとめ

 現状、絶対的な内容とは言えない。夏までに
ストレートの精度を磨き、総合力をどこまで引き上げられるかが鍵だ。現在は大学進学タイプと見ているが、夏までにさらなる成長があれば、ドラフト指名候補として注目する球団も出てくるかもしれない。





投球フォーム

 セットポジションから足を引き上げる勢いは良く、高さは平均的。軸足一本で立つ際、膝から上がやや伸びて力みが感じられるが、全体のバランスは平均的な立ち方になっている。

広がる可能性 
☆☆☆★ 3.5

 比較的高い位置で足をピンと伸ばしており、左投手の場合、お尻の三塁側への落としは悪くない。そのため、カーブやフォークといった球種を投げる際も無理は感じにくい。

 「着地」までの地面の捉え方は標準的で、体を捻り出す時間も平均的。現時点では、曲がりの大きな変化球より、球速のある小さな変化球を中心に投球の幅を広げる方向性だろう。ただし、フォーム自体はカーブやフォークを投げられないものではないため、「着地」までの時間をもう少し稼げれば、そうした球種も威力を発揮しそうだ。

ボールの支配 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは
最後まで内に抱えられており、遠心力で外に逃げる力を抑えている。そのため軸がブレにくく、両サイドへのコントロールは安定しやすい。ただし、腕がやや外旋気味なため、そこで軸が乱れる可能性がある。

 足の甲で地面を押し付ける力は悪くないため、本来なら浮き上がる力を抑えられ、低めにもっと集まりそうだ。しかし、「球持ち」が標準的でボールを十分に押し込めていない部分がある。この点を改善できれば、低めへの制球力も向上するだろう。

故障のリスク 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としは悪くないため、カーブやフォークを投げても窮屈さは少なそう。カーブは時折投げるが、その頻度は高くない。

 腕の送り出しでは、ボール側の肩がやや上がり、グラブ側の肩が下がるなど多少の無理は感じられるが、深刻なレベルではない。力投派でもないため、疲労が溜まりやすいフォームでもなさそうだ。

実戦的な術 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的だが、ボールの出どころはある程度隠せている。そのため、打者にタイミングを合わせられにくい。

 腕は体に絡んでおり悪くないが、投げ終わりで
三塁側に流れる傾向があり、作り出したエネルギーをリリースまで伝えきれていない。この点が、打者の手元での球威や勢いの物足りなさに繋がっている可能性がある。

フォームのまとめ

フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)では、「体重移動」に改善の余地がある。制球を司る動作は悪くなく、故障のリスクも低い。もう少し「着地」までの粘りを増せば、より質の高い変化球を習得できる可能性がある。

最後に

 投球内容、技術、肉体はいずれも発展途上であり、現時点では進学が妥当と見られる。ただし、夏に向けてさらなる成長が感じられれば、ドラフトの指名圏内に食い込む可能性もある。そこに期待して、夏の予選まで注目して追跡したい。


蔵の評価:
追跡級!


(2025年 選抜大会)