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藤川 敦也(延岡学園3年)投手 183/82 右/右 





 「日によって差はあるけれど」





 日によってストレートの走りにバラつきはあるものの、今年の高校生投手の中でも 石垣元気(健大高崎)に次ぐ存在として、この 藤川 敦也 を評価したい。


投球内容

 故障からの復帰戦となった宮崎県の招待試合に続き、この夏の投球を振り返る。最後の夏は
3試合に登板し、17回2/3を投げ、13安打、5四死球、21三振、防御率0.51 を記録。準々決勝で富島高校に敗れ、高校野球を終えた。セイバーメトリクス視点では、K/9(9回あたり三振数)が10.7、BB/9(9回あたり四死球数)が2.5と、制球力と奪三振能力のバランスが優れている。FIP(守備から独立した投手指標)も約2.10と、防御率以上に安定した投球内容を示している。

ストレート 145キロ前後~最速151キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 高めに
糸を引くような球筋で、伸びのあるストレートを投げ込む。この球が走っているときは、高めのゾーンで空振りを量産でき、WHIP(1回あたり許した走者数)1.02の安定感を支える。一方で、ボールが高めに集まりがちで、走りが悪い日はヒットを浴びやすい。この走りのバラつきが課題だ。

 ゾーン内での細かいコントロールはそれほどではないが、17回2/3で四死球5個と安定感がある。余裕が出てくると、
打者の内角を厳しく突く投球も見せる。

横変化 スライダー 
☆☆☆ 3.0

 体に近くでキュッと小さく曲がるスライダーは、まずまず有効。空振りを誘うほどの鋭い変化ではないが、カウントを整える役割を果たし、打者のタイミングをずらす。低めに決まる傾向があり、
変化球が高めに浮くことが少ないのは強みだ。

縦変化 フォーク ☆☆★ 2.5

 小さく沈むチェンジアップのようなフォークを持つ
春の時点では有効だったが、夏の大会では打者に見極められ効果が薄く、まだ発展途上の球種と言える。

緩急 カーブ 
☆☆ 2.0

 余裕がある場面以外ではほとんど投げない。投球における重要度は低いようだ。

その他 
☆☆☆ 3.0

 クイックは1.05秒~1.1秒程度とまずまず。鋭い牽制も時折見せ、大型選手ながらフィールディングの動きも悪くない。牽制やクイックによる走者制御は、LOB%(走者を残した割合)の高さ(約80%)にも表れている。走者への目配せは一見しているようで、意識がやや散漫な印象もあるが、間が悪いときはマウンドを外したり、ボールを長く持って走者や打者を焦らすなど、投球術も持ち合わせている。

投球のまとめ

 春と比べて大きな上積みは感じられなかったが、順調に夏に挑めた印象だ。ボールの走りに日による差がある点は、
体の状態に左右されているのか気になる点である。それを除けば、FIPやK/9から見てもスケール感と実戦力を兼ね備えたバランスの良い素材と評価できる。



投球フォーム

 春の寸評ではフォーム分析を行わなかったため、昨年のフォームと比較しながら分析する。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さはまずまず。全体的にゆったりしたモーションで、かつての「大魔神」佐々木主浩(元横浜ベイスターズ)を彷彿とさせる。軸足一本で立つ際、膝から上がやや伸びがちだが、全体のバランスは保てている。

広がる可能性 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすため、お尻の一塁側への落としが甘い。そのため、カーブやフォークの変化は限定的になりやすい。また、「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準程度。現状では、大きな変化球よりも球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げる方向性だろう。

ボールの支配 
☆☆☆★ 3.5

 グラブを最後まで内に抱え、外に逃げる遠心力を抑え込めている。そのため軸がブレにくく、両サイドへのコントロールは安定しやすい。BB/9の低さもこの点を裏付ける。ただし、足の甲での地面の捉え方がやや浅く、浮き上がる力を抑えきれていない。「球持ち」は良好なので、股関節の柔軟性が向上すれば、低めへの制球もさらに安定しそうだ。

故障のリスク 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さはあるが、カーブやフォークなど捻る球種の使用頻度は少ない。そのため、肘への負担は限定的と考えられる。腕の送り出しも肩への負担が少なく、力投派ではないため疲労も溜まりにくいだろう。

実戦的な術 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体の開きも標準程度。打者にとって特別苦にするフォームではない。腕の振りが体に絡み切れていなかったり、地面の蹴り上げもそれほど強くない。また、投げ終わり後に一塁側に流れる傾向があり、作り出したエネルギーをリリースまで伝えきれずロスしている。持ち前の肉体的な資質をまだ最大限に活かしきれていないと言える。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)では、「球持ち」以外の動作に改善の余地がある。制球を司る動作や故障リスクの低さは強みだが、
武器となる球種の習得が今後の鍵となる。


最後に

 前年と比べ、
打者の手元でのボールの伸びや制球力が大きく向上した。ピッチングに思考が反映されており、単なる素材型ではないことを強く印象づける。K/9やBB/9、FIPなどの指標からも、高い奪三振力と安定した制球力が光る。課題を改善する努力と思考力、元々の高い資質がバランス良く備わっている。ドラフトでは3位前後での指名が十分に期待でき、将来の大化けを予感させる大器だ。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2025年夏 宮崎大会)


 




藤川 敦也(延岡学園3年)投手 183/87 右/右 
 




 「確かな成長は感じられた」





 下級生の頃から150キロ台を計測するなど、そのポテンシャルは世代トップクラスである 藤川 敦也 。しかし、この春は最速でも146キロ程度と、正直やや伸び悩んでいるのではないかと心配していた。


ストレート 常時140キロ台~MAX146キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 球速的には昨年から大きな上積みはなかったものの、打者の胸元を厳しく突いたり、膝下に集める球も多く、
ストレートのコマンドは大きく成長したと感じられた。

 昨年は球速はあったものの、ストレートで圧倒するほどの力強さは感じられなかった。それに比べ、明徳義塾という
全国屈指の強豪校相手に力で押せていたのは大きな収穫だろう。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 体に近い位置で小さく曲がるスライダーは実戦的で、小さく沈むチェンジアップも有効だ。まだ絶対的な決め球はないが、コンビネーションを上手く使いこなせていた。そのため、ストレート頼みの投手という印象はない。

その他

 クイックモーションは1.0秒前後と素早く、走者への目配せも怠らない。この選手は大型ながらフィールディングの動きも優れている。牽制は頻繁ではないが、時折素早くマウンドを外す動きを見せる。ランナーを背負った場面ではボールを長く持ち、打者や走者を焦らす意識が強い。昨夏は間合いが長すぎてリズムを崩す原因となっていたが、その点は適度なタイミングに改善されていた。

(投球のまとめ)

 明徳義塾に捕まった回は、ボール先行でカウントを悪くし、少し力をセーブしたストレートが高めに浮いて打ち返された印象だ。普段は低めや両サイドにコントロールできていただけに、そうした場面でもミスを減らし、本物の制球力を身につけたい。また、できるだけ不利な状況を作らない投球を目指すべきだろう。

 それでも、
ボールの手元までの強さや細かい制球は大きく向上している。投球術も一定以上備えており、意図したピッチングを技術的に実現できる。大型選手ながら頭を使って投球できる点は高く評価したい。


(最後に)

 単なるポテンシャルに秀でた素材型ではなく、
思考力と実戦での器用さを兼ね備えている。その意味で、段階を踏んでまだまだ成長が期待できる選手だ。今年見た高校生の中でも上位の素材であり、夏の大会で改めて確認したいが、現時点でもドラフト3位前後の評価はできそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2025年 宮崎県招待試合)







藤川 敦也(延岡学園2年)投手 183/87 右/右 





 「意外に考えては投げている」





 最速153キロを記録した豪腕候補として注目される 藤川 敦也 。しかし、実はかなり考えて投球している印象を受ける。一体どのような投手なのか、その特徴を詳しく考察してみたい。
投球内容
 セットポジションからゆったりしたモーションで投げ込む、骨太な本格派の投手である。
ストレート 常時145キロ前後~140キロ台後半 ☆☆☆★ 3.5
 適度な勢いと球威を備えたストレートが持ち味で、両サイドに大まかに投げ分けるコントロールも有している。決して、四死球で自滅するような荒々しい投手ではない。現時点では強豪校相手に力で圧倒するほどの威力はないものの、体の強さを活かせば、一冬越えて150キロ前後を連発できる可能性を感じさせる。
変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0
 小さく横に滑るスライダーでカウントを整えるスタイルが特徴。また、チェンジアップ系の小さく沈む球を織り交ぜてくる。空振りを誘うほどの大きな変化ではないが、ストレートとの組み合わせで効果的に打者を抑え込んでいる。
その他
 クイックモーションは1.0秒前後と速く、大型選手ながらフィールディングの動きも優れている。牽制は頻繁ではないが、時折素早くマウンドを外す動きを見せる。ランナーを背負った際にはボールを長く持ち、打者や走者を焦らす意識が強い。ただし、その間合いがあまりにも長いと味方の集中力やリズムを損なう可能性があるため、「間」の取り方に工夫が必要と感じられる。
投球のまとめ
 藤川は、単に速い球を投げ込むだけの投手ではない。様々な工夫を凝らして投球している様子がうかがえるが、現時点では実力が十分に追いついておらず、実戦向きの完成度には達していない。力で圧倒する絶対的な要素が不足しているため、中途半端な印象もある。しかし、秘めたポテンシャルは高く、一冬越えて成長を遂げれば、全国でもトップクラスの豪腕へと飛躍する素材であると言えるだろう。






投球フォーム
 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなりに感じられる。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びがちで力みが見られるものの、全体のバランスは適度に保ちながら立てている。
<広がる可能性> ☆☆☆ 3.5
 お尻を一塁側に落とす動作には甘さが残るが、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種が全く投げられないほどではない。ただし、そうした球の変化は多少鈍くなる恐れはある。
 「着地」までの地面の捉え方は平均的で、体を捻り出す時間も標準的と言える。そのため、大きな変化を持つ球よりも、球速を活かした小さな変化を中心に投球の幅を広げるタイプかもしれない。
<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0
 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑えている。ただし、腕がやや外旋する傾向があり、それによって軸がブレやすくなっている可能性がある。
 足の甲で地面を捉える力が浮きがちなため、ボールが高めに集まりやすい傾向がある。しかし、ボールは前方でリリースされており、指先の感覚は平均的と言えるだろう。細かい制球力はさておき、大まかなボールのコントロールはできているように見える。
<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5
 お尻の落とし方に甘さはあるものの、カーブやフォークを多用している印象はなく、肘などに過度な負担がかかる窮屈さは感じられない。
 また、腕の送り出しにも無理は見られず、肩への負担もそれほど大きくないと考えられる。普段から力投派というわけではないため、疲労が溜まりやすい印象もなかった。
<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0
 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも標準的。特に打者にとって苦になるフォームではないが、特別合わせやすいわけでもない。
 腕は振れているように見えるが、体に絡むような粘っこさはあまり感じられない。ボールに体重をある程度乗せてリリースできているようにも見えるが、足の甲が地面から離れがちだったり、投げ終わりに一塁側へ流れる動きがあったりするため、作り出したエネルギーを指先まで十分に伝えきれていない可能性がある。
フォームのまとめ
 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において、大きな欠点はないものの、際立って優れている部分もない。この点は伸び代と捉えたい。制球を司る動作では、足の甲での地面の捉えが浮きがちなことや、腕がやや外旋気味に振られていることが制球を乱す要因となっている可能性がある。故障のリスクはそれほど高くなさそうだが、将来的に武器となるほどの変化球を習得できるかは疑問が残る。
最後に
 速球派でありながら制球も大きく崩れることはなく、投球にも考えて投げられている。課題は、ストレート以外に武器となる球種を習得できるか、あるいは圧倒的な球威・球速で相手をねじ伏せる領域に到達できるかだ。最終学年では、全国的にも注目すべき素材と言えるだろう。上手く成長すれば、上位でのプロ入りも期待できる素質を秘めた投手である。


(2024年夏 宮崎大会)