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石垣 元気(健大高崎3年)投手 180/78 右/両 





 「本調子でなかったのかな?」





 この夏、石垣 元気 はリリーフのみで3試合の登板に留まった。甲子園でも2イニングのみの登板に終わり、その後のU-18ワールドカップでの投球内容を見ると、調整不足がうかがえるものだった。何かしら、あまり投げられない事情があったのだろうか?


投球内容

 この夏の群馬大会、甲子園、U-18ワールドカップの投球成績を合算すると、
14回2/3イニング、3安打、6四死球、17三振、防御率0.61 という内容で、決して悪くはない。ただし、ボールが合わなかったのか? 投げ込みが足りなかったのかは定かではないが、U-18ワールドカップでは四死球を連発し、本来のコントロールとは程遠い内容だった。

ストレート 140キロ台後半~155キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 やはり
ストレートの威力は高校生としては破格。実際、U-18ワールドカップでもストレートに関しては各国の打者に通用していた。しかし、全体的に球筋が定まらず、高めに抜ける球も少なくなかった。甲子園でもややアバウトな制球ではあったが、U-18ほど制球に苦しむ印象ではなかった。しかし、今年の高校生の中では、モノの違いを見せつけている。

横変化 スライダー、カットボール 
☆☆☆ 3.0

 小さく横にズレるカットボールや、横に曲がりながらも少し沈むスライダーを駆使する。カウントを整えるためにこれらの球種を多用するが、U-18では制球が定まらず、ストライクが入らない、あるいは高めに浮いて甘くなる球も目立った。特にU-18では、変化球でカウントが整えられず苦しむ投球が続いた。

縦変化 フォーク 
☆☆☆ 3.0

 最終学年でフォークの質が向上したと言われているが、まだ信頼性の高い球種とは言えない。適度に落ちる球ではあるものの、苦しい場面でこの球を軸に乗り切る姿は見られず。プロ入り後、さらに精度を高める必要がありそうだ。

緩急 カーブ 
☆☆★ 2.5

 緩いカーブでカウントを整えることはできるが、曲がり切らない球も散見される。まだ、投球に余裕がない場面では使いづらい球種のようだ。

その他 
☆☆☆ 3.0

 クイックは1.05秒前後で基準を満たしているが、走者への牽制や目配せは平凡で、鋭いものは見られない。フィールディングも基準レベルはクリアしているが、投げるタイミングを変えるとか微妙なコースの出し入れをといった投球術は見られなかった。現状では、
威力のある球をストライクゾーンに投げ込むことに終始している。

投球のまとめ

 調整不足の可能性も考えられるが、春からの投球内容に大きな変化は感じられなかった。元々、細かい投球術や試合をまとめるセンスに秀でているわけではない。そのため、プロ入り後も一定の時間をかけて成長を遂げる必要があるだろう






セイバーメトリクスに基づく詳細分析

 選抜の頃と夏のフォームの違いを検討しましたが、大きくは変わっていませんでした。そこで今回は、この夏に残した成績から、傾向を考えてみることにします。


BABIP (Batting Average on Balls In Play)BABIPは、打球がフィールドに飛んだ場合の打率を示し、投手の運や守備の影響を評価します。

BABIP 0.088は異常に低く、
高校生レベルでは打者がストレートに対応できなかった可能性を示します。しかし、U-18での高めの抜け球が打たれなかったのは運の要素も考えられ、プロではBABIPが上昇する可能性が高い。守備の影響も不明のため、プロでの成績安定には変化球の精度向上が必須

ERA+(リーグ調整防御率)ERA+は、リーグ平均の防御率を100として、投手の防御率を相対的に評価します。高校野球やU-18のリーグ平均防御率は不明だが、仮に3.50と仮定。

ERA+ 574
高校生レベルでは圧倒的で、防御率0.61がリーグ環境でどれだけ優れているかを示します。ただし、U-18での制球難を考慮すると、国際舞台での一貫性が課題。プロの環境ではこの数値が大幅に低下する可能性がある。

投球イニングあたりの効率(P/IP)投球数(Pitches per Inning)は、投手のスタミナと効率性を測ります。投球数は不明だが、14.67イニングで55人と対戦したと仮定し、1イニングあたり約15球(高校生の平均値)を想定。

 15球/イニングは効率的だが、U-18での四死球連発は投球数増加の要因。変化球(スライダー、フォーク)の精度が低く、カウントを整えるカーブが曲がり切らないため、無駄な投球が増えた可能性がある。


 
ストレートのピッチバリューが飛び抜けて高く、全体の成績を支えている。ただし、変化球のピッチバリューが低いため、プロでの対戦では打者がストレートを狙いやすくなるリスクがある。

BB/9 3.68 はプロでは平均以下(MLB平均は約3.0)。U-18での四死球連発は、調整不足やメンタル面の影響が考えられる。

プロでの見通し

 セイバーメトリクスの指標(WHIP 0.61、K/9 10.43、ERA+ 574(仮))から、石垣は高校生としては圧倒的なポテンシャルを持つ。特にストレートの威力はプロでも即通用する可能性がある。ただし、ストレート依存を減らし、変化球のピッチバリューを高める必要がある。


(最後に)

 実際の投球でもセイバー的な観点でも、高校生としては
破格の速球を持つことは共通している。また、変化球に関しては発展途上な部分があり、投球術など細かい部分も含め、まだまだ改善の余地が残されていると判断する。

 そう考えると、今年の高校生投手の中では
頭一つ抜けた存在ではあるが、プロで一軍の戦力に定着するまでには、結構時間がかかることが想定される。そういった意味では、目玉級という評価までには至らず、1位候補の一人といった位置づけに落ち着きそうだ。そのためドラフトでは、単独狙いの1位指名や、ハズレ1位の中で指名されるのではないのだろうか。評価としては、春から目に見える変化が感じられなかったので、据え置きとさせて頂きたい。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)



(2025年夏 U-18ワールドカップ)


 




石垣 元気(健大高崎3年)投手 178/78 右/両  





 「万全の状態で最後の夏を」





投球内容

 3年春のセンバツでは、
3試合 7回 7安打 2四死球 11三振 3失点という成績だった。150キロ台の球速を記録し、その能力の片鱗を示せた春だったのではないか。

ストレート: 150キロ~155キロ
☆☆☆☆ 4.0

 どの試合でも安定して150キロ台の球速を叩き出せる
スピード能力は、高校生としては破格だ。右打者に対しては安定して外角に集まる一方で、左打者に対しては多少抜け球が見られ、ややアバウトな印象。特に横浜高校の左打者達には、高めに甘く入った球を打ち返されていた。ボールの見やすさもあり、球速ほどの威力はまだ感じられない部分もある。

変化球: カーブ・スライダー・カット・チェンジアップなど
☆☆☆ 3.0

 スライダーやカット系の球でカウントを整え、余裕がある時には緩いカーブを織り交ぜる。また、チェンジアップやスプリットもあるようだが、まだそれほど効果的とは言えない。チェンジアップをもう少し上手く使えるようになれば、左打者に対しても効果的なピッチングができるのではないだろうか。そのため、変化球でカウントは整えられるものの、フィニッシュボールとして、頼れるほどの変化球は無いように思える。

その他

 クイックは1.0~1.1秒程度とまずまず。オフの寸評でも指摘したが、「間」を上手く使ったり、投げるタイミングを変えたりするような変化は、投球の中であまり見られなかった。したがって
、一辺倒になって打たれ出す傾向は見られた。

投球のまとめ

 故障の影響がそこまで深刻ではなく、能力が大きく損なわれていなかったことは明るい材料だ。一方で、秋から大きな上積みを感じられなかった点は気になる材料。もし順調に調整できていたらどうだったのか? という未知の部分も残る。ぜひ最後の夏には、さらに成長した姿で他を圧倒するモノの違いを見せてほしい。


投球フォーム

 昨年に比べ、フォームのどの部分が変わったのかを比較してみたい。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さはそれなりで、昨年秋と大きな変化はない。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びがちだが、全体的にバランスよく立てており、この点も秋と変わっていない。

広がる可能性
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に伸ばしがちで、お尻の一塁側への落としに甘さが残る。そのため、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種は投げられないわけではないが、変化が鈍くなりやすい。この点も秋からほぼ変わっていない。

 「着地」までの地面の捉え方は淡白とまでは言えないものの、体を捻り出す時間が十分とは言えず、多様な球種を投げることは可能でも、武器となる大きな変化球の習得は難しいかもしれない。

ボールの支配
☆☆☆★ 3.5

 
グラブは最後まで体の近くに抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑えている。そのため軸がブレにくく、両サイドへのコントロールはつけやすい。この部分は昨秋と同様だ。

 一方、
足の甲で地面を捉えが浅く、浮き上がろうとする力を十分に抑えきれていない。そのため、ボールが高めに集まりやすい傾向は変わらない。「球持ち」自体は前でボールを放せており、指先に力を伝えやすいリリースができている。

故障のリスク
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種を多用しない。そのため、現状では窮屈になる場面も少なく、故障リスクは高くないと考えられる。腕の送り出しを見る限り、肩への負担は少なそうで、この球速を投げても力投派という印象はない。疲労も溜まりにくいはずで、この点も秋からほぼ変わっていない。

実戦的な術
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、
ボールの出どころもやや早い。そのため、打者にとって苦になりにくいフォームに思える。そのため、コースを突いた球でも打ち返されることが少なくないだろう。

 腕はそれなりに強く振れているため吊られやすい勢いはあるが、開きが早いことでその効果は薄い。「球持ち」は良いので、打者が体重を乗せてからリリースしているように見えるが、足の甲が地面から浮きがちで、下半身のエネルギー伝達が不足している。そのため、打者の手元までのボールの勢いは球速ほど感じられないかもしれない。昨秋より腕の振りや下半身の体重移動は改善しつつあるが、まだ発展途上という印象は否めない。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」は悪くないものの、他は平均~それ以下で課題が残る。制球を司る動作や故障リスクは高くないが、将来的に武器となる大きな変化球を習得できるかは微妙だ。技術的には嫌らしさが少なく、発展途上の印象が強い。

最後に

 センバツの内容が万全でなかっただけに、一冬での成長を強く実感するには至らなかった。技術面では昨秋から大きく変えておらず、肉体の成長や筋力向上に重点を置いて鍛えてきたことが伺える。それでも、秋のドラフト会議では有力な1位候補となるのは間違いなさそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2025年春 センバツ大会)


 








石垣 元気(健大高崎2年)投手 178/75 右/両 





 「王道を行けるか?」





 24年秋の時点では、全国の高校生の中で頭一つ抜けた存在である 石垣 元気 。果たして、かつての 松坂 大輔 のような、王道路線で今後も駆け抜けてゆくのか考えてみたい。


(投球内容)

 昨今のドラフト候補としては、けして大きな体格ではない。しかし、松坂自身も、2年秋の時点では170センチ台後半 ぐらいだったと記憶している。この秋は3試合ほど登板し、関東大会の準々決勝で佐野日大戦に登板したのが最後。ちなみにこの試合では、等々力球場のガンで、158キロまで到達し話題になった。


ストレート 145キロ~150キロ台前半ぐらい 
☆☆☆☆ 4.0

 等々力のガン表示の正否はともかく、常時150キロ前後は出ていそうな明らかに速く感じる球を投げています。夏の群馬大会で見た時には、そのボールの勢いにビックリさせられました。ただし、真っ直ぐの球速・勢いは破格なものの、コマンドとしてはややアバウトです。ある程度両サイドに散らすことはできますが、真ん中~高めのゾーンに浮きやすい傾向にあります。

変化球 カーブ・スライダー 
☆☆☆ 3.0

 今は緩いカーブと、横滑りするスライダーで投球を組み立ててきます。これらの球でカウントを整えられますが、空振りを誘うといった感じの変化球ではありません。他にも、チェンジアップ・スプリット系の球もあるようですが、今のところ精度・落差共に充分とは言えなそうです。

その他

 クィックは1.05秒前後とまずまずですが、走者への目配せや牽制という意味ではどうでしょうか? まだ「間」を使う意識も薄く、淡々と投げ込んでいるたけといった気がします。

(投球のまとめ)

 現状ストレートの威力は破格なものの、変化球や制球力、それに投球術などの部分では、まだ特別なものがないことがわかってきた。この辺の部分を、今後一年で何処まで高めて行けるのか? それによって、ドラフトの目玉になって行けるのか変わってくるのではないのだろうか? ここからは、才能云々以上に、
本人がどれほど貪欲に野球に向き合って行けるかに懸かっている。





(投球フォーム)

 今度は、投球フォームをみて今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは、それなりといった感じがします。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸びがちでも、全体的にはバランス良く立てていました。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けがちなので、お尻の一塁側への落としは甘くなりやすい。そのため、身体を捻り出すスペースは充分確保できていないので、カーブやフォークといったひねり出して投げる球の曲がりや鈍くなりやすい。

 「着地」までの地面の捉えはそこそこといった感じで、身体を捻り出す時間はそれなり。しかし、今後いろいろな球を投げられる下地はあるものの、武器になるほどの変化球を見出だせるかは微妙だろう。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため、両サイドへのコントロールはつけやすいのではないのだろうか。一方で、足の甲での地面の捉えは浮いてしまっており、浮き上がろうとする力を抑えられず、ボールは上吊りやすい。「球持ち」も並ぐらいなので、指先の感覚としては平均的ではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さを残す中、結構カーブを多く織り交ぜてくる。そうなると窮屈になる機会も増え、肘への負担も少なくないとは考える。腕の送り出しを見る限りは、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということも無さそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りはそこそこも、ボールの見やすさは平均的。そういった意味では、球速ほど打者が苦になるフォームではないのかもしれない。

 気になるのは、振り下ろした腕が身体に絡んでくるとか、そういった粘りは感じられない。ボールにも
しっかり体重を乗せきる前にまだリリースを迎えてしまっている感じで、それでも、これだけのボールが投げられるのは才能なのだろう。ただ、松坂大輔も動揺のタイプで、あまり下が上手く使える選手ではなかった。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」のいずれも平凡で、特筆すべきものはない。この一年で、こういった動作に変化が見られるのか気になるところ。故障のリスクはそこまで感じないが、制球を司る動作や武器なるほどの球種を、将来的に見出だせるかは微妙。そういった意味では、
ある程度のところから伸び悩む可能性も否定できない。


(最後に)

 2年秋の時点では、
真っ直ぐが他の選手より抜けており、ドラフト1位の有力な候補ではあるように思える。しかし、一冬越えて上積みが感じられない場合は、体格に恵まれていないことも考えると、評価は下がってゆく恐れもある。ただし、2年秋の松坂大輔も、そこまで絶対的なボールを投げていたわけではなかったので。ただし、松坂大輔の方が、すでにこの時期から総合力や精神力といった部分で石垣より上を言っていたように思える。今は、一冬越えた時にどっちに転ぶのか待ちたい。


(2024年秋 関東大会)