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松下 歩叶(法政大4年)三塁 181/85 右/右 (桐蔭学園出身) | |||||||||||||||||||||||||||
長打力を秘めた右打ちの内野手であるだけでなく、一定の対応力と内野ならどこでも守れる柔軟性を持つ 松下 歩叶。そういった点から、競合を避けて単独1位指名を狙う球団にとって指名しやすい選手といえるだろう。そこで今回は、彼がいきなり入札するに値するほどの魅力を持つのか、検証してみたい。 走塁面:☆☆☆ 3.0 一塁までの到達タイムは、右打席から速い時で約4.25秒。これを左打者に換算すると約4.0秒に相当し、プロの基準(左打者換算で4.1秒)を上回るタイムだ。盗塁数は、2年秋に3盗塁、今春のリーグ戦で2盗塁を記録。通算5盗塁に対し失敗は3個で、成功率は62.5%と高くはない。盗塁の企図自体も積極的ではなく、走力はあるものの、プロで「足」を売りにするほどには見えない。 守備面:☆☆☆☆ 4.0 高校時代はショートを守り、下級生時には大学で二塁を任されていた。現在は三塁手としてプレーしており、動きが良く、非常に優れた三塁手といえる。肩の強さも水準以上で、通算59試合で6失策という成績を残している。プロでショートを守れるかと問われると厳しいかもしれないが、必要ならショートもこなせる可能性はある。アマチュアの三塁手としてはかなり高い評価を受けそうで、場合によっては「強打の二塁手」としての起用も期待できるかもしれない。 打撃内容 広角に打ち返すポイントゲッター的な選手だが、引っ張った際の打球は角度が良く、滞空時間が長いのが特徴だ。今春のリーグ戦では、14試合で2本塁打、7打点、打率.315と、まずまずの成績を残した。オフシーズンにはフォーム分析を行っているが、春の打撃フォームに大きな変更はない。そこで、彼の通算成績から、打者としての傾向を考察してみたい。
成績分析 出塁率 (OBP, .364): 打席で出塁する確率。リーグ平均を超え、選球眼と安打力で安定した出塁能力を示す。 長打率 (SLG, .478): 1打席あたりの塁打数を測る。リーグ平均以上で、本塁打10本と二塁打9本による高い長打力が際立つ。 OPS (.842): 出塁率と長打率の合計で、総合的な打撃力を評価。NPB平均(.700~.750)より高く、大学トップクラスでプロの中軸候補。 wOBA (.366): 出塁と長打の貢献を加重平均で測る指標。NPB平均(.320)を超え、長打と出塁のバランスが優れている。 ISO (.192):長打力だけを抽出した指標(長打率-打率)。NPBの強打者(.150~.200)に匹敵し、大学レベルで突出。 BB/K (0.79): 四球と三振の比率で、選球眼とコンタクトのバランスを示す。プロ平均(0.5~1.0)に近く、四球増でさらなる向上余地あり。 BABIP (.281): 打球が野手の守備範囲内に飛んだ際の安打率。NPB平均(.300)より低めで、ライナーや長打が多い安定した打球の質を反映。 左右投手打率 (.288/.287): 左右投手への打率がほぼ均等。投手のタイプに影響されず、プロでの対応力が高い。 (成績からわかること) 松下は長打力(ISO.192、本塁打10)と出塁能力(OBP.364)のバランスが優れ、OPS.842、wOBA.366は大学トップクラス。打点38はチャンスでの勝負強さを示す。左右投手への均等な対応力(.288/.287)はプロでの安定感を予感させる。課題は四球率(8.1%)の向上と盗塁成功率(62.5%)の改善だが、総合力は高く、NPB中軸打者(OPS.800前後)を目指せるドラフト1位候補。 (最後に) 残した実績からも、打撃フォーム的にも、プロでも失敗し難いタイプといった無難な印象を受ける。個人的には、天性の長距離砲というよりも、牧秀悟(DeNA)的なパンチ力を持ったポイントゲッターへの期待が膨らむ。牧秀悟の時ほどの成功の確信は持てないが、2位だった彼以上の守備力がある点は、1位での指名を予感させる。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2025年 日米大学野球) |
松下 歩叶(法政大3年)三塁 181/85 右/右 (桐蔭学園出身) | |
法大でも、2年秋からレギュラーに定着していた 松下 歩叶。しかし、本格化してきたのは、3年秋からだった。この内容で最終学年アピールできれば、上位指名も揺るがないのではなかろうか。
(守備・走塁面)
一塁までは、速い時には右打席から4.25秒前後で走り抜ける。これを左打者に換算すると4.05秒前後に相当し、プロの基準レベル以上のタイム(左打者換算で4.1秒が基準)を満たす。盗塁は、2年秋に3盗塁を記録したのみ。そのため、盗塁を積極的に仕掛けてくるプレースタイルではなさそうだ。
高校時代はショートを守り、下級生の時には法大でも二塁を任されていた。そして、現在は三塁手としてプレーしている。そのため、非常に動きが良く、上手い三塁手といえるのではないだろうか。肩も水準以上であり、3年春・秋の27試合で3失策という成績を残している。
(打撃内容)
2年秋からの2シーズンでは、2割5分以下で2本塁打が最高だった。しかし、3年秋のシーズンでは、5本塁打・13打点・打率.352 と、一気に才能を開花させたシーズンとなった。普段は、広角に打ち返す中距離ヒッターのイメージが強い。しかし、引っ張った時の打球は、対空時間の長いホームランアーチストの軌道を描くのが特徴となっている。
<構え> ☆☆☆★ 3.5
右打席からスクエアスタンスでかかとを浮かし、グリップの高さは平均的。腰の据わりは良く、全体のバランスとしてはそれなりだが、両眼で前を見据える姿勢は良い。そのため、錯覚を起こすことなく球筋を追いやすい。
<仕掛け> 平均
投手の重心が下りきった底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた中距離ヒッターや、勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られる始動のタイミングです。
<足の運び> ☆☆☆★ 3.5
始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。軽くアウトステップ気味に踏み込むように、やや意識は内角寄りにあるように思える。
踏み込んだ足元は、なんとかインパクトの際にも我慢。そのため、甘めの外角球や低めの球にも喰らいついたり、センターから右方向への打撃を可能にしている。ただし見ていると、ステップも狭めでもあり、実際にはそこまでセンターから右方向に狙っているわけではなく、引っ張ったつもりの打球が微妙にずれて飛んでしまっていることも多いのではないかという印象を受けた。基本は、引っ張って巻き込むことを好む打者ではないのだろうか。
<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0
打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球には立ち遅れにくい。特に、バットを上から振り下ろしてくるインサイドアウトのスイング軌道。そのため、インパクトまでにはロスはなく、引っ張って巻き込むのには優れたスイングとなっている。
逆に外角の強い球に対しては、バットのしなりを活かせない分、どこまでしっかり叩けるのだろうという疑問も残る。そういった本当の意味で、外角の厳しい球、しっかり外角に曲がってゆく球、アウトローの球に対する対処を、もう少し最終学年では気にしてみたい。
それでもインパクトの際には、ボールの下にバットを潜らせて打球に角度を付けるのは上手い。また、スイングの弧も大きめにとり、フォロースルーを使って遠くに打球を運ぶことができている。引っ張ったときの打球が、対空時間の長い大きな飛球を飛ばせるのは、この辺の動作が大きいのではないだろうか。
<軸> ☆☆☆★ 3.5
足の上げ下げは小さめで、目線の上下動はそれほど大きくはない。身体の開きは、なんとか我慢している感じ。軸足の内ももの筋肉は発達していて、強い打球を生み出す原動力になっている。ただし、少し前に傾きがちなので、身体が突っ込まないように気をつけたい。
(打撃のまとめ)
それほどタイミングの取り方が上手いわけではないものの、広角に打てることと、甘い球を逃さず叩けることで、一定の打率を残している。ただし、どこまでセンターから右方向への打球は意識して打っているのか? 本当の意味で、外角の厳しい球、逃げてゆく球、低めの球に対応できるかは、最終学年で見極めてみたいポイント。
ボールに角度を付けて飛ばせるインパクト、前を大きく取れるスイング、フォロースルーを使ってボールを遠くに運べる技術などは、彼ならではの技術と言えるのではないだろうか。
(最後に)
攻守両面に優れた長打力のある内野手として、上位指名候補としてマークできる素材であるのは確か。その注目され、厳しい攻めの中で、いかに最終学年で結果を残せるのか注視したい。そのプレッシャーを跳ね除けることができれば、1位の12名に入ってくる可能性は充分にあるだろう。
(2024年 秋季リーグ戦)
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