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| 林 燦(立正大4年)投手 183/85 右/右 (広陵出身) | |||||||||||
春に大田スタジアムで 林 燦 の投球を観戦した際、同じ140km/h台後半を記録する投手の中でも明らかに「違う球」を感じた。角度と勢いのある球がが際立っており、育成枠でなら指名があるのではないかと注目していた。 (投球内容) 通算成績と基本指標 FIP(守備に左右されにくい投手の純粋な実力を示す指標)→ 大学通算推定FIP ≈ 4.30前後(四死球が多く、三振もイニングを大きく上回らないため、防御率2.78より実力は少し見劣りする) K/9(9イニングあたりの奪三振数) = 4.46 BB/9(9イニングあたりの与四死球数) = 4.46 → 三振と四死球が完全にイコール。制球が乱れると一気に失点する危うさがある。 K/BB(奪三振対与四死球比) = 1.00 プロでは2.50以上が目安とされるため、現時点では明らかにコントロールが課題。 WHIP(1イニングあたり何人の走者を出したかを示す指標) = 1.36 大学レベルでは平均的だが、プロでは1.20以下が望ましい水準。
ストレート 常時145km/h前後 ☆☆☆★ 3.5 ボールには角度と勢いがあり、春季リーグでは最速91マイル(146km/h)を計測。入れ替え戦ではゾーン内にガンガン投げ込み、有利な状況を作れていた。一方で普段は制球難が顕著で、通算与四球16は投球回のちょうど半分。BB/9が4.46に達しており、プロでは即失点に繋がりやすい欠点と言える。 縦変化 フォーク ☆☆☆ 3.0 現時点の最大の武器。まだストンと空振りを奪う割合は少ないが、ゾーン内で沈みながら打者を引っ掛けさせゴロ誘導能力は高い。 横変化・緩急 ? スライダー系・カーブ・明確なチェンジアップはほぼ確認できず。現時点では「速球+フォーク」の2ピース投手。 その他 ☆☆★ 2.5 クイックは1.15~1.20秒程度と平均的。牽制や走者への目配せはまだ十分ではなく、フォームを盗まれやすい。フィールディングやベースカバーの動きは悪くないが、駆け引き(ボールを長く持つ、タイミングをずらす、コースをギリギリに使うなど)はほぼ見られなかった。内角を厳しく突く意識は、時折見られた。 (投球のまとめ) リリーフ起用が主のため、速球+沈む球の2つの球で勝負している印象。球種の少なさ以上に、制球力と投球術はこれから伸びる余地が大きい成長途上の投手だ。次にフォーム面から将来性を考えてみたい。 (投球フォーム) セットポジションから足を上げる勢い・高さはまずまず。軸足一本で立ったときの膝の余裕は少ないが、バランスはそこそこ保てている。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 お尻の一塁側への落としが浅く、体を捻り出すスペースが十分に確保できていない。そのためカーブや大きく落ちるフォークの変化は鈍くなりがち。 「着地」も早めで、体を捻り出す時間も短い。そのため将来的には、曲がりの大きな変化球より、カットボール、ツーシーム、スプリットなど「速い小さな変化」を中心に幅を広げていく形になりそうだ。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めているため軸はブレにくい。そのため両サイドへのコントロールは、比較的つけやすいはず。一方、足の甲での地面の捉えは浮いてしまい、力んで投げると高めに抜けやすい。「球持ち」も平均的で、指先の感覚は特別優れている印象は受けなかった。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としが甘い割に、フォークを多投するのは少し気になる。窮屈さから肘への負担が増えないか心配だ。リリース時に投げる腕が上がり、グラブ側の肩が下がりがちだが、そこまで極端な送り出しには見えない。全体的に力みは少なく、疲労蓄積のリスクは低そう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 着地の粘りは平均的で、ボールの出どころも並みぐらい。特別見やすいわけではないが、苦になるほどでもない。腕の振りは強く、体に絡ませてくるため、打者が勢いで吊られやすい要素はある。体重移動も最後までしっかり乗っており、エネルギーの伝達は悪くなかった。 (フォームのまとめ) 「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の4大動作に致命的な欠点はない。しかし制球を司る足の甲での捉えが弱く高低の制球に課題があり、故障のリスクも少なくは無さそう。将来的に大きな武器となる変化球を獲得するのは厳しそうだ。そのため現時点では、「実戦的なフォーム」とは言い難い。 (最後に) 林燦は、まだ明らかに発展途上の投手であり、プロ入り後数年かけてじっくり育てていくことが求められる。どこまで資質を伸ばせるかが今後の鍵となる。そのため☆(支配下級)の評価には至らず、育成会議での指名は妥当だったと考える。プロの指導と環境でどこまで変われるのか。今後の成長をしっかり見届けて行きたい。 (2025年秋 東都大学野球入れ替え戦) |