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大山 北斗(中央大・準硬式)投手 180/75 右/右 (興南出身) 





「春先から話題に」





 春季リーグの頃からスカウト界隈で話題になっていた 大山 北斗 。興南高校時代にも見た記憶がある投手だった。ただ、過去に何人かプロ入りした準硬式出身の選手たちと比べると、個人的にはインパクトがやや弱い印象があった。


(投球内容)

 準硬式の選手だが、決して素材型というよりは実戦型という感じ。軟式の全国大会でも日本一に輝いたように、適度にまとまりのある本格派右腕だ。
4年春までの通算成績は以下の通り。

投球回数
被安打
四球 奪三振  防御率
208回1/3 115 41 190 0.60

参考セイバー指標(概算)

FIP ≈ 1.50前後(守備にほとんど助けられていない本物の投手力)
K/9 = 8.22(9回換算で8個以上三振を奪う)
BB/9 = 1.77(
制球の良さが際立つ
K/BB = 4.63(プロでも上位クラス)
WHIP = 0.75(1イニングに1人も出さない驚異的水準)

 数字を見ても、準硬式とはいえ「打たれていない」のではなく「打てていない」投手であることがわかる。制球が良く、三振も取れるため、運や守備に左右されにくい投球ができている。

ストレート 140km/h~後半 ☆☆☆ 3.0

 普段は140km/h台前半だが、要所でギアを上げると後半をマークするタイプ。準硬式ゆえに伸びやノビは硬式ほど感じないものの、適度な勢いはある。細かいコースの投げ分けは目立たないが、ゾーン内で散らすコントロールは十分にありそう。

横滑り系 スライダー 
☆☆ 2.0

 スライダーは投げるが、使用頻度はそれほど高くない。キレ・精度ともにまだ信頼を置けるレベルではない印象。

縦の変化 チェンジアップ・フォーク 
☆☆☆ 3.0

 速球中心の配球の中で、対になるのがこのチェンジアップ。カウントを整え、投球を組み立てる重要な球だ。フォークも持っているようだが、明確に「ストン」と落ちる感じは確認できなかった。

緩急 カーブ 


 球種としてはカーブもあるようだが、リリーフ登板が多いためか、余裕がないとほとんど投げてこない。

その他 
☆☆★ 2.5

 クイックは1.25~1.35秒程度とやや遅めで、走者への対応はプロ入り後の課題となりそう。牽制は時々入れるが、走者を焦らせるような間を作る意識は薄い。フィールディングの動きは、悪くなかった。

(投球のまとめ)

 全体的に「凄み」を感じさせるタイプではなく、まとまりが良く、
要所で力を入れる投球をする投手。数字的にもWHIP 0.75・K/BB 4.63と「出さない・取れる」の両立ができており、硬式に移行しても極端に崩れるイメージは湧きにくい。ただ、準硬式ゆえの「数字のマジック」部分もあるため、次にフォーム面を見ながら今後の可能性を考えてみる。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから足を高く、勢いよく引き上げるため、前半からエネルギーの捻出が高い。リリーフ向きのフォームと言える。軸足一本で立ったときも膝から上がピンと伸びきらず、余裕を持って立てている。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 足を伸ばし切る前に重心が沈む癖はあるが、お尻の一塁側への落としは悪くない。そのためカーブやフォークを投げる土台は十分にある。「着地」までの粘りもそれなりにあり、捻り出す時間は確保できている。変化球のキレ・曲がりは、縫い目の立つ硬式球になったときにさらに良くなる可能性がある。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、遠心力をしっかり抑えている。軸がブレにくく、両サイドへのコントロールが安定しやすい。足の甲でも地面を捉えており、浮き上がる力を抑えている。球持ちも悪くないため、高めに抜けやすいといった癖はなさそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせているので縦の変化球を投げても肘への負担は少なめ。現時点では縦の変化球の使用頻度も高くないため、大きな心配はなさそう。腕の角度は立っているが、送り出しに無理は感じない。ただ、力投派の一面もあるので疲労の蓄積には注意が必要。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 着地までの粘りはそこそこあるものの、ボールの出どころが
やや早めに見えるのが課題。腕の振り自体は良いが、開きが早いことで、打者が吊られる効果が薄れている。足の蹴り上げは強く、最後までエネルギーの伝達はしっかりできている。

(フォームのまとめ)

 4大動作で最も課題があるのは、
「開き」が早い部分。逆に制球を司る動作は非常に良く、故障リスクは平均的。将来的には硬式球で変化球の曲がりが増し、さらなる成長が期待できるフォームだ。


(最後に)

 制球で大崩れするタイプとは到底思えないが、際立った武器が見つからず苦労する可能性はある。過去にプロ入りした準硬式出身の逸材たちと比べても、インパクトではやや見劣りするのも事実。彼らでさえNPBの壁は高かったことを考えると、即一軍戦力になるのは容易ではない。

 ただし、通算でWHIP 0.75・FIP 1.50前後という数字は、準硬式とはいえ
「本物」の証明でもある。少なくとも数年間は二軍で経験を積み、その中でどんな個性を見出せるかが鍵だろう。現時点では(支配下級の評価)には届かず、育成枠での指名は妥当だったと評価したい。


(2025年 春季リーグ戦)