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平口 寛人(日本経済大4年)投手 179/82 左/左 (愛工大名電出身) 
 




 「実戦型左腕」





 恵まれた体格を生かしたスケール感や抜群の球速で魅了するロマン型というよりも、実戦的な投球を売りとするのがこの 平口 寛人 だ。一体どのような投手なのか、もう少し深く検証してみたい。


(投球内容)

 非常にオーソドックスなフォームから投げ込むサウスポーといった印象。1年春からリーグ戦に登板していたが、先発投手として頭角を現したのは最終学年になってからだ。特に 
4年秋は 5勝0敗、防御率2.56 という好成績を残した。最終学年の通算成績は以下の通り。


投球回数
被安打
四球 奪三振  防御率
67回2/3 53 15 57 2.26


※WHIP=(被安打+与四球)÷投球回数 ランナーをどれだけ出さないかを示す指標
※K/9=奪三振率(9回換算) 三振の取りやすさ
※BB/9=与四球率(9回換算) 制球の良し悪し
※K/BB=三振と与四球の比率 総合的な制球・支配力の目安

ストレート 140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 球速自体は派手ではないが、WHIP1.01という優秀なランナーを出さない投球を支えているのは、
キレと抜群のコントロール。特に右打者内角を厳しく突く投球と左打者外角へのクロスファイアを得意とし、両サイドにしっかり集めることができる。K/BB 3.80という数字が示す通り、四球が極端に少なく、試合を壊さない安定感が最大の武器だ。

横変化(スライダー) 
☆☆☆ 3.0

 左打者外角に大きく逃げていくスライダーがカウント球・決め球の両方で機能し、空振りを誘えている。

縦変化(チェンジアップ)
☆☆☆★ 3.5

 右打者外角に沈む
チェンジアップが最大の武器K/9=7.58とリーグ平均を上回る三振率の多くをこの球で稼いでいる。

緩急 


 観戦したいくつかの試合では、カーブなどの緩い球は確認できなかった。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは1.10~1.15秒程度と平均的だが、走者への目配せはしっかりしており、ランナーを出しても動じない。ベースカバーなどの動きも素早い。

(投球のまとめ)

 凄みのあるボールではないが、ストレートの両サイド投げ分けが安定し、WHIP1.01・K/BB3.80という支配力指標は大学球界でも上位クラス。二軍レベルなら即通用し、一軍でも中継ぎ・先発ローテ投手として将来的に期待できそうな実戦型左腕と言える。






(投球フォーム)

 セットポジションからゆったりと足を上げ、自分の「間」を大切にする先発向きのフォーム。軸足一本で立ったときに膝から上がピンと伸びて力みが見られるが、バランスはしっかりと保てている。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 上げた足を高く伸ばしつつ、二塁側に大きく送り込むため、お尻の落とし(左投手の場合は三塁側)はやや甘くなる。それでもカーブやフォークが投げられないほどではない。着地までの時間も適度に確保できており、変化球のキレ・曲がりを生み出す下地はある。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは
最後まで内に抱えられており、遠心力をしっかり抑えている。軸ブレが少なく両サイドへの投げ分けがしやすい。足の甲でも地面を捉えており、ボールの浮き上がりも抑えられている。球持ちも悪くなく、指先の感覚も良さそうで、制球で苦労するタイプではなさそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としに窮屈さはなく、肘に負担がかかるような捻り出す球種も投げていない。腕の振りにも無理な送り出しも無く力投派でもないため、故障リスクはかなり低い部類に入る。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 着地の粘りはまずまずだが、
ボールの出どころがやや早く見える傾向にある。体重移動も最後まで乗り切れていない印象で、フィニッシュ時の地面の蹴り上げが控えめだ。腕の振り自体は悪くないだけに、もう一歩リリースを隠せれば打者をより幻惑できるだろう。

(フォームのまとめ)

 「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の4要素のうち、
「開き」と「体重移動」に改善余地がある。反面、故障リスクは低く、制球を司る動作はすでに高いレベルにある。武器となる変化球の習得も期待でき、あとはストレートの勢いを増すための体重移動改善と、出どころを隠す意識が加われば、さらにスケールアップするだろう。


(最後に)

 実際の投球もフォームも完成度が高く、あと一歩ストレートに勢いや威圧感が加われば、支配下登録・一軍での活躍も十分に見込める素材だ。現時点では「凄み」がもう一歩足りない印象はあるものの、二軍では即実戦に入って行けそうな完成度があり、プロ入り後に課題を払拭できれば、実戦型左腕として大きな掘り出し物になる可能性を秘めている。密かに期待しながら、今後の成長を見守りたい選手である。


(2025年 リーグ戦観戦メモ)