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石川 ケニー(20歳・ジョージア大)野手編 178/83 右/左 (明秀日立-亜細亜大中退) 
 




「野手としての方が早く出てきそう」





  亜細亜大学では、1年生の頃から野手として出場していた 石川 ケニー 。その亜細亜大学を中退してまで、アメリカの大学への留学を決意した。アメリカでも二刀流を続けているが、NPBで早く台頭しそうなのは野手としての才能ではないかと見ている。


走塁面:
☆☆ 2.0

 一塁までの到達タイムは、左打席から4.25秒前後。このタイムは(基準は4.1秒)、ドラフト指名される選手としては中の下クラス。2025年度(大学2年生)の成績でも、52試合に出場して盗塁0個(失敗1)と、基本的に走力でアピールするプレースタイルではないようだ。

守備面:


 映像ではレフトの守備でジャンプして好捕する場面や、ピッチャーゴロに機敏に反応してゲッツーを奪う場面が見られた。そういった意味では全く動けない選手ではなさそうだが、基本的には両翼タイプといった印象で、アメリカでもレフトとライトを守っているようだ。

 サンプルが少なく正確な判断は難しいが、NPBでもレフトあたりなら担えるかもしれない。何より投手として140km/h台を連発できる地肩があるため、肩の強さには問題ないだろう。あとは送球の精度や返球での意識などが気になるが、映像を見る限りその点はよくわからなかった。





(打撃内容)

 体の強さでスタンドインすることもあるが、長距離砲というよりは中距離・ポイントゲッタータイプに見える。ただし、NPBの環境であれば15本~20本級は期待できるタイプになれるかもしれない。2025年度の成績は以下の通り。



打数  安打  二塁打  三塁打  本塁打 打点 四球 三振  打率
201 64 23
1 8 32 30 28 .318


<構え>
☆☆☆ 3.0

 左打席で前の足を引いて構えているが、途中からベース側につま先立ちし、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合や全体のバランスは平均的で、
両目で前を見据える点はどうかと思う部分もある。ただし、打席ではリラックスして構えられているのは良い点だ。

<仕掛け>
遅すぎ

 ベース側につま先立ちし、そのかかとを下ろすだけの踏み込みになっている。以前はしっかり足を引き上げて踏み込んでいたが、アメリカの投手のスピードに対応するため動作を小さくしたようだ。ここまで遅い始動だと、日本人の筋力やヘッドスピードではプロの球に対応するのは厳しい。ただし、彼のようにハーフで肉体の資質が日本人のそれとは比べ物にならない上体の強さがあるため、この始動タイミングでも打撃が成り立つ可能性は高い。ギリギリまで引き付けて叩く天性の長距離打者や生粋の2番打者タイプに多く見られる始動だが、彼の場合は前者に近いタイプだろう。

<足の運び>
☆☆☆ 3.0

 踏み込みは真っ直ぐからベース側に離れるアウトステップを採用。始動から着地までの「間」がないため、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められる。真っ直ぐからアウトステップに踏み込むことから、意識は比較的内角寄りにあると思われる。

 踏み込んだ
足元はブレずに止まっており、逃げる球や低めの球にも食らいつける。特に体勢を崩されても前で粘って拾うのがこの選手の最大の特徴だ。

<リストワーク>
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さを補っている。バットの振り出しもインサイドアウトではないが、ロスなくインパクトできている。特に
内角寄りの球を苦なくさばくのは上手い。一方、外角の球をキッチリ叩ける精度には課題がありそうだ。

 ヘッドを立てて広い面で捉えるタイプではなく、
ボールに角度をつけてカチ上げるスイング。スイングの前も大きく、フォロースルーも適度に使えている。確実性は高くなさそうだが、長打は生まれやすいスイングだろう。

<軸>
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動は少ない。体の開きも我慢でき、軸足の
内腿の筋肉も発達しているため、強烈な打球を生み出す原動力となっている。軸足を潰してでも低めの球を拾いに行くスタイルだが、ある程度ツッコミを我慢できているため打撃が成立している。

(打撃のまとめ)

 「間」を取れるスイングではないうえ、インパクトを見ると角度をつけて捉えるタイプだけに、
NPB投手の複雑な配球やスピードの変化にどこまでついていけるかには不安が残る。それでも前捌きで低めの球を捉えられるスイングは特殊で、特に現在のNPBの飛ばないボールを飛ばすには向いているインパクトだろう。

  セイバーメトリクス補足:2025年度の成績から、OPS(出塁率+長打率:総合的な打撃生産力を示す)は約.970と非常に高く、NPBの平均的レギュラー(.800前後)を大きく上回る水準。内訳では出塁率(OBP)が.407と
選球眼の良さを示し、長打率(SLG).562がパワーを裏付けている。ISO(孤立パワー:長打力を純粋に測る)は.224と、中距離打者として十分な爆発力があり、二塁打23本がこの数値を支えている。BB/K(四球と三振の比率:選球眼とコンタクトのバランス)は1.07とまずまずで、三振28と少ない点が打率.318の高さに寄与。wOBA(加重出塁率:打撃の総合貢献度をより精緻に測る)は推定.420前後と優秀で、出塁と長打の両立が光る。

 一方で、K%(三振率:打席に占める三振の割合)は約12%と低いが、遅い始動ゆえにNPBの変化球に対応する際の三振増が懸念される。長打の多くが内角寄りのさばきによるもので、外角の対応力向上が鍵となりそうだ。


(最後に)

 大学のカレッジレベルでも、突出した打率ではない。その点がNPBレベルの投手にどこまで対応できるかの不安材料だ。それでも高校・大学と日本の野球を経験してきた選手だけに、そこまで戸惑うことはなさそうだ。数年は二軍での調整になるだろうが、
大成するとすれば野手の才能ではないのだろうか。野手としても未知数な部分が多いため、評価は「未確認」とする。彼が今後アメリカの大学でプレーする選手の判断材料となりそうで、興味深い存在だ。個人的にも何処まで成長するのか見守って行きたい。


蔵の評価:未確認


(2025年 米大学リーグ)










石川 ケニー(20歳・ジョージア大)投手編 178/83 右/左 (明秀日立-亜細亜大中退)





 「正直よくわからない」





 明秀日立時代は、甲子園で140キロ前後のボールを投げ込んでいた 石川 ケニー。しかし亜大進学後は、打者としてのプレーしか確認できていない。アメリカに渡ってからも投手としての映像は極めて限られていた。しかし今や投手としてもMAX150キロを記録するまでに成長し、ジョージア大では二刀流として活躍している。


投球内容

 今シーズンのジョージア大での成績は 
19試合登板、5勝6敗1セーブ、防御率4.21 というものだった。もう少し詳しい数字は以下の通りである。


投球回数
被安打
四球 奪三振  防御率
66回1/3 82 22 73 4.21

WHIP(1イニングあたりの被安打+与四球):1.57
K/9(9イニングあきの奪三振数):9.9
BB/9(9イニングあたりの与四球数):3.0
K/BB(奪三振と与四球の比率):3.32

ストレート 常時140~150キロ 
☆☆☆ 3.0

 明秀日立時代から140キロ前後のボールを投げていた。ただしボールの質としては威圧感や迫力に欠ける印象だった。現在の球速は上がっているものの映像を見る限り
真っ直ぐの凄みはそれほど感じられない被安打82と多く、WHIP1.57も平均以下で、出塁を許しやすい傾向が数字にも表れている。一方でBB/9が3.0と与四球は抑えられており、四球連発といった粗さは感じられない。

横変化 スライダー・カットボール 
☆☆☆☆ 4.0

 この選手の強みは大きく曲がりながら沈むスライダーの大きさと手元で鋭く変化するカットボールにある。K/9が9.9と高く、これらの
変化球で空振りを奪えていると考えられる。K/BBも3.32と良好で、カウントを整える能力は一定以上ある。

縦変化 シンカー・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 シンカーは球速がありツーシーム的な変化で小さく沈む。スライダーやカットボールがメインの投手であるためこの球で打者の踏み込みを封じる効果があると考えられる。

緩急 チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 シンカーよりもさらに遅く大きな変化をする球種。球速がかなり遅いためパームボール的な役割を果たしカーブのような緩さのショート変化する球として機能している印象がある。

投球のまとめ

 NPBでは現状では投手よりも野手としての打力の方が魅力的なタイプである。K/9は優秀だがWHIP1.57と出塁を許しやすく、防御率4.21も平均的。NPB一軍を意識するには真っ直ぐの質をさらに磨き、被安打を減らす必要があるという印象を受けた。今後の可能性を検討するためフォームについても分析してみたい。






投球フォーム

 セットポジションから足を引き上げる勢いは平均的だが、比較的高い位置まで引き上げる。軸足一本で立った際膝から上がピンと伸び切らず、
力まずにバランス良く立てているのは良い点である。全体的に上下動がやや激しいフォームという印象を受けた。

広がる可能性 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の三塁側への落とし(左投手の場合)にやや甘さがあるがカーブやフォークが投げられないほどではない。「着地」までの地面の捉えもまずまずで体の捻り出し時間は適度に確保できているように見える。このため大きな変化球を習得しても不思議ではない。むしろこの投手の魅力は、変化球にあるのではないのだろうか。

ボールの支配 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは
最後まで内に抱えられ遠心力を抑えているため軸がブレにくく両サイドへのコントロールは安定しやすい。一方足の甲での地面の捉えが浅く浮き上がる力を十分に抑えられていない。上下動の激しさも相まって高低のコントロールの再現性には課題があると考えられる。ただしボールは前でリリースできており、制球が大きく崩れる印象はない。

故障のリスク 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さはあるがカーブやフォークといった球種は見られないため肘への負担は少ないと考えられる。ただしボールを持つ肩が上がりグラブ側の肩が下がりがちなため
腕の送り出しに無理がある。肩へのケアには十分注意が必要がありそうだ。試合では投球後にバランスを崩す場面も多く、疲労が溜まりやすい可能性がある。

実戦的な術 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはまずまずで
ボールの出どころも隠せているように見える。それでも被安打が多いのはボール自体の力不足やコントロールの甘さが原因と考えられる。腕の振りはしっかりしており、打者を惑わせる要素はある。地面を強く蹴るなどエネルギー伝達は悪くないが、投球後に三塁側へ重心が流れることでエネルギーをロスしている可能性がある。この点が、打者手元での球威や勢いに影響しているかもしれない。球速以上に、球質や球威の向上が課題と考えられる。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)では思ったほど欠点は少ないが、三塁側に流れることでエネルギーをロスしているのは惜しい。制球を司る動作では
高さの課題があり肩への負担も気になる点である。武器となる変化球の習得は未知数だが、変化球の曲がり自体は悪くない。あとは精度を高めることが求められる。


最後に

 試合の模様をじっくり見ていないため、現状の能力については不明瞭な部分が多い。部分的な映像や成績を見る限りは、投手としては育成枠レベルという印象を受けた。そのため現時点では、打者としての魅力が先行していると考えられる。左腕という希少性もあるので、まずは様子を見ながら判断する評価が妥当かもしれない。いずれにせよ判断材料が不足しているため、評価としては未確認とする。


蔵の評価:
未確認


(2025年 大学リーグ戦)