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渡辺 向輝(東京大4年)投手 167/63 右/右 (海城出身) 





 「平塚合宿では良かった」





 リーグ戦では先発登板で打ち込まれる傾向にある 渡辺 向輝 。しかし、2025年平塚合宿の大学代表候補選考では、サブマリン特有の球筋を活かし紅白戦で1回を1三振を含む無安打・無失点の快投で、日本代表候補の逸材たちを完璧に抑えてスカウトの注目を集めた。その投球内容からは、日本代表に選出されても不思議ではないほどだった。


投球内容

リーグ戦成績(2025年春)


項目
詳細
登板試合
5試合
投球回
36と2/3回
勝敗
0勝5敗
防御率
4.91
被安打
41(被安打率111.8%)
四死球
18(四死球率49.1%)
奪三振
11(1イニングあたり0.30個)
失点
20
被本塁打
2
対左打率
.359
対右打率
.243

通算成績:21試合、1勝9敗、防御率4.34

ストレート 常時120キロ前後 
☆☆ 2.0

 父・渡辺俊介(元ロッテ)譲りの流麗なフォームを持つ
正統派サブマリン投手。球威やキレで圧倒するタイプではなく、ストライク先行で追い込み、打たせて取る軟投派である。リリースポイントの低さと浮き上がるような球筋に特徴がある。

 ただし、
ゾーン内で甘く入ると長打を浴びやすい。コントロールはストライクゾーン内に集める程度で、精密にコースを突くタイプではない。打者のタイミングをずらすことに特化し、初見の打者に対し高い効果を発揮する。

変化球 スライダー・シンカー・カーブ 
☆☆☆★ 3.5

 ストレートと球速差の少ないスライダーとシンカーを軸に、状況に応じて90キロ台の緩いカーブを織り交ぜる。特に
スライダーは、一度浮き上がってから鋭く曲がる軌道で、全日本クラスの打者もタイミングを合わせられないでいた。このスライダーは初見での対応が極めて難しく、プロレベルでも武器となり得る。

その他

クイック:1.1~1.2秒程度(平均的で、下手投げ特有の遅さはない)。

牽制:走者への目配せや鋭い牽制は少なく、盗塁を許すリスクが存在する。

フィールディング:ゴロ処理やバント対応の動きは標準以上だが、普段下から投げているだけに、とっさの送球に若干の不安を覚える。

投球の総評

 平塚合宿のような限られたイニングでの登板では、渡辺の持ち味が最大限に発揮された。四死球による自滅リスクが低く、特にスライダーはプロの打者に対しても有効な武器となる可能性が高い。対右打者への優位性(打率.243)は顕著で、ワンポイントリリーフや中継ぎとしての適性が際立つ。そのため、短いイニングでの起用ならNPBでも輝ける可能性がある。サブマリン投手が少ない球団にとって、その希少性は大きな魅力となり、育成枠での指名ならば検討する価値がありそうだ。






成績分析

評価ポイント
項目
理想値
実績
評価
被安打率
投球回数の80%以下
111.8%
四死球率
投球回数の33.3%以下
49.1%(与四球10、与死球8)
1イニング奪三振
0.8個以上
0.30個
防御率
1点台
4.91(通算4.34)


被安打率

 
投球回数を上回る111.8%と高く、球威不足とゾーン内のアバウトさが要因。対左打者(.359)への被打率が特に課題。


四死球率

 49.1%と高く、特に与死球(8個)が目立つ。内角を攻める意識が強いが、コントロールの精度向上が必要。

奪三振

 1イニングあたり0.30個と少なく、空振りを誘うより打たせて取るスタイルが明確。苦しい場面での三振奪取力は課題。

防御率

 通算4.34と高め。東大では先発を任されるが、打者が慣れる前に降板する短イニングが適性。

セイバーメトリクス指標


指標
評価
WHIP (Walks + Hits per Inning Pitched)
1.61
高い(リーグ平均1.20~1.30程度)
FIP (Fielding Independent Pitching)
4.78
平均以下(リーグ平均約3.50)
K/BB (Strikeout-to-Walk Ratio)
1.10
低い(理想は2.0以上)
BABIP (Batting Average on Balls in Play)
.326
やや高め(リーグ平均約.300)

WHIP (1.61): 投球回あたり1.61の走者(安打+四球)を許しており、制球力と被安打の多さが課題でゾーン内のアバウトさが安打につながっている。

FIP (4.78): 防御率(4.91)に近い値だが、被本塁打(2本)が少ないため、防御率より若干良好。運に左右されない投球内容は平均以下だが、極端に悪いわけではない。

K/BB (1.10): 奪三振(11)に対し四球(10)が多く、制球力の向上が急務。プロではK/BBが2.0以上が求められるため、三振奪取力の強化が必要。

BABIP (.326): リーグ平均(.300)より高めで、打球がヒットになりやすい傾向。サブマリンのゴロ誘発率を考慮すると、守備陣のフィールディングや運の影響も考えられる。



プロでの可能性

 リーグ戦の成績だけを見ると、NPBへの指名は厳しい。しかし、短イニングでの起用なら、独特の球筋とスライダーを活かし、右打者へのワンポイントリリーフなどで価値を発揮する可能性がある。サブマリン投手の希少性は高く、父・渡辺俊介氏がロッテで活躍したように、特定の役割で輝ける素質がある。特に、中継ぎ陣に下手投げがいない球団にとっては、育成枠での獲得は魅力的な選択肢となる。


結論

 平塚合宿での登板を直接確認した限り、渡辺は短イニングでの可能性を示した。大学日本代表クラスの打者達相手に無安打に抑えた投球は、スカウトの注目を集めるに十分だった。セイバーメトリクス指標(WHIP 1.61、FIP 4.78)から、
制球力と被安打の抑制が課題だが、独特の変化をするスライダーはプロでの武器となり得る。プロ志望を公言する本人の姿勢も評価でき、ドラフトでの育成枠指名は十分に現実的だ。サブマリン投手としての希少性を活かし、NPBでの飛躍に期待したい。


(2025年 平塚合宿)