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ヴァデルナ フェルガス(青学大)投手 189/84 左/左 (日本航空出身) | |||||||||||||||||||||||||
190センチ近い長身で手足の長い体型を活かし、サイドスローから独特の球筋で投げ込む ヴァデルナ・フェルガス。NPBでも類を見ない大型サウスポーとして注目を集める。 投球内容 2025年春季成績この春の東都リーグ戦で 5試合に登板し、2勝1敗、防御率0.86 を記録し、東都リーグ優勝に貢献した。さらに、6月の全日本大学選手権では北海学園大戦に先発し、5回無失点の好投でチームの日本一を支えた。 ストレート 130~140キロ台前半 ☆☆☆★ 3.5 球速は際立たないが、左打者の背中越しから来る感覚のサイドスロー特有の軌道と、微妙に変化するクセ球が特徴。空振りを誘うキレや圧倒的な球速はないが、独特の角度で打者を惑わす。 制球力には欠けるが、ストライクゾーンを広く使う投球に徹する。最終学年で四死球を減らし、安定感が増した点が飛躍の要因だ。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0 右打者内角へのストレートはナチュラルにスライドし、外角ではシュートする傾向がある。一方で、スライダーは明確な横変化、カーブは緩やかな軌道、チェンジアップは速度差で打者をタイミングを外す。これらの球種は空振りを誘うよりも、バットの芯をずらす役割を果たす。 その他の特徴 クイックモーションは1.2~1.3秒とやや遅いが、左投手ならでは牽制と走者への目配せが光る。一塁走者への意識が高く、盗塁を許しにくい。 現時点では淡々と投げ込むスタイルが中心で、ボールの保持時間を変えたり、細かなコースを突く投球術は未成熟。 投球の総括 長い腕から繰り出されるタイミングの取りにくい投球と、左打者にとって捉えにくい球筋が最大の武器。ボールの動きが予測しづらく、技巧派左腕として際立つ存在だ。 成績分析 特殊なフォームを構造的に分析するよりも、実際の成績から傾向を評価する。以下は、2025年春の東都リーグ戦(5試合)と大学選手権(1試合)の合計成績を表形式で整理し、セイバーメトリクス指標を加えて分析する。 成績データ
注: WHIP(Walks + Hits per Inning Pitched):1イニングあたりの被安打+四死球。1.115は大学リーグ平均(約1.3)を下回り、優秀。 K/9(Strikeouts per 9 innings):9イニングあたりの奪三振数。9.69は大学上位レベル(平均約7.0)。 BB/9(Walks per 9 innings):9イニングあたりの四死球数。5.54は平均(約3.5)を上回り、制球課題を示す。 FIP(Fielding Independent Pitching):投手の守備に依存しない成績(奪三振、四死球、被本塁打で算出)。大学リーグでは詳細データが不足するため、仮定値(被本塁打0、奪三振高、四死球多)を基に推定。 評価ポイント 被安打率:◎ 投球回数の50%(13安打/26回)で、平均(約70%)を大きく下回る。球速がなくても打者に捉えられにくいことを示す。 四死球率:✕ 投球回数の61.5%(16四死球/26回)で、目標の33.3%以下に達せず。BB/9(5.54)もリーグ平均を上回り、制球力は最低限。ただし、大学選手権では5回1四死球と安定。 奪三振率:◎ 1イニングあたり1.08個(K/9:9.69)で、目標の0.8個以上をクリア。リーグ上位レベルの奪三振能力を示し、独特の球筋と変化球の効果が顕著。 防御率:◎ 0.69で、目標の1点台以内を大きく上回る。FIP(約3.2)は防御率より高いが、被本塁打ゼロと被安打の少なさが低防御率を支える。リーグ戦での2失点のみで、2年秋・3年春も無失点。 WHIP(1イニングあたりの被安打+四死球)◎ 1.115はリーグ平均(約1.3)を下回り、走者を溜めにくい投球を裏付ける。左打者への被打率.063が大きく貢献。 セイバーメトリクスから見える強みと課題強み:K/9(9.69)は大学リーグの上位10%に相当し、独特の球筋が三振を誘発する能力を示す。WHIP(1.115)の優秀さは、被安打の少なさ(左打者被打率.063、右打者.196)と連動し、打者を抑える実戦力を証明。被本塁打ゼロは、長打を許さない投球スタイルの強み。 課題: BB/9(5.54)はリーグ平均(約3.5)を大きく上回り、制球力の不安定さが顕著。FIP(約3.2)が防御率(0.69)より高いのは、四死球の多さが影響しており、運に頼った面も示唆される。プロレベルでは、四死球を減らし、FIPを2点台に近づける必要がある。 総合評価 ヴァデルナ・フェルガスは、標準的なスカウティングでは見過ごされがちな技巧派左腕だ。球速や精密な制球力はなく、BB/9の高さが課題だが、K/9とWHIPの優秀さ、左打者への圧倒的な強さ(被打率.063)は特筆すべき武器。プロの特定場面(例:左打者へのワンポイントや中継ぎ)で即戦力となり得る。育成枠での評価となりやすいので、まずは社会人野球で制球力を磨き実績を残せば、NPBで左キラーとして活躍する可能性も見えてくる。個人的には、現時点でも本会議で指名するだけの価値のある選手だと評価したい。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2025年 大学選手権) |