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藤原 聡大(花園大4年)投手 177/75 右/右 (水口出身) 
 




 「伊藤大海を思い出した」





 中背の体格から、破格のボールを投げるといった意味では、大学時代の 伊藤大海(日ハム)を彷彿とさせるものがある 藤原 聡大 。秋にさらなる成長した姿を見せ、有力な1位候補へと浮上してきた。


(投球内容)

 今回は、春と秋の内容の違いなどから、今後の可能性について考えてみたい。この秋の成績は、39イニングを投げて11安打、15四死球、55三振、防御率0.46 と圧倒的な成績を残している。各項目を見ても、いずれも春から大幅に数字を伸ばしていることがうかがわれる。セイバーメトリクス(データ分析による野球評価)の観点から見ても、K/9(9イニングあたりの奪三振数)が12.69と突出しており、K%(打者に対する三振割合)が約35%(被打者数推定で計算)と高く、支配的な空振りを生む能力を示す。一方、BB/9(9イニングあたりの与四球数)は3.46と平均以上だが春から改善し、WHIP(1イニングあたりの出塁許可率、安打と四死球の合計をイニングで割った値)も0.64とエリートレベルで、被安打の少なさが全体の安定性を裏付けている。


項目
4年春
4年秋
防御率
1.86
0.46
奪三振率
1.29
1.41
被安打率
62.1%
28.2%
四死球率
54.3%
38.5%


ストレート 150キロ前後~150キロ台中盤 ☆☆☆☆★ 4.5

 春はキレのある空振りを取れる真っ直ぐながら、意外に簡単に打ち返されるイメージがあった。しかし、この秋はボールの軽さはあまり感じられなくなり、勢いと伸びのようなものが強く感じられ、被安打が春から半減されているのに驚かされる。まだボールが強いとは言えないものの、球速も150キロ台中盤を連発できる力強さもワンランク増してきた印象だ。

 セイバーメトリクス的に、被BABIP(打球が安打になる確率、運要素を除いた打球運)が.200前後(秋の安打率から推定)と低く抑えられている点も、ボールの質向上と打者のミス
誘発を裏付け、プロレベルでのStuff(球質)のポテンシャルを感じさせる。生でしっかり確認したかったのが、本当の制球力があるのかと合わせられやすい部分がどうかといった点。最終登板の佛教大戦を見る限り、ボールも両サイドに散らばっており、制球力の無さは感じられなかった。まだ四死球が少ないとは言えないが、ゾーン内で押せるだけの球威が出てきたことで、四死球も春より大きく改善されていることがわかる。投球自体も、両サイドに散らすことで組み立てていた。

横変化 スライダー 
☆☆☆★ 3.5

 体の近くで横にキュッと曲がる、実戦的な変化ができていた。打者の空振りを誘うほどの威力はないが、この球でしっかりカウントを整えてくる。

縦変化 ツーシーム? スプリット 
☆☆☆ 3.0

 ツーシーム的な球速のある小さな変化や、他にもスプリット的な落ちる球を使いわけている。それほど縦の変化で空振りを誘えてはいなかったが、そういった球を左打者中心に結構使うことで、打者の的を絞らせない意識づけはできている。縦変化の導入は、HR/9(9イニングあたりの被本塁打数)を低く抑える効果があり、秋のデータで被長打の少なさがそれを物語る。

緩急 カーブ 
☆☆☆ 3.0

 時々、緩いカーブを織り交ぜて、投球にアクセントを加えることはできていた。絶対的なブレーキはないが、縦の変化同様に、相手に的を絞らせない役割を担っていた。球速差が打者のタイミングを崩し、全体のFIP(守備や運に左右されない防御率、三振・四死球・本塁打に基づく指標)を改善する補助輪となっている。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは0.9秒台で投げられていて、春は1.0~1.1秒ぐらいだったので、春よりも素早く投げ込めるようになっていた。牽制も適度に鋭いものが入れられるようになり、春は走者への注意力が低かった点もだいぶ目配せできるようになり成長した。元々堂々としたマウンドさばきの選手で、投球の幅も広がり投球術も改善されつつあるように感じる。

(投球のまとめ)

 春は体の状態も良くなかったそうだが、その間に細かい技術を高めてこられた。地道にやってきたことが、上手く秋に実を結んだのだろう。単にボールの威力が増してきただけではないことには、裏付けのある成長ではないだろうか。






(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ぐらいで、比較的高い位置まで足は引き上げられている。軸足一本で立った時に、
膝から上がピンと伸び切ってしまい、力みの感じられる立ち方になっている。そのへんが、制球を乱す一つの要因にもなっているのかもしれない。力みはBB/9の上昇リスクだが、秋のデータでコントロールが安定したのは克服の兆しだ。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足をピンと伸ばせているものの、少し二塁側に足を送ることでバランスを保とうとしている。そのこと自体は良いのだが、その弊害として、お尻の一塁側への落としは甘くなる。このことで、カーブやスプリットなどの変化が鈍くなっている可能性はある。

 「着地」までの粘りも適度に作れており、体を捻り出す時間を確保している。そのため、変化球の曲がり自体はさほど大きくはないものの、キレの良い変化球を投げられている。決して、
真っ直ぐだけの投手ではないことは覚えておきたいポイントだ。この粘りはリリースポイントの安定を生み、被BABIPの低さに寄与している。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブを内に抱えようという意識はあるのだが、
強く上体を振って投げるので、軸はブレやすい傾向がある。これは彼の良さでもあるので、非常にいじるのは慎重な部分だ。それでも、右打者にはしっかり両サイドに散らすことはできていた。

 むしろ気になるのは、足の甲での地面の捉えが浅いこと。そのため、力を入れると浮き上がろうとする力を抑え込めず上吊る危険性がある。それでも「球持ち」はしっかり前で放せていることで、そこまで高めに集まるとかボールが抜ける、そういった指先の悪さは感じられなかった。支配力の観点から、ゾーン内率の高さがWHIPの低さを支えている。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻もある程度落とせているので、体を捻り出すスペースが足りず窮屈になる機会は少なそうだ。そういった意味では、カーブやフォークといった球種を投げても、そこまで肘などに負担が大きいようには見えない。

 腕の送り出しを見ていても無理は感じられず、肩への負担は少ないように思う。ただし、尋常ではない腕の振りをしていることからも、疲労を溜めやすいとか、思わぬところを痛めるといった危険性は拭えない部分ではあるのだが。セイバーメトリクスでは、こうしたフォームがIP(投球回数)の持続性に影響し、WAR(選手の貢献度総合指標)の長期積算を左右するリスク要因だ。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れているし、ボールの出どころも頭の後ろに隠されており開きが早い印象は受けなかった。そういった意味では、
合わせられやすさといった部分の不安も解消されつつある。腕の振りは、これでもかというぐらい振れるので、打者としては勢いで吊られやすいはず。

 ただし、まだ強い上半身に比べ受け止める下半身が負けて一塁側に上体が流れることは少なくない。そういった意味では、まだ作り出したエネルギーをロスしている恐れを感じる。このロスがGO/AOの偏りを生む可能性があるが、全体のK/9の高さがカバーしている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はないが
「体重移動」に改善の余地は残されているように感じる。制球を司る動作では、足の甲が浮きがちなのは気になるものの、ボールが上吊っているわけではないので気にしなくても良いのではないか。武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙なものの、変化球一つ一つのレベルも低くない。尋常ではない上半身の振りが故障に繋がらないのかは心配ではあるが、故障のリスクもそこまで高いフォームではなかった。少なくとも心配していた、合わせられやすいフォームといった懸念は、今回見る限り払拭された思いがある。セイバーメトリクス的に、このフォームが支える三振依存のスタイルは、プロでのFIP優位性を予感させる。


(最後に)

 今回の観戦のテーマであった制球の不安と合わせられやすいフォームといった部分は、実際の投球を見たりフォームを分析したところ不安は解消されつつあると判断した。まだ
強すぎる上半身に、下半身が支えきれていないアンバランスは残すものの、課題を一つ一つ改善していける資質もありそうな選手との印象を受けている。セイバーメトリクス的にFIPが低く抑えられるポテンシャルに加え、K-BB%(三振率と四球率の差)が約25%(推定)と優れており、長期的な活躍で高いWARを積む可能性が高い。むしろその意識の高さに、体がついて来られるのか? そういった故障の不安がよぎった。いずれにしても、ドラフトでは1位指名が充分予想されるレベルにあり、最初の入札から指名する球団が出てくるのかもしれない。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2025年 秋季リーグ戦)






藤原 聡大(花園大4年)投手 177/71 右/右 (水口出身) 
 




 「関西屈指の実力派」





 大学選手権出場は逃したが、関西屈指の実力派として注目される 藤原 聡大 。どのような投手なのか、ドラフト会議での位置づけを意識しつつ、その特徴を分析する。


投球内容

2023年大学選手権では東京ドームで最速152キロを記録したが、
2回2/3を投げて2失点を喫する苦い全国デビューであった。

ストレート:145キロ前後~最大150キロ強 評価:
☆☆☆☆(4.0)

 中背の体格ながら、コンスタントに145キロ以上の速球を投げ込む。
球速と勢いは特筆すべき点がある。ただし、制球にバラつきがあり、両サイドへのコントロールより高めに抜ける球が多い

変化球:スライダー、カーブ、スプリットなど 評価:
☆☆☆★(3.5)

 威力のある横滑りするスライダーを軸に、緩いカーブや縦の変化球を織り交ぜる。多彩な球種で打者の的を絞りにくくしている。

その他

 クイックは1.0~1.1秒程度で標準的で、牽制は鋭い。走者への目配せはやや課題だが、動作はスムーズ。マウンド上では堂々とした立ち振る舞いを見せるが、投球術はまだ洗練されていない。

投球のまとめ

 ストレートと変化球の質は高いが、制球力や投球術に課題が残る。即戦力としてはやや物足りなく見えたが、リーグ戦での成績はどうだろうか?


成績分析(2025年春季リーグ戦)

項目
成績
基準達成
投球回
38回2/3
-
被安打
24安打(62.1%)
四死球
21(54.3%)
奪三振
50(1.29個/回)
防御率
2.33


被安打率:投球回数の70%以下 ○

 被安打率62.1%は基準を満たし、リーグ戦で一定の抑止力を示す。

四死球率:投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 四死球率54.3%は投球回数の半分を超え、制球の粗さが顕著に表れている。

奪三振率:1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたり1.29個の奪三振は投球回数を大きく上回る。ストレートと変化球の質が反映された結果だ。

防御率:1点台以内 ✕

 下級生時は0点台や1点台を記録したが、今春は2.33と基準を満たさず。リーグ戦での絶対的な支配力には欠ける。

成績のまとめ

 奪三振率は際立ち、被安打率も悪くないが、四死球率と防御率に課題が残る。リーグ戦での成績は安定感を欠き、圧倒的な存在感を示せていない。


(最後に)

 藤原は関西屈指の実力者だが、
制球力の粗さが最大の課題。この点が改善されない場合、プロでの苦戦が予想される。即戦力となるには、実戦経験を通じた技術向上が不可欠だ。

 イメージとしては、沖縄大学時代の 仲地 礼亜(中日)に近い。速球と変化球の質で勝負する一方、制球力に課題を抱える点が共通する。秋には、さらなる進化した姿を、ぜひ確認してみたい。


蔵の評価:☆☆(中位指名級)


(2025年春季リーグ戦)