25dp-10


 




相良 雅斗(岐阜協立大4年) 投手 184/79 右/右 (豊田大谷出身) 
 




 「春と成績はほとんど変わらなかった」





 4年春の成績と秋の成績を比べてみても、ほとんど違いは見られなかった 相良 雅斗 。春に観戦した際は「秋の投球も確認してから評価を下そう」と、追跡級!として評価を保留していた。あれから半年あまりが経過し、どのような変化があったのか検証してみた。


(投球内容)


 4年春と4年秋の成績を比較してみる。


年度
投球回数
被安打
四球 奪三振 防御率
4年春 48回1/3 45 20 45 3.35
4年秋 43  39 24 47 3.14


春→秋で明確に見られた傾向の変化

・被安打が1イニングあたり約0.2本減少(春0.931 → 秋0.907)
・四死球率が悪化(春3.7イニングに1個 → 秋1.8イニングに1個)
・奪三振率はほぼ変わらず(春・秋ともに約1奪三振/イニング)
・防御率は0.21改善したが、これは主に
被安打の微減によるもので、制球の悪化が帳消しに近い形になっている。


ストレート 145km/h前後 
☆☆☆ 3.0

 球速は145km/h前後で、ボールの勢いも平均的。両サイドにボールが散るものの、成績ほど制球が悪い印象は受けなかった。春と比べても、ボールの勢いや制球に関する印象はほぼ変わらず。

横変化 スライダー・カットボール 
☆☆☆ 3.0

 右打者外角にカットボール・スライダー系の球を投げてカウントを整えるスタイルはこの秋も変わらず、春とほぼ同じ印象だった。

縦変化 スプリット 
☆☆☆ 3.0

 ストンと落ちるタイプではないが、沈む確率は高め。左右の打者問わず積極的に使ってくる。落差自体は春と比べて大きな変化は感じられなかった。

緩急 カーブ 
☆☆☆ 3.0

 春の観戦時にはほとんど見られなかった緩いカーブをこの秋は織り交ぜてきた。
投球に幅を持たせようという意図が感じられ、実際にこの球で見逃しの三振も奪えていた。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは1.1~1.2秒程度で標準的。走者を背負っても
ボールをじっくり持つことを意識しており、走者のスタートを切りづらくさせ、打者を焦らせる効果が出ていた。このあたりの投球センスは春よりも明確に向上していると感じられた。

(投球のまとめ)

 数字上は「被安打は減ったが四死球が増えた」というトレードオフの関係で、ボールそのものの強さやキレが劇的に向上したわけではない。ただし、新たにカーブを交えることで緩急がつき、ボールを長く持つ意識も強まったことで、打者を焦らせる時間が増え、被安打をわずかに減らせた印象。制球の悪化は今後の課題と言えそうだが、投球に奥行きが生まれたのは確かで、小さな進化は感じられた。





(投球フォーム)

 今回は春季には行わなかった投球フォームの分析も加え、今後の伸びしろを考えてみる。セットポジションから足を上げるときの勢い・高さはまずまずで、フォーム序盤からエネルギーを生み出せるリリーフ向きのフォームと言える。軸足一本で立ったときは膝から上がピンと伸びやすく、やや力みが見られるが、全体のバランスは保たれていた。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすため、お尻の一塁側への落としがやや甘い。カーブやフォークを投げられないわけではないが、変化は鈍くなりがち。着地までのタイミングは平均的で、捻り出しの時間もそこそこ確保できているため、変化球のキレ自体は悪くない。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、遠心力を抑え込めているため軸が安定し、両サイドへの制球も崩れにくい。足の甲での押し込みは浅めだが、高めに抜ける癖は目立たなかった。球持ちは並程度で、指先の感覚も平均的。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは平均的で、現状の球種なら肘への負担は大きくない。ただし今後スプリット系の使用頻度が増えると負担は上がる可能性がある。肩の位置にも若干の上下差はあるが、致命的な無理があるフォームではない。力投型でもないため疲労蓄積も平均的と思われる。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 着地までの粘りも体の開きも早すぎず、タイミングを合わせやすいわけではない。
腕の振りはしっかりしており、打者は吊られやすい。ただ体重移動がもう一歩前に乗り切れていない印象で、ここが改善されればボールの勢いもさらに増すだろう。

(フォームのまとめ)

 「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の4要素のうち、特に
「球持ち」と「体重移動」に改善余地が残る。制球を司る動作や故障リスクは平均的で、武器になる変化球の習得は未知数だが、現状の変化球のキレは決して悪くない。


(最後に)

 現時点ではまだ発展途上の投手であり、一軍で活躍するにはファームでの育成期間が数年は必要だろう。春に比べれば
緩急の使い方やボールをじっくり持つ意識など明確な進化は見られたが、投球内容から受ける総合的な印象は、☆(支配下級)といったほどはなく、育成会議での指名が妥当なのではないかと評価する。それでも数年後に、どのような投手に成長して行くのか、引き続き注目していきたいと思わせてくれる投手だった。


(2025年 秋季リーグ戦)









相良 雅斗(岐阜協立大4年) 投手 184/79 右/右 (豊田大谷出身)
 




 「この春に急浮上」





 1年春からリーグ戦で登板してきた選手だが、本格的に活躍し始めたのは3年秋に5勝を挙げた時期からだった、相良 雅斗 。私が確認できたのは幾つかの映像のみのため、その印象をもとに今回はレポートを作成してみたい。


投球内容

 この春は 
2勝5敗、防御率 3.35 という成績で、通算防御率 2.26から見ても決して良いシーズンではなかったようだ。

ストレート:140キロ~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 ボールには適度な勢いを感じるものの、先発時の球速はドラフト候補の右腕としては平均的。気になるのは、全体的に
球筋が高めだったり、ややアバウトな印象を受けた点。短いイニングを任された際には、140キロ台後半を連発できる潜在能力はありそうだった。

変化球:カットボール・スライダー・フォーク(チェンジアップ) 
☆☆☆ 3.0

 カットボールやスライダーでカウントを整える印象で、フォークまたはチェンジアップのような沈む球種も持つが、現時点では精度や威力に絶対的なものは感じられない。上のレベルで通用する
武器となる球種を見出せるかが、今後の鍵となりそうだ。

投球のまとめ

 地方リーグの逸材としては魅力的な資質を持っているものの、大学から直接プロ入りとなると、ボーダーライン上の評価という印象を受けた。現状では、育成枠での指名があるかどうかといったところだが、果たしてどうだろうか。





成績から考える

 この春の成績は例年より悪かったため、通算成績から傾向を分析してみたいと思います。通算成績は以下の通りです:

222回2/3、180安打、72四死球、176奪三振、防御率 2.26

1. 被安打率:投球回数の70%以下 △

 地方リーグの選手ということで基準を厳しめに設定したが、被安打率は80.8%(180安打÷222.2回)で、基準を満たしていない。特に悪い数字ではないが、突出しているとも言い難い微妙な結果である。

2. 四死球率:投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯

 四死球率は32.3%(72四死球÷222.2回)で、基準を辛うじてクリア。枠内での制球はややアバウトだが、四死球による自滅型ではない印象を受ける。

3. 1イニングあたりの奪三振:0.8個以上 △

 1イニングあたりの奪三振は0.79個(176奪三振÷222.2回)で、基準をわずかに下回る。地方リーグの選手としては圧倒的ではなく、縦の変化球などの未完成さが影響し、現状では決め手に欠ける印象。

4. 防御率:1点台以内 △

 通算防御率は2.26だが、過去に1点台を記録したシーズンが複数あり、潜在的には1点台を達成可能な能力を持っていると判断される。

成績からわかること

 成績を見る限り、基準を満たしていない項目があったり、満たしていてもギリギリだったりと、数字上では圧倒的な印象はない。全体として、発展途上かつ未完成な選手という印象を受ける。


最後に

 常識的に考えると、より高いレベルの社会人野球や独立リーグなどで経験を積み、資質をさらに伸ばす必要があると感じられる。ただし、プロの環境で直接成長を目指すかどうかは本人の考え方次第である。プロ側が指名に踏み切るかどうかは、さらなるチェックが必要で、現時点では判断が難しい。今回の春季リーグ戦の結果を踏まえ、秋までのさらなる成長に期待したい。


蔵の評価:
追跡級!


(2025年 春季リーグ戦)