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山田 陸人(24歳・ENEOS)三塁 177/83 右/右 (桐光学園-明治大出身) | |
長らく社会人野球を観てきた中でも、久々に独特の感性を感じさせる選手を見た気がする 山田 陸人 。その姿は、どことなくセガサミー時代の 宮崎敏郎(DeNA) を彷彿とさせるものがある。果たして彼は、首位打者2度を獲得する天才打者の領域に到達できるだろうか? (守備・走塁面) 実戦では、ほとんど盗塁を仕掛けてくる、そういったタイプではありません。しかし、昨秋の日本選手権でのショートゴロの際には、右打席から 4.2秒前後で到達。これは、左打者換算で 3.95秒前後に相当するタイム。そういった意味では、盗塁できるかは別にしても、走力自体はプロでも 中の上 クラスの脚力があるとみて良いのではないのだろうか。 むしろ課題は、三塁守備にあるように思える。サードとしても、横の動きは広く、フェンスを恐れないキャッチングなどガッツも感じられる。地肩も基準クラスはあるが、キャッチングが少し危なっかしい。スポニチ大会の試合前練習を見る限り、ドラフト候補としては 中の下 ぐらいかなという印象は受けた。そういった安定感を、一年間観てみて判断して行きたい。 (打撃内容) 明治大の時には、3年春に首位打者を獲得。広角に打ち返す、中距離ヒッターのイメージを持っていた。ENEOSでも、各大会で1本は本塁打を放つ活躍を魅せていた。ただし、安定感という意味で課題があったのか? 都市対抗では出場無し。秋の日本選手権では、9打数1安打と結果は残せなかった。しかし、2年目になった今年は、スポニチ大会に入る前から本塁打を連発するなど、ENEOSの中軸を担い期待に応えている。特に社会人になってからは、ホームランアーチストとしての色彩を強めている。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前の足を引いて、グリップを高めに添えバットを前にダラりとのばします。その姿は、かつての三冠王・落合博満氏の「神主打法」を彷彿とさせるものがあります。背筋を伸ばしつつ、全体のバランスとしては癖がありますが、両眼でしっかり前を見据えるなど理に適った構えとなっています。 <仕掛け> 平均 投手の重心が沈みきった底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用しています。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた中距離打者や、勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を引き上げて回し込み、少しベースから離れた方向にアウトステップします。始動~着地までの「間」そこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できます。軽くアウトステップするように、内角への意識の方が強そです。 踏み込んだ前の足は、インパクトの際に止まってブレません。そのため、外に逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができ、内角だけでなく外角の球を右方向にも飛ばすことも少なくありません。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めています。バットの振り出しも癖はなく、特に内角の球に対しては、腕をたたんで実にうまくさばきます。外角の球に対しては、コンパクトにロスなくヘッドを走らせ右方向への打球も多いです。 特に社会人になってからか? フォロースルーも活かしてボールに角度をつけて飛ばす打球が増えているように感じます。右方向への打球がオーバー・フェンスする感じではないので、引っ張って巻き込めた時にホームランになるといった意味では、本質的には中距離タイプなのかもしれません。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げも静かで、目線の上下動も少なめ。体の開きも我慢でき、軸足も地面からまっすぐ伸びて、軸を起点に回転できています。軸足の内モモの筋肉も強そうで、強烈な打球を生み出す原動力になっています。 (打撃のまとめ) ボールを捉えるまでの独特の「間」には天性なものを感じますし、内角のボールのさばきなどには天才的なものを感じます。まだまだ打ち損じなど、確実性に課題も残しそうですが、今年になっての実戦の内容や成績は安定してきています。このパフォーマンスを一年間続けたり、大舞台でアピールできるか見届けたいところです。 (最後に) 明治大-ENEOSという名門を渡り歩いてきた過程は、宮崎敏郎とは真逆の野球人生だったかもしれません。しかし、行き着く打撃の方向性はとっても似ている二人だと思います。「第二の宮崎敏郎」となりうるのか? 慎重に見極めて行きたいと思わせてくれる素材でした。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2024年 東京スポニチ大会) |