24sp-6
伊原 陵人(24歳・NTT西日本) 投手 170/75 左/左 (智弁学園-大商大出身) | |
プロだと、リリーフの色彩が強そうな投手だが、意外に先発としても、そこそこ1年目からやれるのではないかと思えてきた 伊原 陵人 。金丸 夢斗 に続く、即戦力左腕は、この男ではないのだろうか。 (投球内容) 今シーズンは、71回2/3 63安 12四死 75三 防 1.38 と、社会人の成績としては、破格の内容を誇っている。 ストレート 140キロ~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0 打者の手元までの強さが素晴らしい真っ直ぐを投げ込む投手で、プロの一軍打者相手でも、速球中心に組み立てられそうなところが最大の魅力。回転数も2500回転を超えるような球なのだが、ボール自体に球威も伴っている点も稀な存在だ。両サイドに投げ分けるコントロールもあり、四死球率は 16.9% と精度も高い。被安打率が、87.9% と、やや高めなのが少し気になるところか。 変化球 スライダー・カット・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 変化球も実に多彩で、スライダー・カット系中心に、時々緩いカーブも織り交ぜてくる。チェンジアップは、あまり沈まずに少しシュートして逃げる感じ。変化球で仕留めきれるほどの絶対的な球はないように見えるが、上手くコンビネーションを織り交ぜ相手の的を絞らせないようにしつつ、ズバッと真っ直ぐで三振を奪ってくる。 その他 クィックは、1.0秒前後と高速。牽制は確認できなかったが、投げるタイミングを変えたり、じっくりボールを持ったりと、左投手だけにスタートは切り難いのでは? フィールディングの動きも、なかなか好い。元々好投手タイプだっただけに、そういった野球センスには優れている。 (投球のまとめ) 球種も多彩だし、「間」なども意識して、プロでも先発での適性もあるように思える。ただし、日によってはボールが揃って打ち込まれてしまうこともあり、より即戦力としての活躍を考えると、リリーフでの方が1年目は活躍できるのではないかというイメージは強い。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さがあります。この入りからも、やはり適正はリリーフの方が高そうには見えます。また、軸足足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びてしまい余裕がないのは気になります。しかし、高く引き上げた足によって、ある程度バランスの取れた立ち方にはなっています。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足をピンと伸ばすことなく重心を沈めてくるので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。こうなると、体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適しません。 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も並ぐらい。曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に、ピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつきやすい。足の甲での地面の捉えは浅く見えるものの、ボールリリースで押し込めているのか? ボールが抜けたり上吊ることはあまりない。そういった意味では、指先の感覚も好いのだろう。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせないものの、カーブを投げる頻度も限定的で、フォークのような球も観られない。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘などへの負担は大きくないように思える。 腕の送り出しを見る限りは、肩への負担も少なそう。力投派にも見えなくもないが、適度に力も抜けて投げられるコツも掴んでいるので、疲労はそこまで溜めやすいことも無さそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは平均的で、それほど打者はタイミングが取り難いフォームでは無さそう。それでもボールの出どころは隠せているので、打者としては差し込まれたり、投げミスも少ないように思える。ただし、このへんが 被安打率 87.9% と、社会人でも平凡な数字に留まっている要因かもしれない。 腕はしっかり振れて勢いがあり、ボールの出どころもある程度隠せているので、投球回数を上回る奪三振を奪えている。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているようには見えるのだが、その割にフィニッシュでの地面の蹴り上げが弱いのは、何処かでエネルギーをロスしてしまっているのかもしれない。ただし、真っ直ぐの質に関しては申し分ないので、そこまで気にする必要は無さそうだ。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」にもう少し粘りが出てくると、一辺倒になって集中打を浴びるのが減るかもしれない。制球を司る動作は並の割に制球自体も悪くないし、故障のリスクもそこまで高いわけではない。空振りを誘えるほどの変化球を修得できるかは微妙だが、そのぶん真っ直ぐで勝負できそうなのは大きい。けして、実戦的なフォームとは言えないものの、上手く欠点を補えて致命傷になっていないフォームなのではないのだろうか。 (最後に) 時々一辺倒になって打ち込まれることはあるものの、大学・社会人でも即戦力になれそうだという意味では、金丸 夢斗 に次ぐ存在であるように思える。その一方で、プロでもしっかりした数字を一年目から望むとすれば、先発よりもリリーフの方ではないかとも思えてくる。今後の上積みに期待するというよりも、ある程度一年目から数字を残して欲しいタイプ。そういった意味では、限りなく即戦力が期待できそうに見えるが、できれば2位で指名したいタイプではないのだろうか。ただし、一年目からやれそうだといった意味では、今年の候補の中でも数少ない即戦力候補と言えそうだ。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2024年 都市対抗) |